久々のお客さん取材シリーズです。
ひと月ほど前ですがリアル面談によるお客さん取材を東海地方で行いました。
お客さんが契約したのは大手ハウスメーカーですが、競合先として最後に残ったのは地場の有力パワービルダーでした。
最後まで残った2社ですから甲乙つけがたいものの、最終的にハウスメーカーにしたと普通は考えますが、予想に反して地場パワービルダーのことをけちょんけちょんに貶しまくるお客さん(Sさん)のパワーに圧倒されました。
「なんでここまで悪口を言うんだろう」
素朴な疑問を取材スタート時には感じましたが、話を聞きこむにつれて納得する部分がどんどん出てきたのです。
当初は7社競合でスタート
②東海三県パワービルダー G(最後まで検討するもボロクソに悪口を言ってこき下ろす)
③東海三県大手分譲メーカー T
④建築設計事務所 M
⑤地元零細工務店 C
⑥輸入住宅 S
⑦全国ローコストメーカーA
さすがにやりすぎです。
Sさん自身も反省しきりでしたが、7社同時に検討するのは事実上不可能でしょう。
なんとなく検討したのではありません。
7社同時に図面と見積もりを提案させ、それを比較検討したのですから、我々業者から見てもむちゃくちゃだということがわかります。
Sさん「おっしゃる通りです(笑)すぐに気付いたんですけども冷静に比較検討などできるわけないですよね」
私 「打ち合わせ回数はとんでもないんじゃないですか」
Sさん「回数を全部調べたのですが、延べで37回打ち合わせをしました。もうヘロヘロで思考能力ゼロですよ(笑)」
いろんな会社と話をしたい気持ちはよくわかりますが、理想的には2社、最大3社だと思います。
3社ですら同時並行で比較検討すると、もう何が何だかわからないという状況に近いでしょうね。
これが4社を超えると脳内処理能力は完全にオーバーフローで崩壊確実でしょう。
最初は評価をしていたのだが・・・
途中経過は省きますが、7社とは各々最低2回は会ったそうです。
2回会った時点でまずは3社を落とし、残った4社とさらに突っ込んだ話をしていきました。
4社から3社へ、そして3社から2社へと絞り込んだSさんは、最後に残った大手ハウスメーカーS社と地元パワービルダーG社をがっつり比較検討するステージに至ったのです。
Sさんはかなり慎重な性格で、残った2社に対して3回、4回とプランを修正させ、見積もりもその度にきっちり要求したそうです。
担当営業は疲労困憊だったと思いますが、建物本体が4,000万を超えるような大きな案件だったので、両社の営業担当とはなんとしてでも取らなくては、ということで気合は入ってたと思います。
そして、この2社を最終候補として残したわけですから、Sさんは両社ともかなりの評価を当然したわけです。
他の5社は何らかの理由で及第点に達しないと判断して落としたわけですから、最後の2社に関してはかなりの好感触を持っていたと言えます。
最終段階になってからG社の対応がおかしくなった
結論から先に書きますが、G社の営業担当者が契約を強引に取りにいったのが裏目に出て、お客さんの怒りを買うことになりました。
営業出身の私として彼の気持ちはわからなくもないですが、取材を進めるうちにその度が過ぎた営業アプローチが明らかに行き過ぎた行為であることが分かったのです。
彼が一体どんなしつこい食い下がり方をしたのか、S様は取材でとくとくと私に話してくれました。
「人間性が豹変しましたからね」
①泣き落とし戦法を繰り出す
これだけはやりたくありません。
私の先輩にもいたのは事実ですが、住宅を買ってもらうのに頭を下げて土下座をして泣くのはどうでしょうか。
「いきなり正座して頭を床にこすりつけるんですよ(笑)」
Sさんはこのように私に話したのですが、クロージングの段階で土下座をする営業の話は久々に聞きました。
②相手会社の悪口が始まる
それ以前の折衝でもある程度は相手の会社をくさすようなことはあったようですが、最後の最後になってボロクソに叩き始めたとのこと。
皆さんはお分かりだと思いますが、相手の悪口を言っては逆効果なのですよね。
悪口とは感じられないような戦法で、相手の問題を鋭く指摘するのが営業の腕の見せ所です。
露骨な悪口を言っては話になりません。
・掲示板で無茶苦茶書かれている
・アフターサービスの評判が悪い
・建物の品質に対して価格がべらぼうに高い
・自由設計と言いながらかなりの制約が生じる
・社内の人間関係がギスギスしている
こんな感じであれやこれやとまくし立てたらしいのですが、大きな会社になれば掲示板でたたかれるコメントも当然出てくるでしょう。
アフターサービスの評判が悪いとのことですが、私が知る限りは特にこのメーカーが悪いという噂は聞いたことがありません。
社内の人間関係がギスギスしていると言われた時には、お客さんであるSさんも呆れてしまったと言ってましたが、そもそもそんな話を営業担当者は一体誰に聞いたのでしょうか。
③S社のプランにケチをつけ始めた
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いを地で行くようななじり方だったそうです。
2階の廊下部分の面積が、G社と比較すると若干広めな設計をしていたらしいのですが、そこを目ざとく見つけた営業担当者は「こんな無駄な設計をするなんていうのは普通ではありえませんよ」と滔々とまくし立てたらしいのです。
この他にもちょっとした袖壁や導線などを捉えては文句をつけまくったらしいのですが、Sさんはその間取りを非常に気に入っていたので、それに対して文句をつけられるうちにだんだんと腹が立ってきたとのこと。
この他にも色々あったのですが、結論としては最後の最後になってそれまで積み上げてきた人間関係と信頼性を営業担当自らがぶち壊した結果となったのです。
ただ、私が不思議なのは、営業をしばらくやっていれば簡単にわかりそうなことなのに、どうしてそんな手段に訴えたかです。
月末が迫っていたので、何が何でも取りたかったというのが実際のところだったと私は推測しますが、いずれにしても残念な話だとは皆さんも思いませんか。
「今でも気分が悪いんだよね」
ご主人奥さん共々このような感想をおっしゃっていました。
プライベートで考えてみてください。
自分が好きな歌手がいるとしましょう。
ところが、その事を知らない友人が、その歌手をボロクソにけなし始めたとしたら気分が悪いのではないでしょうか。
その歌手を好きだということをこの友人は知らなくて悪口を言ってるのですが、今回の場合は最終候補に大手ハウスメーカーを残してるわけですから、Sさんがそのメーカーを評価していることをこの営業担当者も分かっているわけです。
その上で貶しまくるのですから質が悪いのです。
着工中に現場のトラブルが重なって気分が悪いというのは分かりますが、契約の前に切った住宅会社の担当営業マンのことが、最後に会ってから一か月以上も経っているのに頭の中に残っていることは相当なことでしょう。
まとめ
誌面の関係上これだけにしましたが、今回の取材は実に2時間に及んだロングインタビューでした。
23年間にわたって顧客インタビューをしていますが、検討した住宅会社をここまでけちょんけちょんにするのは久々です。
最初から気に入らない営業担当者であれば、初回面談の段階で外すことができます。
だから嫌悪感も薄れるのですが、今回のケースは初回面談から最終候補にまで残った会社だったので、その怒りが増幅してしまった事例です。
最終商談のひとつ前までは「感じのいい好青年だと思っていた」とご夫婦は漏らしたのですが、それだけに最後の折衝で態度を急変させた営業担当者に呆れると同時に腹が立ったのでしょう。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。