不動産会社が住宅展示場を建てて新築事業に乗り出した

2020年12月19日。

名古屋市内のある展示場に足を運びました。

本業が不動産である会社が満を持して新築事業に乗り出したのです。

打診的に事業を始めたのではなく、大きな投資をして住宅展示場を作り大々的にスタートさせるのです。

このプロジェクトに私は春先から関わっているのですが、完成直前の12月19日に現場に行って、最終的な詰めや気になるポイントなどを指摘させていただきました。

私は基本的に工務店やハウスメーカーの方に向けた記事を書いていますが、今回はそれ以外に不動産専業の方にも是非目を通していたただきたいと書き進めていきます。

不動産専業の方の中にも「新築住宅ってどうなのだろう?」と関心を持たれている方も多いはずです。

そんな皆さんの参考記事になればと思っております。

工務店,展示場

新築減少予想もターゲットさえ絞れば明らかに参入メリットあり

先に結論を書いておきましょう。

新築着工数は今後10年で半減程度に落ち込むことが予想されております。

大手ハウスメーカーはお互いに食い合うことになるので、体力を消耗させるでしょうし、中には撤退に追い込まれる大手が出てもおかしくないと言われています。

こんな状況の中、新築を全くやったことのない不動産会社が新築に乗り出すことは、確かに勇気がいるでしょう。

しかしこちらの会社は、自信を持って参入しているのです。

ターゲットを決めペルソナを徹底する

もちろん今回のプロジェクトはまだ始まっていないので、成功するかどうかは未知数となります。

しかし、プロジェクトに関わっている私から見ると、失敗する要因を一つ一つ排除しながら話を進めているので、成功する確率が日々100%に近づいていると肌で感じています。

もちろん東日本大震災級の災害が発生したり、リーマンショック級の経済大変動が起これば事情は変わってくるでしょう。

さらに言うと、第三国からミサイルが日本国内に着弾するなどの戦争状態に陥れば、これまた計画は大きく狂うでしょう。

しかし、常識的な範囲で考えれば、今回のプロジェクトに関してはペルソナをしっかり設定しているので、私もかなり安心して客観的に 見ていられるのです。

【ペルソナ】

念のために用語解説をしておきましょう。

ペルソナ(persona)とは、商品やサービスの典型的な消費者像と考えてもらえばいいでしょう。

つまり、あたかもその人物が実在しているように、性別や年齢はもちろんのこと、出身地、住所、職業、年収、趣味、価値観、家族構成、休日の過ごし方など事細かに人物像を設定します。

似たような言葉にターゲットがありますが、ペルソナと比べると設定基準がゆるい言葉だとお考えください。

① 東京在住
② 40代
③ 女性
④ パートタイマー

この程度の設定をすることがターゲット選定になります。

前述したペルソナと比べると明らかに違うことがわかりでしょう。

このように新築住宅を契約してくれそうなお客さんを、細かく設定するのです。

このように設定した上でどのような住宅展示場にするのか、室内の 家具の色はどうするのか、接客スタイルはラフな感じでいくのかホテルマンのようなかしこまったスタイルにするのか、などを決定していくのです。

もちろんこれだけで受注は取れませんが、このようにペルソナを細かく設定していくことが成功への近道となります。

注文で勝負するか建売に絞り込むのか

チェス,ミニチュアハウス

私は不動産会社を経営していれば迷うでしょうね。

それなりのまとまった土地を仕入れて、それを3分割4分割にして建売を販売することが、まずは頭に浮かぶでしょう。

しかし、今回ご紹介している会社はこのやり方は選ばず、純粋に注文新築住宅に参入しました。

どちらがよいか一概に言えるはずもありませんが、私が不動産経営者であれば、注文新築住宅で勝負をします。

建売は良い場所さえ確保できればそれなりに売れます。

しかしその反面、土地購入が順調にできていれば物事はうまくいくものの、そのルートが途絶えてしまえば数字を伸ばすことはできません。

しかも、建売を選択すると間取りもごく一般的なものになりますし、 中の内装も贅を尽くすわけにはいかず、極端に特殊な仕様にもできないでしょう。

さらには価格もそこそこに抑えざるを得ないので、家づくりという観点からいくと面白くないとなります。

自社ブランドでいくかフランチャイズでいくか

フランチャイズに加盟する

1990年代に急伸したアイフルホームは、一気にそのシェアを拡大して日本全国にネット網を張り巡らせました。

その後さまざまな住宅フランチャイズが、雨後の竹の子のように頭を覗かせ乱立していますが、加盟するフランチャイズの選択さえ間違えなければ、これまた成功する確率は高いと思います。

これは架空の話ですが、コテコテの和風住宅にこだわったフランチャイズが存在するとしましょう。

ペルソナもしっかり設定し、出展する展示場の場所選定も周囲を入念にリサーチした上で実行するとします。

競合する会社もあまりないでしょうし、昔ながらの地場工務店が地域に複数あったとしても、フランチャイズはさまざまな情報やノウハウを持っていますので、彼らに勝つ可能性は極めて高いのです。

食わず嫌いの不動産会社の方も多いと思いますが、フランチャイズ本部の話を聞いて損はありません。

現状の住宅業界がどのようになっているのか、また戦略はどのように立てるのかを聞くだけでも、大きな収穫があるでしょう。

自社ブランドを創り出す

私が住宅出身なのでこのような発想になることはご容赦願いたいのですが、できれば自社ブランドを創出して勝負に出たいという夢は捨てきれません。

ペルソナをしっかり設定し、他にはない自社独自の住宅を作って世の中に供給するのです。

今回の不動産会社もまさにこの事例で、既存のフランチャイズに加盟するのではなく、ポリシーや独自色を全面に押し出した住宅を作り出し、ついに展示場出展にこぎつけました。

不動産会社の方にとっては、どこから手を付けたらいいのかわからないかもしれませんが、客層をしっかり絞り込んで事業に取り組めば、新築半減の時代であっても数字は間違いなく取れると思います。

フランチャイズに加盟すればその色に自分たちを合わせるわけですが、自社ブランドを作り出せばそのブランドに関心を持つお客さんを引き寄せることができるのです。

マニュアルを作って接客訓練をしっかり行う

展示場のマニュアル作成は必須

マニュアルと聞いてしまうと「マニュアルどおりの接客になるわけないだろう」と考える方も多いでしょう。

しかし、私がここでお話をしたいマニュアルは、その手のものではありません。

① 展示場で使用している設備などのメーカー名や品番を整理して答えられるようにする
② 「天井の高さは2m60cmあります」といった簡単な説明トークを 可能な限り作る
③ 「弊社の住宅づくりの理念は〇〇」と自信を持ってアピールできる内容を構築する
④ 「キッチンでの困りごとは何ですか?」このように各場所においてお客さんに問いかける定番トークを可能な限り作成する

このぐらいにしておきますが、とにかくさまざまな角度から考えたマニュアルを作成し、展示場オープンまでに訓練して下さい。

住宅営業経験者であればまだ何とかこなせますが、不動産専業でやってこられた方にとっては必須です。

実際こちらの会社でも、新築住宅販売経験者がいなかったので、他の部門の営業社員がスライドして新築部門にやってきました。

当然この社員には住宅営業の知識がありませんので、訓練開始当初は右往左往しましたが、半年掛けて色々やってきた結果、一通りの知識は身につきました。

ただし、実際の接客は全く別物ですので、展示場グランドオープン当初はわたくしが張り付いて、後ろから接客を見ることになっています。

まとめ

いろいろ書きましたが、不動産業者の方が新築部門に思い切って参入するには、フランチャイズに加盟するか明確なペルソナ設定をする前提で、自社ブランドを構築するかのどちらかです。

そして、フランチャイズに加盟すれば、フランチャイズのさまざまなマニュアルがあるのでそれに準拠していただきたいのですが、自社単独で動く場合には、マニュアルを必ず設定して準備を行ってください。

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