今回からまた新シリーズを始めます。
私は新築とリフォーム専門の営業コンサルタントですが、 このような仕事を始めるきっかけとなったのは自分自身が他の営業よりも多数の受注を上げたからです。
もちろん自分でいろいろ工夫もしましたが、単なる根性論で突破した受注もありました。
また、自分に従来から備わっていた感性が功を奏して受注が取れたものも多分にあったと思っています。
これまで住宅営業ノウハウに関する単行本を20冊以上執筆してきましたが、改めてこのコラムでまとめ直し、じっくりと皆さんにお伝えしたいと思います。
工務店の方は工務店の立場で、ハウスメーカーの方はハウスメーカーの立場でご覧いただければと思いますし、経営者幹部社員の方は部下のご指導の参考にされてください。
効率は大事だが絶対的な行動量は不可欠
月400件の訪問が目標値だった
新卒で入った私へのノルマです。
これは純粋な飛び込みも含めますが、先輩たちがほとんどアプローチしていないようなお客さんのリストや、その他の経路で入手したリストへのアプローチも含みます。
コロナという特殊な事情は横におきますが、25日稼働とすると一日あたり15、6件の訪問活動をこなさなくてはなりません。
これは不在も含みますので、実際にこの活動でお会いできるのはせいぜい半数の7、8件でしょう。
他に業務が何もなければ簡単にこなせる仕事量ですが、実際には雑務や契約目標客との折衝もありますので、このようにはいきません。
また、現在は直接訪問しなくても様々な接触方法が存在しているので、これをこのまま当てはめるのはナンセンスだと思います。
「ナンセンスだ・・・」と書いたものの
ナンセンスだと私は書きましたが、実際にこれをやったらどういう結果が出るでしょうか。
結論としては成果が出ると思います。
どの程度かは判然しませんが、恐らく数字は上がるでしょう。
私が営業であればやりたくありませんし、経営者であっても部下にここまでやれとは言いません。
しかし、訪問販売のスタイルを取るリフォーム会社などで凄まじい実績を上げている営業が多数いるのは事実です。
彼らには優れた営業トークが備わっているのと同時に、なんとしても数字を取ってやろうという気概もあります。
ただ、それと同時に彼らが必ず口にするのが「量は質を凌駕する」ということ。
厳然たることとして、分母を増やせば分子が増えるという事実も厳然と存在するのです。
繰り返しますが、私個人が営業であれば絶対にやりたくありません(笑)
しかし、この原則が働くことだけは頭に入れておくべきでしょう。
「人と家の話をする経験値を積め」が店長の口癖
30年前に私の上司が、口癖として毎日このように話していました。
しかし、これに関しては30年前でも今でも全く変わらないと、私は断言いたします。
家に関する雑談を、お客さんであろうが自分の友人であろうが構わないので、たくさんして経験値を積むのです。
前述した訪問活動とリンクするのですが、毎月400件のノルマをこなした結果、実際に顔を合わせて話をできた件数は、約50件でした。
つまり、毎月50人の方々と、家に関する話を内容の濃淡はあるものの話す経験をできたわけです。
仮にこれを一年間継続したとすれば、約600人の方と話をすることになり、そこで経験した会話のパターンは、かけがえのない財産となります。
こんな会話内容を今でも覚えている
私「こんにちは。積水ハウスと申しますが、5年ほど前に弊社の展示場にお越しいただいたかと思います。その後ご計画はどうなったかと思い伺いました」
インターホンでこう呼びかけた私に対して、奥様が玄関ドアを開けて顔を出してくれました。
奥様「積水ハウスはいいんだけども、おたくは高いじゃない。 なんであんなに高いの?(笑)」
私「そうですね、確かにいい値段がするかと思いますが・・・ その・・・ あのう・・・」
笑ってごまかして終わりです。
この時のことははっきり覚えています。
家の話はある程度できるようになった頃のことでしたが、 あまりにもストレートな質問に対して、私は答えることができなかったのです。
奥様にこう言われたことを手元のノートにメモして事務所に帰ってから、先輩にこのことを報告しました。
先輩は私に対していろいろとアドバイスをくれたわけですが、それ以降これに類似する質問に対して私は澱みなく答えられるようになりました。
週間単位で行動予定を立案する営業は少ない
私も当時は苦手でしたが、週間単位で営業行動予定を立てることは極めて重要です。
自分の経験に加えて、今さまざまな先でコンサルティングを行っていますが、先々の行動予定まで立てて動いている住宅営業マンはあまりいないと言わざるを得ません。
中堅社員以上になり、契約予定や契約後のお客さんの予定が詰まっている営業は、スケジュール帳を見るとそれなりに予定が埋まっているように見えます。
ところが、フィックスの予定が一日に二件あるとすると、それ以外の空いた時間に何をするのかは、明確に決まっていません。
細々とした雑務はたくさんあるので、詳細まで決めるのは不可能だとは思いますが、この空いてる時間に何か予定を詰め込むことにより営業効率が上がるのです。
私が上司から受けた指導
新卒で入った時の上司には今でも感謝しているのですが、 スケジュールの立案方法をしっかりと教えてもらいました。
店長「週明けの予定はどうなっているか見せてみろ」
私 「契約やら色決めやら結構ありますし、あとは市役所や法務局にも行くのでかなり細々としています」
店長「月曜日は午前中がSさんの契約でご自宅まで行くわけだな。その後昼頃に帰ってきて、3時からFさんとインテリアコーディネーターを入れての打合せだ」
私 「そうです。この日は夜もアポイントがあるので、ほぼほぼパンパンですね」
店長「Sさんの契約が終わって昼帰って来るわけだけど、次の打合せは3時だろ?この間に何か具体的なスケジュールを一つ入れろ。どんなことができる?」
私 「えっと・・・ そうですね、見込み客に若干数は電話をかけてもいいかなという気はしますが」
店長「よし、ではそれをやれ。見込み客5件の名前をここに書いてからまた俺に提出しろ」
この会話は今でもよく覚えています。
ほぼこんな感じのやり取りをしたのですが、私は午前中に契約を終え事務所に帰ってきた後、3時からの予定まで2時間の余裕がありました。
表向きはここで雑務をするというつもりではいましたが、 実際にはダラダラ過ごして終わる可能性が濃厚だったと思います。
当時の店長はこの辺りを鋭く見つけて、私に指示を出したのです。
そのうち先回りをするようになる
こんな上司だったのですが、予定表を出すたびに同じような詰め方をされるので、先回りをしてこのような指摘をされないようにスケジュールを組む癖が身につきます。
そして、ほぼほぼスケジュールを埋める癖がついた頃には、 上司は私に対して何も言わなくなりました。
上司の方はこれを参考にしてほしいですし、前線で活躍する営業マンの方は、この手法を自分に鞭打ってやってみてください。
かなりしんどいと思いますが、予定を詰めることは行動量を増やすことになります。
2時間などは事務所に居ればあっという間に過ぎる時間ですが、この間に5本の電話を掛けるだけでその先の数字に大きな差が出るのです。
これは私も体感しているから自信を持って言えるのですが、このような形で入れ込んだ電話でアポが取れたり、アポが取れないまでも久しぶりのお客さんと電話で若干の話をしてコミュニケーションをとるなどの成果がありました。
その当時から、この指導内容は極めて的を射た優れたものだと認識していたので、上司の指導を信じて苦労しながらも無意識にできるようになったのです。
まとめ
上司の立場からのパワハラはいけませんし、過度なプレッシャーを与えるのにも私は反対です。
私の時代はこのような風潮がはびこっていましたし、どう見ても論外としか言いようがない上司がいたのも事実です。
しかし、行動量を保つことは営業として成功するための大きな柱であることは間違いないでしょう。
上から言われて嫌々やったり、パワハラによる強要では絶対に成果は出ません。
上司として指導する場合にも、なぜこのように行動量を増やすのかを説明する必要がありますし、前線の営業マンならば上司に言われなくてもこの事を理解し、率先して行動してみてください。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。