国の方針としては今までの新築一辺倒の住宅政策から舵を切り、ストック住宅つまりリフォームにもっと力を入れる方針を鮮明にしています。
しかし、当初の目標に比べると、その進捗度合いは遅れていると言わざるを得ませんし、日本人に根強い新築信仰がこの壁になっている点も事実と思います。
とは言え、年々リフォーム市場が活況になっていることは事実ですし、それはあらゆる数字が証明していると思います。
このような現状の中、国交省が頭となってリフォーム市場の活性化に向けて旗を振っています。
その動きの中で、住宅リフォーム業者団体登録制度なるものが登場したのです。
今回のコラムでは この制度は一体何なのかを説明するのと同時に、小規模から中規模の工務店であれば、この制度に加入していると極めて大きな利益をもたらすという話も細かくご説明していきます。
住宅リフォーム業者団体登録制度
【国交省ホームページより】
住宅リフォーム事業の健全な発達及び消費者が安心してリフォームを行うことができる環境の整備を図るために、国土交通省の告示による住宅リフォーム事業者団体登録制度を創設しました(告示公布・施行平成26年9月1日、一部改正令和2年12月23日)。
住宅リフォーム事業者団体の登録に関し必要な事項を定め、要件を満たす住宅リフォーム事業者団体を国が登録・公表することにより、団体を通じた住宅リフォーム事業者の業務の適正な運営を確保するとともに、消費者への情報提供等を行い、消費者が住宅リフォーム事業者の選択の際の判断材料とできるなど、安心してリフォームを行うことができる市場環境の整備を図ります。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000090.html
国交省ホームページからの抜粋ですが、 住宅リフォーム業者団体登録制度とはこのような趣旨のもとに設立されたものです。
文章を読み進めていきますと、国の考えというのが明快に見えてきます。
SDGs(私は反対ですが)に代表されるように、持続可能な社会を目指すことが国際的な流れになっている中、欧米各国と比べて日本の住宅は寿命が短くスクラップアンドビルドで住宅産業を支えているのは周知の事実です。
これらの状況から考えるに、新築一辺倒の政策を見直し中古住宅の流通を促すことが喫緊の課題になっています。
しかしながら日本の住宅は、断熱性や機密性などの基準が甘く既存の建築物の中には著しく性能が低いものが多数見られるのが現状です。
また、リフォームに注目が集まるにつれ、いわゆる悪徳リフォーム業者や、悪徳までいかないにしてもレベルの低い工事をする工務店などが多数存在するという問題点を考えています。
これから新築する物件については、こうした断熱性や機密性などの基準を厳しくすることによって質は向上してくると思われますが、 もうひとつの問題であるリフォームを推進するにあたって、一定のレベルをクリアしていない業者が市場を闊歩することは、中古住宅市場の信頼を貶めることになり、その結果ストック住宅が日本の文化として定着しない原因ともなります。
国がお墨付きを与えた複数の団体を認定している
この表も先ほどの国交省のホームページからそのまま移したものですが、ここには16の団体を国交省が認定し、それぞれの団体に優良なリフォーム業者が登録されています。
つまり地域の工務店は、このどれかの団体に加盟することが間接的に国のお墨付きを得ていることの証になるのです。
もちろん一定の審査が存在し、技術的レベルの低い工務店や財務上の大きな不安を抱えている工務店などは簡単に入ることはできません。
ただし、16の団体それぞれが審査基準を設けていますので、ハードルの高い団体とその逆に低い団体があるのは事実です。
しかし、いずれにしてもどこかに加盟していれば、国交省のお墨付きを得ているということで 下のこのマークを使うことができます。
お客さんと折衝するときこのマークを提示して「国交省認定の〇〇という団体に弊社は加盟しております」というセールストークが可能になるのです。
実際に大きな受注をあげた成功事例をご紹介しましょう
従業員30人程度の中部地方にある地場工務店F社での話です。
F社は従来の営業活動ではリフォームをほぼ行っていませんでしたが、ご多分に漏れず新築受注が以前と比べると減少し、さらには10年後20年後に新築が激減するという情報に接した社長が「リフォームもしっかりやっていこう」と戦略を転換し、先ほど挙げた16の団体の中の一つに加盟しました。
そして、これもすでに述べたように、認可団体に加盟しているので上のマークを堂々と営業活動で使えるようになったのです。
F社の住宅展示場に“ふらっ”と現れたお客さん
一年半前になりますが、お盆直前で気温もかなり上がった蒸し暑い日のこと、F社が保有する住宅展示場に60代のご夫婦が飛び込みでやってきました。
接客した営業マンからから「建て替えかリフォームで悩んでいるということでした。弊社以外にもリフォーム専業の会社にも足を運んでいて、そこから見積もりをもらおうかどうか悩んでいるところだとのことでした」と聞いたのです。
このようなお客さんだったのですが、お客さんと営業マンとの間で次のような会話があったそうです。
営業「いいえ、リフォームも積極的といいますか得意にしている工務店です」
主人「それは知らなかった。てっきり新築しかやらないものだと思っていて、すぐ近くにある〇〇リフォームに昨日行ったんだよね。まだ見積もりは取ってないけど、そちらで出してもらおうかと悩んでいるんだよ」
営業「 住宅事業者リフォーム団体登録制度をご存知ですか?」
主人「聞いたことないね」
営業「確かにほとんどのかたがこの存在をご存じないと思いますが 弊社は国交省から認定を受けました〇〇というリフォーム団体に加盟しております。この団体には当然なのですが一定の技術レベルや信用力等がないと加盟することができません。このマークをご覧いただきたいのですが・・・」
このような感じで会話を進め、先ほどの認定マークをお客さんにお見せしたのです。
お客さんの態度が一変
営業からの報告をそのまま書きますが「この説明をした途端にお客さんの表情ががらりと変わり一気に前向きになったのですよね」とのこと。
つまり、ただ単純に「弊社はリフォームをやりますよ」だけではこうはならなかったということです。
リフォームか建て替えかは別として、F社にリフォームを任せても大丈夫だなという確信を持ってもらうことに成功したのです。
建て替えに近いフルリフォームを受注
競合はそれなりにあり、まぁ、値引きも多少したようですが、建て替えに匹敵するようなフルリフォームを受注できました。
もちろん1,000万円を超える受注金額になります。
F社においては 1,000万円を超えるリフォームというのは初めてのこと。
一番驚いたのは社長です。
「リフォームで1,000万円を超えるような金額を取れるんだね!」 と熱く語っていた 社長の顔が非常に印象的でした。
なんでもそうですが、一度でも成功体験を積むと次は方向性がはっきりします。
②国交省の認可団体に加盟している正式会員であることを全面的に押し出すようにした
③国交省認定のマークを必ずお客さんの目につくようなところに提示するようにした
この三点を行うようにしました。
その結果、今でも順調にリフォーム受注を取れるようになってきたのです。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
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