国の方針としては今までの新築一辺倒の住宅政策から舵を切り、ストック住宅つまりリフォームにもっと力を入れる方針を鮮明にしています。
しかし、当初の目標に比べると、その進捗度合いは遅れていると言わざるを得ません。
その遅れを横目に見ながら「そんなに慌てることないな」 と腰を落ち着けている工務店さんはいないでしょうか?
しかし、これは極めて危険なことだと私は断言します。
とにかく動いてください。
しかし、具体的な動き方がわからない方も多いかと思います。
今回のコラムでは、ほぼ新築しかやってこなかった工務店がリフォームを受注しようと考えたとき、いったい何から始めたらいいのかについて解説していきましょう。
とにかくOB施主さんへの接点を持つこと
何でも良いのでコンタクトをとる
これが基本中の基本です。
コテコテな内容なのですが、OB施主さんからリフォームの仕事を受注しようと思えば、まずはこの話を上げざるを得ません。
このような基本的な話には耳を塞いでしまう工務店経営者の方も多いのですが、お施主さんとの接点を持つことが、利益を上げる第一歩としかいいようがありません。
訪問でも構いませんし、電話でももちろん大丈夫です。
メールもあるでしょうし手紙を書くのもいいでしょう。
とにかくお施主さんとつながっていることが大事であるとお考えください。
都内の設計事務所のお話をしましょう
都内で設計事務所を営むある兄弟の話
実話であると最初にお断りをしておきます。
私はこの設計事務所に一回だけですが足を運んだことがあり、社長と3時間位お話をしてさまざまな活動実態を聞いてきました。
優しい語り口かつ饒舌に営業活動の話をしてくれたのですが、こちらの設計事務所(S社)の営業活動で最も印象に残ったのが、お施主さんのフォロー活動でした。
1000万円以上のリフォームを5件抱えていた
私が取材したのは昨年の秋口のこと。
昼過ぎにS社の事務所にお邪魔し、ビデオカメラを回し始めました。
社長の考えは実にユニークで「発想力がすごいな」と感じながら聞いていたのですが、もっとも関心深かった話はリフォームの話でした。
社長「はい、やっていますよ。リフォームはけっこう儲かるので、大事な収益源です」
私「大型案件もあるのですか?」
社長「1000万越えのリフォーム案件が5件動いてますよ」
私「5件ですか?ちょっと驚いたのですが、それをどうやって受注したのです?」
こんな形でリフォームの受注の手法を話し始めてくれました。
大型リフォーム案件の内訳
②メール問い合わせによる新規のリフォーム・・・2件
以上です。
S社はあくまでも新築専門の工務店であり、事務所の佇まいを見てもいわゆる普通の工務店。
「リフォームをやります」などといったよくありがちな看板の類も一切ありません。
また、ホームページを見ても、リフォームを推進しているような文言もほとんど目立ちません。
もちろん「リフォームもお気軽に」程度のフレーズはホームページ内にありますが、どう見ても会社としてリフォームを推進しているようには見えないのです。
5件の大型案件があり、そのうち3件がOBのお施主さんからだと書きました。
今回はこの3件をどうやってと受注したのか、どのような経緯で受注したのかを書いていきます。
年末のカレンダー配り
意表をつかれた方も多いのではないでしょうか(笑)
しかし、取材時に進行中だった3件の大型リフォームは、そのすべてが年末のカレンダー配りに端を発しているのです。
新築をしたお客さんですから、カレンダーを持参し訪問したところで新たな新築が取れるわけではありません。
こんなことは百も承知ですが、10年~20年したお宅を訪問するとこんな会話が発生するのです。
客 「もう一年も経ちましたね」
社長「そうですよね。ところで建物に不具合などはありませんか?」
客 「特に大きな問題はないけど、外壁がちょっと汚れてるかなあって感じがするのと、給湯器がなんとなく調子悪いかもしれないかな・・・」
社長「確かに外壁は塗り替えの時期にきていますからね。給湯器もそろそろといえばそろそろですよ。一回見てみましょうか?」
客 「お時間あるの?」
流れとしてはこのような感じになります。
ごく自然な会話だと思いますし、このような経過をたどって家の中へ入り給湯器を点検し、さらに外壁も見れば「ためしに見積りを取ってみましょうか?」となる確率が半分程度はあると思います。
顔を合わせないとどうなるか?
S社ではない別の工務店の話を聞いてください。
広島県のある地場工務店になりますが、社長と息子さんである一級建築士と一緒にOBお施主さんのお宅を訪問したことがあります。
全部で7~8件回ったのですが、いずれも5年~10年の間顔を出していない方ばかりでした。
その中の一件なのですが、久しぶりに顔を出した社長としばし歓談ののち、社長がこう切り出したのです。
奥様「去年のことだけどもトイレを含めて少しやっちゃったのね」
社長「あ・・・そうですか・・・」
奥様「そっか!社長の事を忘れていたわ(笑)ハハハハ・・・」
私はこの現場に立ち会いましたので、その時の社長の落胆ぶりというか呆然とした顔つきというか社長の表情は忘れられません。
このケースにおいても、社長が毎年のようにカレンダーを配っていれば、高い確率でこのリフォーム案件は受注できたはずです。
お客さんも悪気は全くないのです。
しかし、さすがに7年も会っていなければ、いざリフォームをしようと考えた時、家を建ててくれた社長のことは頭に思い浮かばないのです。
カレンダー配りを馬鹿にすることなかれ
いかがでしょうか。
お客さんと接点を持つことがリフォーム中につながる、との話をしている中でカレンダー配りの話を出しました。
大昔からある手法ですし、私が子供であった昭和40年代、50年代を思い出すと、母親が懇意にしていた近所の電気屋さんは、必ず年末にカレンダーを配りに来ていたのをはっきり覚えています。
もちろん全く時代は違います。
しかし、SNS全盛のこの時代、アナログ的な顔を合わせるという行為をあまりにも蔑ろにしているという気がしてなりません。
例えば紙媒体のチラシもそうです。
私が知っているある工務店の社長は「紙ほど無駄なものはない」との発想で、チラシや広告の類を一切やめました。
もちろんSNSの広告効果は出ています。
でも、アナログチラシによって拾えた案件も多数あったことでしょう。
話を戻しますが、今お話ししましたようにカレンダー配りという、半世紀前ひょっとしたら一世紀前でもあったような営業的な手法を捨ててはいけないのです。
OBのお施主さんからリフォーム受注を獲得しようと考えるならば、カレンダー配りという古典的手法は強烈な効果を発揮するのです。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
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