工務店が少額リフォームをとるメリットは計り知れないものがある

リフォーム受注をうまく行っている工務店は数少ないと私は見ていますが、その大きな理由の一つは「大規模リフォームならいいけどこまごました小さいのをとっても手間ばかりでやっていられないよ」であるのは間違いないでしょう。

でも、これは非常に大きな機会損失です。
小さなリフォーム自体は利益もほぼありませんし、忙しい時期においては人工を取られるだけでいいことなんか何もないと感じるかもしれません。

しかし、それは間違っています。

小さなリフォームが後日必ず大きな利益をあなたの会社にもたらすことになるのです。

小さなリフォーム工事が嫌な気持ちは理解できる

気持ちはわかります。

私が小規模工務店の社長であれば忙しい時期に手間は取られるし、まとまった工事ならいざ知らず、小規模な工事や下手をしたら営繕程度の仕事で時間を取られると割に合わないからです。

さらに厄介なのは、良かれと思って施主宅に顔を出したところ、想定外のクレームを拾ってしまうこともたまに発生するからです。

私の眼前で発生したクレーム

クレーム

また聞きではありません。

私の目の前で発生した事例をお話ししましょう。

九州のある地場工務店(家族経営)の社長と一緒にOB客宅にノーアポ訪問した時の話です。

「疎遠は良くないからとりあえず顔を出してみましょう」という私のアドバイスをもとに一緒にOB宅に出向きました。

「お久しぶりです~」と出足は和やかな雰囲気

50代と思しき奥さんが玄関先に現れ「びっくりした~社長!元気だった?」とだいたいこんな感じの再会。

10分くらいは家とは全く関係ない話をしていましたが、その雰囲気はいたって和やかで、私は内心「ほら、来てよかったでしょ、社長」と思っていました。

話は次第に家の話になっていくのですが、それも特に問題はありませんでした。

社長はいい家づくりに命を懸けるタイプでしたので、手掛けた住宅には自信があります。

それについては奥さんも納得した様子で、素晴らしい床柱や二間続きの間に設けられた欄間などの出来栄えにも大満足。

ところが、ひょんな話から流れが完全におかしくなってきたのです。

奥様「とにかくいいところに来てもらったわ。網戸がさすがにくたびれてきたのと、クロスもあちらこちら剥がれてきたのよね」
社長「たしかに年月が経ちましたからね。お任せ下さい、いったん社に持ち帰って見積もりを作りますよ」
奥様「見積もり? お金かかっちゃうの?」
社長「えっ・・・それはお金はかかります・・・」
奥様「でも、クロスなんかは引き渡しして結構すぐに剥がれたりした箇所があったわよ」
社長「それはその時すぐに言ってもらわないと」
奥様「そんなこと社長は言わなかったじゃない」

このあたりでやめておきますが社長と奥さんの会話は結構ヒートアップして最後はちょっとした言い合いになってしまいました。

あっという間の出来事でしたので 私も何が起こったのかよくわからなかったのですが、社長としては無料で工事をするわけにはいきません。

ところが奥さんは、どういうわけか無料で工事をしてくれるのが当たり前だと言う感覚でいたのです。

奥さんがこのように思った理由は二つ。

 

① 2年くらいでクロスの捲れが目立ち始めた
②「多少の事なら手直ししますよ」と引き渡しの時社長に言われた

 

今となっては言った言わないだが

クロスの捲れに関しては定かではありません。

本当に2年ほどで捲れ始めたかどうかは奥さんしかわからないのです。

ところが社長としては、そんなことはないだろうと言うわけです。

でも、クロスの保証は一般的に2年程度ですので、2年ぐらいで剥がれてきたというのはなかなか微妙な話でしょう。

問題は引き渡しに社長が発したリップサービス。

「ちょっとしたことならばサービスでやってあげるよと言った」と奥さんは主張。

「確かにそんなことは言ったけどね」と社長も話していたのですが、それにしてもどうしてこんな行き違いになったのかというのは今でもよく分かりません。

OB宅に行くととんでもないことになる

この一件があったのは今からもう10年前のことです。

社長とは今でも親交がありますが、奥さんと揉めてからはOB客のお宅に行くことがめっきり減ったとのこと。

つまり、こちらはちょっと顔を出して挨拶をするつもりで訪問し、何か聞かれればプロとしての答えをアドバイスしてとしてあげよう、くらいのつもりでいたのです。

しかし、予想に反してお客さんとトラブルを起こすどころか、本来であれば真っ当な工事を「ずさんな工事をされた」といちゃもんを付けられる形になり、下手をするとその工事をまるまる赤字で請け負うようなことにもなりかねないわけです。

私も工務店の社長とお客さんのお宅を訪問する機会がちょこちょことありますが、こんな事に出くわしたのはさすがに最初で

最後。

それ以前にもありませんですし、この10年間にも一切ありませんでした。

足を運ぶととんでもないことになるというのが足かせ

結局こういうことですよね。

私としてはOB宅の築年数が10年とか20年経ったあたりで訪問すれば、必ずリフォームの需要があると社長に口を酸っぱくしてアドバイスをして回っています。

ただ、間が空きすぎると、訪問しづらくなってしまうという気持ちは、この私もよくわかります。

これを解消するには普段から接触をするということを意識することしか対策はありません。

接触といっても直接訪問で定期的に回れと言っているわけではありません。

手紙でもいいですし電話でもいいでしょう。

お客さんがメールアドレスもっていればもちろんメールでも構わないのです。

このような形で普段から意思疎通を図っていればこのようなトラブルが起きません。

しかも、頭の中に新築をした工務店の存在が常に存在する形になるので、いざリフォームを考えた時に真っ先に浮かぶのは工務店の社長なのです。

話を本題に戻しましょう

今回のコラムのタイトルは「工務店が少額リフォームをとるメリットは計り知れないものがある」でしたね。

しかし、今お話したお客様とのトラブルは、今回のコラムには欠かせない話なのです。

大きなリフォーム工事が取れるかもしれないとなれば、気合を入れてOB宅にも行くでしょう。

ところが、お客さんから工事の依頼があったわけでもなんでもない単なる定期訪問では、気合がはいらないのも当然でしょう。

よくて小さな営繕工事、最悪の場合はトラブルになってしまうこともあるのです。

小さなリフォーム工事が記憶に残る

最後に大事な話をしましょう。

定期的にこまめに顔を出していると、必ずと言っていいほど小さな工事が取れます。

ひょっとすると工事とは言えないような営繕的な仕事かもしれません。

しかし、この小さな仕事がお客さんの頭の中にしっかりとインプットされるのです。

例えば10万円の 工事をしたとしましょう。

金額はわずかですし手間とか考えると、工務店の中には「そんな小さいのはやってられないよ」という社長もいるでしょう。

しかし、それは間違っています。

10万円の工事をした3年後に「そういえばキッチンも古くなってきたわよね」という話が家族の中で出たとしましょう。
この時に 10万円の工事が生きてくるのです。

「そういえば〇〇社長のところもリフォームってやってくれるんだよね」と思いだすわけです。

なかなか理解できないかもしれませんが、10万円の工事が無いとこの一文が出てこない可能性が極めて高まるのです。

リフォームをやろうと思うと、お客さんはリフォーム会社を探し始めます。

しかし、ここでいうリフォーム会社とはリフォーム専業でやっている会社になります。

インターネットで検索してみようと思った時「愛知県」「リフォーム」と例えばですがこんな単語を入れるのですね。
すると、愛知県内でリフォームを専業として行っている住宅会社が上からたくさん出てきます。

高い確率でそうしたリフォーム会社にコンタクトをとってしまうものだと肝に銘じてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

小さな工事をやっておくと、お客さんの頭の中に「社長はリフォーム工事もやるんだ」と記憶されるのです。
この重要性がおわかりいただけたでしょうか。

そのためにも、普段から定期的とは言わないまでも、あまり間を開けずにお客さんと接触をすることが重要となります。

ところが、文中でも事例を書きましたが、顔を出すことが思わぬクレームに発展したり、あるいは補修工事的なことを無償でやるような可能性もあるのです。

しかし、それを恐れていると、お客さんのお宅からどんどん足が離れ、リフォーム受注からもどんどん遠のいていくのです。

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