今日は経営者向けの話をしたいと思います。
読者の中にはすでに住宅展示場を保有してる会社もあるでしょうし、今まさに検討中の会社もあるでしょう。
もしくは現在の住宅展示場が老朽化してきたのを受けて、リフォームや建て替えを検討してるかもしれません。
しかしそこで悩む事が一つあります。
現実を無視した超豪華展示場で行くのか、もしくは35坪程度の広さに抑えて、仕様もごく一般的なもので建設する等身大の住宅展示場にするかです。
もちろん、この中間的な仕様も存在するわけですが、住宅展示場は一度建ててしまえば修正が効きません。
どういった戦略でいくか、あらかじめ決めることが重要なのですが、夢物語でいくのか現実でいくのかをまず最初に決めて欲しいと思います。
「これでは参考にならない」お客さんからよく出る不満
東京都下のある豪華住宅展示場
建設費は楽に1億円を超える超豪華展示場が東京都内にあります。
「ちょっとやりすぎた(笑)」と社長が言うように、私から見ても少し度が過ぎるかなという超豪華住宅展示場です。
しかし、お客さんはそれなりにいて、集客数は当初の目論見通りの計画を達成してるようなのですが、実際に接客している営業マンに話を聞くと問題点がいろいろ出てきました。
誰でも簡単に予想できる話ですが、やって来たお客さんの多くが「これはさすがに参考にならないね」と感想をもらしていくのです。
私は積水ハウスに勤務していましたので経験がありますが、豪華な展示場はどうしてもこのような問題点をはらんでいます。
これに対する営業マンの応酬話法はこんな感じになるでしょうか。
「この展示場は弊社であればここまで出来ますよというMAXの力を見せるために作っております。ですから実際に弊社で契約して頂いた方は、ごく普通の仕様で建築した住宅も多いですね。しかし、何の工夫もない間取りでは面白くないので、この展示場に散りばめられた要素や設計コンセプトをいいとこ取りしていらっしゃいます。そして・・・」
わかったようなわからないような文章になって申し訳ありません(笑)
早い話がお客さんにここをつかれてしまうと、しどろもどろになってしまうわけです。
豪華展示場を構える会社の営業マンは、一人残さずこのような反応を経験したことがあるはずでしょう。
豪華展示場止めて等身大展示場にするとどうなるか
たまに質問されるのですが、豪華な展示場を作らずにごく一般的な建物を建てた方が良いのではないか、との疑問が当然ですが湧いてきます。
では、このような等身大展示場を作った時のメリットとデメリットをまとめてみましょう。
【メリット】
「実物大の展示場ですから参考になります」
このようなキャッチコピーを打つことができるのに加えて、実際展示場にやってくるお客さんも「これだと親近感があるよね」と言ってくれます。
基本的に標準仕様を使っているので、説明をする時にオプションがどうのこうのというややこしいことを話す必要もありません。
自社で建築をすると基本的にこのような家ができます、という接客ができるのです。
世の中には豪華な住宅展示場ばかりで参考にならない、と考えて不満に思ってる人は意外に多く存在します。
このような方に対しては「弊社は実物大の展示場です」とのキャッチコピーは刺さりやすいのです。
例えば総合住宅展示場の中に大手ハウスメーカーが10棟建っていたと仮定しましょうか。
この中の1棟だけが35坪程度のノーマル仕様の建物だったとします。
来場したお客さんは全部を見学はできないので、せいぜい半分の5棟程度を見学するわけですが、豪華展示場4棟を見た後に「豪華な展示場だけではなく普通の展示場も一社ぐらい見ておくか」となりやすい傾向があるのです。
ある営業マンに聞いたのですが、ノーマル展示場に勤務する彼は「来場するお客さんのほとんどが、他の会社は豪華すぎて参考にならないんだよね。ここの展示場は実物大でいいよ」という言葉を投げかけてくれると話していました。
これは大きなメリットだと私は思います。
【デメリット】
デメリットはもちろんあります。
接客する営業の立場から見ると、 接客時間を稼ぎにくいという大きな問題が発生します。
例えば70坪の豪華仕様展示場があったとしましょう。
その隣に35坪のノーマル仕様展示場が並んでいたとします。
この二つを接客するとすぐに分かるのですが、面積の広い方が接客時間が延びるのは当然のこととして、豪華仕様展示場だと、そのぶん話すネタが豊富になり接客時間が伸びるのです。
接客時間が長ければいいというものではありませんが、お客さんとの会話の幅が広がるので話は盛り上がります。
これに対してノーマル展示場は接客時間が稼げませんし、見所としては少ないので、お客さんのテンションも上がりづらいという欠点があるのです。
このように一長一短があるのですが、後は会社の戦略になりますのでどちらが良いということは私からは言えません。
ローコストメーカーは等身大展示場で勝負する
大手のハウスメーカーや中古高級路線の住宅会社は、実際の標準仕様よりも高めの住宅展示場を建てるのが一般的です。
これに対してローコストメーカーは、まさに等身大の言葉通り、そのままの展示場を建てて勝負します。
ローコストメーカーの老舗であるアイフルホームなどは、実際に建てた家と住宅展示場の仕様に大差がありませんし、これまたローコストのフランチャイズであるZEROキューブも同じです。
関西地方にあるZEROキューブ加盟店の展示場にお邪魔したことがあるのですが、外観はもちろんのこと内部の仕様もカタログ通りの仕上げとなっています。
ここの店長に聞いたのですが、接客時間は稼ぎにくいものの建物の説明はものすごくしやすいと話していました。
また、 ローコストメーカーのお客さんは、建物に対するこだわり云々はもちろんあるものの、資金計画に対する関心が非常に強いので、展示場の接客はそこそこに着座して資金計画の話に移行することができます。
これに対して中高級路線のメーカーは、お客さんの所得層も上がってくるので、資金計画が重要なのはもちろんですが、住宅展示場の仕様を通常よりもあげないと満足度が上がらないのです。
私は高級展示場とノーマル展示場両方で接客した経験があります
私は積水ハウス出身ですが、入社した1年目に配属された総合住宅展示場には、高級住宅展示場とノーマル住宅展示場の2棟が並んで建っていました。
お客さんがどちらかの展示場に来場すると接客に出ますが、ほとんどのお客さんをこの2棟同時に接客する経験をしています。
どちらが先かにもよりますが、高級住宅展示場を見た後にノーマル展示場を見てしまうと、 ほとんどのお客さんのテンションが下がったことを記憶していますし、逆の順番で接客をすると目が輝いて「素敵だね」と目の色が変わるのを間近で見てきました。
ただ、一般の住宅会社ではなかなか2棟を同時に建てることは難しいでしょうが、いずれにしてもどちらかを選択して建築せざるを得ません。
まとめ
今回のテーマは大昔から延々と議論の対象になってきた課題とも言えます。
住宅展示場を建てるときや建て替えの時期になると「豪華すぎる展示場も問題だぞ」「ノーマル仕様じゃ夢がないしな」と意見が交錯し喧々諤々となるわけです。
全国区ハウスメーカーの中でも意見は分かれるところですが、桧家住宅などでは「実物大の展示場」と前面に打ち出して、暗に豪華展示場を非難しています。
非難してるというのは言葉が適当ではないかもしれませんが、このキャッチコピーの陰には「豪華な展示場を見たって参考にならないじゃないですか」という気持ちが見え隠れしています。
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工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
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