自分のことは意外にわからないものです。
ましてや新人営業にとって自分の強みが何かを見つけるのは、至難の業と言ってもいいでしょう。
だからこそ、第三者の立場から新人営業を客観的に観察し、その人物だからこそ使える営業トークなどを見つけてアドバイスするのです。
この原稿を書き始める5時間前まで、私はある住宅会社の女性営業(Aさん)とズーム面談をしていました。
「Aさんは武器になる営業トークを持っているじゃない」
面談途中でこんな会話になりました。
今日のコラムは、つい先ほどまで実際にやり取りしていた内容を中心に書き進めていきます。
「化粧品売り場でアルバイトをしていました」
私 「とても新卒には思えない落ち着いた雰囲気だよね」
Aさん「お客様からもよく言われます。二回目の商談で上司が同席した時に私が新卒営業だとわかると皆さん驚くんですよね(笑)」
私 「その雰囲気ってどこで培ったんだろう」
Aさん「学生時代にデパートの化粧品コーナーで美容部員をやっていたんですよ。学生みたいな雰囲気を出せないので、その時は気をつけて落ち着いた女性の雰囲気をだしていましたし、お客さんが何を考えているか見抜こうと努力していました」
何気なく会話をしていてふと出た話なのですが、この話を聞いた私は妙に納得して、こんなアドバイスをしたのです。
私 「美容部員をやっていた経験は住宅営業でネタとして上手く使えるよ。来場した奥さんが化粧っ気のない人だと嫌味になってしまうけれども、それなりに化粧して整えている奥さんであれば話が盛り上がるよね」
A さん「化粧が接客につながるんですか? 」
私 「もちろん!化粧用品の収納場所や化粧台の適切な場所も話としてできるだろうし、化粧は照明によってもずいぶん見え方が違ってくるでしょ?化粧台の照明の話とか窓の取り方などの話ができるでしょう」
こう話すとAさんは、納得したように自分のノートに何かをメモしだしました。
営業社員の営業トークを見つける
①学生時代のバイトや職歴を尋ねる
美容部員の話はこの一例になりますが、住宅営業以外で経験した仕事を確認してください。
その職種は何であれ、営業トークには必ず活かせます。
ビルの清掃
床を掃除したり窓を拭いたりするでしょう。
いかに隅々まできれいにするか、窓を素早くきれいにするにはどうしたらいいか、こんな話は雑談としては格好のネタになりますし、窓の高さによっては手を延ばして拭くのに難儀したなどという話もできるかもしれません。
窓の高さなどは、家を建ててからの毎日の掃除の話に繋げることができます。
不動産
これは分かりやすいでしょう。
前職が不動産で土地を毎日のように見ていたことが、土地を探している人にとっては大変興味深いことに映るのです。
引越し業
学生時代の4年間、引っ越しのアルバイトをして住宅営業になった男性営業社員を私は知っています。
彼はお客さんと話をするとき、必ず引っ越しの話を必ず絡めるといっていましたね。
自分が家具を家から運び出し、新居へ搬入する経験をしているので、大きな家具を持ちながら階段を上がったり、コーナーを曲がったりなどを経験しているわけです。
また、口には出せないと笑っていましたが、家具をいざ新居に配置してみると微妙に入らなかったりとか、お客さんが指示した場所に置いたものの、心の中で「この場所では動線が悪いよな・・・」 などと思っていたそうです。
この経験が、住宅営業の接客時に格好の話題になるのです。
いかがでしょうか。
こうして考えていくと、どんな仕事であっても住宅営業の雑談ネタに使えることがわかります。
ですから上司であるあなたが、若い営業社員が入ってきたら、過去の仕事できやバイト歴などを聞いて、具体的な営業トークを教えてあげるのです。
自分のことが営業トークのネタになると教える
先程からご紹介している女性営業のAさんですが、彼女はなんと三人姉妹とのこと。
ズーム面談をしながら何気なく家族のことを聞いたらわかった話なのですが、これも格好のネタとして使えるでしょう。
洗面台の奪い合いにならなかったか?
私はこうAさんに質問すると、彼女は即座にイエスと答えました。
2つ上の姉と2つ下の妹がいるとのことで、この3人が20歳前後に差し掛かった頃は、毎朝大変だったといっていました。
男性と比べると洗面所の占有時間は長いと推測できますので、洗面ボールが一つしかないと、3姉妹で揉める可能性があるのです。
Aさん一家に至っては3姉妹プラス母親になりますので、4人でごった返すことになってしまいます。
その結果お父さんがはじき出されることになり、Aさんの父親はよく文句を言っていたと笑っていました。
収納は足りていたか
これも女性の場合にはよく発生する問題なのですが、本人が赤ちゃんの頃に家を建てると、子供部屋として設定した空間に「とりあえず収納はこれでいいか」と安易に新築当時プランニングしてしまうことがあります。
ところが、中学生、高校生、大学生と成長するにつれ、女の子の場合はどうしても服が増えてきますし、アクセサリーなどの小物の収納場所にも困るようになります。
最近は収納を非常に意識した、提案力の高い住宅メーカーが増えましたが、今から20年も遡れば、収納といえば折れ戸になっていてパイプハンガーが一本渡してあるだけ、というのがごく普通の仕様だったと思います。
Aさんも中学生ぐらいになると、この収納に不満を持ち始めてよく母親に文句を言っていたとのこと。
バイトで美容部員をやるぐらいですから、オシャレに気を使ったり 化粧品を揃えたりすることにかなり傾注していたことが容易に想像できます。
問題点はもちろん指摘
これは当然のことでしょう。
話をしながら何か問題点を発見したら、すぐに指摘して直すように指導するのです。
この4月に入社した住宅会社の営業社員や中途の営業社員に対して 営業指導を私はしていますが、これまで関わった人数は約90名です。
この中のある男性営業マンの話をしましょう。
彼とは何度も会っていますが、初めて顔を合わせたのは4月15日でした。
ズームではなくリアルで30分程話をしたのですが、私が気になった点が2点ありました。
①早口
それもかなりの早口。
相手からすると、なんだか急かされているような感じを抱いてしまう喋り方だったので、それをすぐに指摘し次に話すときはもっと速度を落とすように指導したのです。
②人の話を最後まで聞かない
私が最後まで話をするのを待たずに「はい、はい、そうですよね」こんな感じで言葉をかぶせる癖があるのです。
会話の中の一部分で被せるのは構いませんが、全てにおいてこのような調子でした。
これも彼の癖なのでしょうが、これについても指摘をして直すようにと注意をしたのです。
まとめ
若い営業社員にはいろいろと教える必要があるのですが、彼らが持つ特性や素養を、客観的にみてアドバイスをあげてください。
本文でも書きましたが、人間は誰しも自分の事はよくわからないのです。
ましてや大卒の新入社員であれば23歳です。
学生時代にアルバイトをやった経験はあるでしょうが、正社員として営業職に従事するのでは次元が違います。
住宅関連の法規や仕様などについては必死に覚えるでしょうが、自分の家族構成が営業トークに使えるなどということには、案外気づかないのです。
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