前回に引き続き注文住宅事業に関心がある不動産業界の皆様へ記事を書きます。
今日の内容は、注文住宅事業を手がける会社の社長がどんなことに悩んでいるかを中心に紹介します。
人の採用はもちろんですが、なんといっても営業が受注を取らないと会社は回らないので、どうやって受注を取ればいいのかは社長最大の関心事でしょう。
また、不動産事業と決定的に違うこともあります。
注文住宅事業は契約を取ってからの工程が極めて長く、そこでお客様とのトラブルにも発展しがちな性質を秘めています。
こうした、現実に起こるであろう問題を、新築専門のコンサルタントである私が一つ一つ解説していきます。
社員の採用方法は二通り
即戦力である中途社員を引き抜く
社長がまず考えるのはこれでしょうね。
コンサルをやっている私は、日本のあちこちでこんなことを社長から頼まれます。
「腕のいい営業マンがいたら紹介してよ」
わかってはいますが、腕のいい営業は簡単には引き抜けませんので、もし採用するとすればそれなりの歩合給を提示するしかないでしょう。
しかし、お金だけではないのもまた事実です。
給与はそこそこに良いものの、社長の方針に愛想が尽きて、 好条件さえ整えば一刻も早く転職したい営業マンはそこかしこに居ると思ってください。
ただし問題は、その接点を作り出すことが容易ではないことでしょう。
少し前の話ですが、名古屋市内の工務店の社長から「受注を取れる営業がいたら紹介してよ。今の給料よりは必ず高い額を提示するから」こう言われてパッと頭に思いついたのは、青森県在住の優秀営業マンでした。
彼は間違いなく腕があったのですが、社長の方針についていけなくて若干腐り加減であったことを私は知っていたのです。
この話を一旦預かり、念のために青森在住の彼に聞いてみたのですが「名古屋ですか・・・それは無理ですよ」となり話は終わり。
当然ですよね。
青森在住の営業マンに、突然名古屋に行かないかと言っても、 彼には家族もありましたし自宅も新築したばかりだったのです。
これは余談になりますが、このような即戦力を斡旋する会社も存在しています。
ご参考までに斡旋料の目安は、年収30%程度とお考えください。
即戦力を紹介してもらい、その人物に800万円程度の年収を用意するとすれば、人材斡旋会社には240万円程度を支払わなくてはいけません。
採用した人間が想定どおりの受注を取ってくれれば、注文住宅の利益率から考えれば、この金額は一棟受注するだけで簡単にペイできます。
未経験者を探す
力のある経験者を引き抜くのは大変なので、その次に考えられるのは、地道に募集をかけて面接をすることでしょう。
ただしこれに関しては、不動産でも同じだと思いますが、なかなか簡単に人はやってきません。
私は採用のお手伝いもしますが、若くていい人物を集めるには、最低限ホームページをオシャレに作るのと同時に、会社の雰囲気がしっかり伝わる内容にしなくてはアウトです。
給与面は高いことに越したことありませんが、それと並んで大事なのは、福利厚生や働く環境となります。
日々の残業をいかに抑えるか、また休日出勤は本当にやむを得ない時のみ発生するとしっかり謳わないと、若い人間は 見向きもしないことだけを覚えておきましょう。
営業の教育が必要
新築住宅を売らせるためには、社員教育は必須になります。
展示場を作るのであれば、その展示場の接客マニュアルを整備した上で、入念なロールプレイングが必要になりますし、 住宅独自の法令や住宅ローンなどの知識も事前に覚えさせる必要があります。
しかし、私が見ていると、この部分をおろそかにしている経営者が非常に多いと感じます。
フランチャイズ御三家に入る住宅FCがあるのですが、この誰もがその名前を知る住宅FCの運営母体は、会社がまだ小さい頃から社員教育だけは徹底してやってきました。
20年前から会長を知っていますが、この会長の信念は【どんな時でも教育を優先する】ことでした。
今でも社員の方に会うと「会長の方針が社員全員に根付いています。それを加盟店の皆さんにもこんこんと説明しているのですよ」具体的な営業教育方法は割愛しますが、とにかく営業マンをしっかり教育することは怠らないでください。
他社研究も必要
不動産業界においても他社との競合はあるでしょう。
同じ土地であっても複数の会社が紹介するパターンもあるでしょうし、あなたの会社で紹介した土地と他社が紹介した別の土地の条件が極めて似通っている場合、お客さんに対していかに自社の土地が優れているかをアピールするプレゼンテーション能力も必要となります。
しかし、注文住宅に乗り出すのであれば、ほぼほぼ競合があると思って間違いありませんので、その競合先の住宅会社がどのような家を建てるのかを徹底的に研究する必要が生じるのです。
不動産専門の会社が新築住宅に乗り出すと、このことに大きな違和感や戸惑いを覚える社長が多いと私は感じています。
契約後のフォローが大事
これも不動産業と注文住宅業の大きな違いでしょう。
注文住宅を手掛けると契約が最終目標とはなりません。
契約行為だけを最終目標に据えると、会社は必ずおかしくなります。
建築請負契約を結ぶ時点では、話はまだ道半ばと思ってください。
契約偏重の営業体制をとると、契約内容が雑になったり、あるいは嘘とは言わないまでも、お客さんとの認識に齟齬が生じて後々大きなトラブルに発展します。
このトラブルが、利益をどんどん削り取っていくことになり、 最終的には手間ばかりかかって利益がない状態に陥ってしまいます。
レベルの高い現場監督が必要
現場監督の重要性にも目を向けてください。
現場監督は文字どおり現場の進行を仕切る行事のような役目ですが、能力の差によって利益率も変わってきますし、トラブルの発生率も大きく変動します。
現場監督が優秀だと、トラブル発生率が激減するのと同時に それに比例してお客さんの満足度が上がり、紹介受注の可能性まで高まるのです。
また、受注が立て込んでくると、手際よく現場を処理する必要性に迫られるので、段取りの悪い監督を抱えてしまうと 現場が渋滞を起こして、にっちもさっちもいかなくなるのです。
引き渡し後も勝負
注文住宅を継続して利益を上げ続けるには、お客さんからの紹介受注を狙わなくてはなりません。
建てた家に満足することが絶対条件ですが、いくら住み心地の良い家であっても、アフターフォローが疎かであったり、人間関係が疎遠になると、紹介の可能性はほぼなくなると肝に銘じてください。
だから、大手ハウスメーカーは、契約後のフォロー体制を万全に整えて社員を貼り付けるのです。
私が在籍した積水ハウスも、その当時から紹介が多いハウスメーカーとして有名でしたが、社内が「紹介受注を一軒でも取るんだ」との風土になっていたことを今でもはっきりと覚えています。
事業開始の時点で紹介を意識する
なかなか難しいことですが、一棟目の受注を取る前から紹介受注のことも絵に書いてください。
良いものを作ればそのうち紹介が出るだろう、ではだめなのです。
新築住宅における紹介受注は、こちらが仕掛けて積極的に取りに行くから出るのであって、何のアクションも起こさずに紹介がどんどん出てくることはまず無いと考えください。
ごくたまには、何の仕掛けもしないのに紹介がガンガン出る工務店もありますが、そのようなレアケースを見て期待をするのは極めて危険だと私は考えています。
まとめ
新築注文事業に乗り出すと、さまざまなハードルが次から次へと出てきます。
特に不動産専門でやっていた方が注文事業に乗り出せば、全く想定していない壁にぶち当たるわけですが、そんな障害ポイントを何点かに分けて解説致しました。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。