住宅営業経験があるか、もしくは設計でもインテリアコーディネーターの現場監督でも何でもいいのですが、建築関連の業界にいればそれなりの知識はあるでしょう。
しかし、まったく違う分野からの転職者や、純粋な新卒者を採用 する場合、当然ながら彼らには住宅や建築の知識は全くないわけです。
そんな彼らに、住宅営業としてのお客さんとの接客や、建築の基本的な勉強をさせなくてはいけないわけですが、これを体系的に行っている住宅会社はほぼ皆無です。
「大手ハウスメーカーならやっているでしょう?」
それなりにやっているところはありますが、現実の話をしますと、ほぼやっていないというのが私の見解です。
私がよく知る全国ハウスメーカーも、基本的には現場に配属して “あとは頑張れ”方式がまかりとおっていますね。
テキストを与えて以下の勉強をさせる
①法令
いきなり宅建を取れというのではありません。
市街化調整区域、セットバック、接道義務、北側斜線など日常の業務で頻繁に出てくる用語を覚えさせてください。
暗渠排水がどうのこうのとか、市街化調整区域に家を建てるにはどうしたらいいか、といった込み入った話はまだ必要ありません 。
しかし、展示場でお客様接客すると、ちょくちょく出てくるような 内容は最低限覚えなくてはいけません。
「建て替えを検討しているんですけれども、セットバックが必要ですよね?」
こう言われてキョトンとしていてお話になりません。
②資金計画
昔と比べれば今は楽になりました。
手元の端末に数字を入れれば、簡単に返済計画が画面に出る時代になったからです。
しかし、いくら簡単に出るからといって、操作に習熟しなくてはいけないのはもちろんのこと、根本的な理屈を分かっていないとお客さんの前で恥をかくことになります。
100万円を30年間借りると毎月いくら返済すればよいのか、これが全ての基本になるわけですが、金利が0.1%変わるとどの程度変わるのかなどといったシミュレーションをどんどんやらせてください。
また、お金の話は借入だけではありません。
地震祭では神主さんにいくら包むのか、引っ越し繁忙期である3月に10tトラックで引っ越しをするとどの程度のお金がかかるのか など、いわゆる雑多なお金のことも覚えさせましょう。
③家のことについて
これをすべて教えようとすれば膨大な量になってしまうのですが、 私が普段コンサルティング先で行っている内容をそのまま書いていきましょう。
居室ごとの困りごとを覚えさせる
「困りごととはどんな意味ですか?」
ご説明しましょう。
主寝室を例にします。
ネットで調べればすぐに出てきますが、寝室で一般的に皆さんが困っていることは何かを調べると、ベッドで寝ると照明が直接目に当たってまぶしい、朝陽がカーテンの隙間から漏れてくる、コンセントが足りない、照明スイッチの場所が悪い、ウォークインクローゼットが狭くて使いづらい、などさまざまな問題点が出てきます。
これらを調べさせた上で徹底的に暗記させてください。
この知識が展示場や現場見学会などにおいて、お客さんとの会話が 弾む強烈な営業トークになるのです。
よくいるのは部屋の説明をするだけの営業マン。
部屋の説明を淡々とされても面白くもありませんし、営業にとっても話の進展が全く見込めません。
営業「寝室でよくあるお困りごとの一つが、カーテンの隙間から漏れてくる朝陽です。あれで目が覚めちゃう人が結構いらっしゃるようです」
奥様「うちの主人がそうです。夜勤もあるので昼はぐっすり眠らなくてはならないのですが、目が覚めちゃうことがあります」
こんな会話が成り立つではないですか。
こうした会話の積み重ねが、お客さんとの距離感を縮め、具体的な話へと昇華して行くのです。
高さ・深さ・幅・長さを徹底暗記
キッチンの標準的な高さは85cmです。
我々にとっては常識でも、新卒の若者には知る由もない数字でしょう。
では、キングサイズのベッドの幅は何センチかわかりますか。
ほぼ2mだと覚えておけば問題はないのですが、ベッドサイズにはキングサイズだけではなく、クイーン、シングル、ダブルなど様々なサイズが存在します。
これらの数字を覚えておけば、主寝室での接客時にこの数字を説明しながら接客が可能となります。
現場見学会会場での接客を再現してみましょうか。
営業「こちらが主寝室になるのですが、キングサイズのベッドを仮に真ん中に置いたとすると、両脇のスペースはそれぞれ1mほどとれます」
奥様「広く見えるけどもキングサイズ置くとそのぐらいになっちゃうのですね。うちはシングルを二台置こうと思っているのですけどもこの部屋だったら入りますか」
営業「そうですね・・・シングルサイズのベッド幅が1mほどですので・・・」
こんな感じで会話が進んでいくでしょう。
これはベッドの事例でしたが、キッチンの高さはもちろんのこと、 床下収納の深さやお風呂のドアの入り口の幅なども覚えておくといいでしょう。
建物に関する名称を覚えさせる
寄棟、切妻、入母屋、など屋根の形状には様々な呼び名が存在します。
その他にも、巾木などといった言葉も存在しますが、こうした一般的な建物の部位の名前を覚えさせるのです。
ネットを見て勉強すれば何のことはありません。
簡単に習得できるでしょう
和室の名称も必ず覚えさせる
和室そのものを必要とするかとの問題も存在しますが、年配の方やもしくはお施主さんが若い方であっても、ご両親と一緒に暮らす場合しっかりとした和室を作ることもあるでしょう。
和室の名称も念のために覚えておきたいところです。
床柱、鴨居、落とし掛け、地袋、天袋、これらは基本中の基本になりますが、これに加えてさまざまな障子の種類の名前まで覚えておけば完璧でしょう。
座学で覚えることはいくらでもある
座学だけで営業はマスターできませんが、 座学で覚えなくてはいけない事は山ほどあります。
接客センスはいかんともしがたい部分があるのですが、座学に関しては皆さん平等に臨めるはずですし、接客センスに若干かける営業であっても、座学でマスターできる部分は多分にあるはずです。
営業任せにしない方がいい
私は積水ハウス出身ですが、その当時の新卒研修は実に雑なものでした。
入社してすぐにひと月ほどの缶詰研修があったのですが、はっきり言って内容は残念なものでした。
基本的には営業所に配属されて、そこでかってにやれというスタンスです。
私はこの営業任せにするスタンスがどうしても腑に落ちません。
教えられる部分は系統的に教えれば力が早くつきますし、会社の戦力にもなるのです。
皆さんにもぜひこのように考えてほしいので、座学勉強をしっかりとスケジューリングしてください。
営業任せには絶対にしないことです。
使用テキストや勉強の仕方は指示する
テキストは事前に作って渡すようにしてください。
そこまでするのは手が回らないということであれば、座学で覚えるべき項目を書き連ねて、それぞれの項目に対してどんな本を読めばいいのか、youtubeを見ればいいのか、などを具体的に教えてあげてください。
例えば、子供部屋について勉強させたい時はこんなやり方があるでしょう。
【子供部屋・失敗】
この二つの単語を検索してください。
すると、たくさんの施主ブログが出てくるのと同時に、YouTube動画も検索に上がってきます。
それらを社長がチェックした上で、適当だと思われるものを営業社員に示して勉強するように通達するのです。
子ども部屋の失敗事例に関する10分程度のyoutube動画があったとしましょう。
ブログはしっかりと読み込まなくてはなりませんが、10分程度の動画であれば、簡単に見ることができるでしょう。
たった10分ですけれども、住宅系youtuberなどの動画は非常に良くまとまっているので、勉強するには最適のツールです。
まとめ
「とりあえず何回か接客してみろ」
これはこれでアリですが、座学による理論武装もしっかりさせてあげましょう。
今の人たちは、しっかりと指示をすれば着実にこなすとよく言われますが、これは私も非常に実感しているところです。
私の世代は新人類と呼ばれたのですが、その時々の世相によって 色が大きく変わるのは事実でしょう。
ですから、教えることを面倒くさがらずにやり切ってください。
コンサル先でよく目にするのは、せっかく採用したものの事実上の放置状態で成績をほぼ残すこともなく、半年から1年で退社していく営業社員の姿です。
本人も悲劇ですが、採用した会社のコストも実にバカらしいと思いませんか。
2万、3万にはうるさい社長が、数100万円の札束を捨てていると同じことには無頓着でいることが私には理解できません。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。