ルームシェア不可物件をシェア可能にする条件設定

仲介会社からの入居申込書に「ルームシェア希望」などの条件が記載されているケースがあります。

ルームシェアは空室対策として検討する機会もあり、賃貸ニーズの変化になんらかの対応が必要になっているともいえます。

供給量としてはまだルームシェア可物件は少ないのですが、今後は増加する可能性も高く、賃貸条件をシェア可能に変更する場合の注意点について解説します。

ルームシェア不可物件をシェア可能にする条件設定

定期借家契約が基本

ルームシェアは入居者の状況が変化する可能性が高く、普通借家契約では入居条件に違背する状況になった場合の契約解除や退去請求がむずかしい場合があり、定期借家契約での契約を基本とすべきです。

定期借家契約は契約期限が訪れると終了し、引きつづき賃貸借による居住について、賃貸人と賃借人が合意する場合は契約を改めて締結することになります。

定期借家契約は原則的に途中解約ができません、しかし次の条件に該当する場合は賃借人からの途中解約が可能です。

そのため賃借人が定期契約を拒絶する理由は、ある程度緩和できると考えられます。

1. 賃借建物が居住用である
2. 建物床面積が200平方メートル未満

入居者にとっても長期間にわたるルームシェアを予定することは少なく、共同生活をいつかは解消することがあるだろうとの予想はあるはずです。

そのため、定期借家契約を拒み普通借家契約にこだわることは少ないだろうと思われます。

定期借家契約の期間については、入居者のライフプランや将来の見とおしなどを考慮し、賃貸人・賃借人の協議により決めることが望ましいでしょう。

賃貸借契約と保証委託契約は連名で

ルームシェアは一人が契約当事者であり、シェアする人が同居人という扱いによる、通常の賃貸借契約(定期借家契約を含む)では対応できない面があります。

シェアする人同士には血縁や配偶者などの関係がなく、またシェアする人同士が賃借人と転借人といった関係にもなりません。

仮に通常の賃貸借契約にもとづいて入居した場合、契約者が退去してしまい残った人が無断の転借人という立場になってしまうこともあります。

契約者が退去した場合には賃料の支払い債務について明確な定めがなく、トラブルとなるのが目に見えています。

そのため賃貸借契約はシェアする人たちの連名でおこなうことが望ましいのです。

また家賃保証会社を活用する場合は、保証委託契約を連名で受ける保証会社もありますので、賃貸借契約を連名でおこなうことに問題はありません。

連帯保証人はシェアする人全員がつける

家賃保証会社の保証委託を利用する場合であっても、シェアする人全員には連帯保証人をそれぞれつけてもらう必要があります。

連帯保証人は家賃の滞納はもちろんですが、退去時の明渡しや原状回復義務など、入居者と連帯して債務を履行しなければならない義務があります。

ルームシェアの場合もそれぞれの入居者には、家賃の支払いをはじめとした債務について、連帯保証する保証人が必要であることは言うまでもありません。

それぞれシェアメンバーは月額家賃の全額について支払う義務があります。

メンバーが2人の場合は半分ずつといったことはありません。

メンバーのどちらにも家賃全額の債務があり、連帯保証人にも1人ずつ家賃全額の保証債務があることを明確にしておかなければなりません。

シェアメンバーの変更は途中解約

シェアする人の誰かが退去することや、新たに追加することもあります。

シェアメンバーが変更になる場合は面倒でも、契約は一度解約し改めて新しいシェアメンバーを賃借人とした賃貸借契約を締結しなければなりません。

契約解約は賃貸人からの申出はむずかしく、賃借人からの解約という形式になります。

ルームシェアの場合のメンバー構成は、やわらかい人間関係になっているのが普通です。

同居や退去も気軽に考えられる可能性があり、より厳格にするためにも定期借家契約による契約方法が望ましいと言えるのです。

ただし実務面においては敷金の取扱いや、保証委託契約や火災保険の同居人変更届など、契約継続に関わる条件について整理しておく必要があります。

契約上の注意点

定期借家契約は普通借家契約と違い、注意したい点がいくつかあります。

1. 賃貸借契約は書面によることが絶対条件
2. 契約書や重要事項説明書以外に「契約の更新がなく期間満了により賃貸借が終了」する旨を明記した書面を事前に交付する
3. 契約期間が1年以上の場合は、期間満了の1年前から半年前までの期間に、契約期間の満了について通知しなければならない

とくに[2]の書面は不動産会社が交付する書面ではなく、賃貸人が交付しなければなりません。

書面は賃借人全員に交付しなければならず、シェアメンバーごとに準備が必要です。

契約当事者が入居者全員となるところに、通常の借家契約と大きく違う点があります。

また賃借人が全員なので入居審査も全員おこなわなければならず、シェアメンバーのなかには審査の結果、問題が生じることもあります。

・連帯保証人がつけられない
・保証会社の審査がとおらない
・過去に他の物件でトラブルを起こしていた

単独で入居申し込みがあった場合ならば断るのが当然ともいえる人がシェアメンバーにいるとき、管理会社はどのように判断すべきでしょうか。

仮に2人のメンバーによる入居であったとして、のちに片方が退去し残ったメンバーが当然断るべき人であったと想像すると答えは簡単になります。

ルームシェアであっても審査はそれぞれひとりずつを厳正におこなうことが重要です。

シェアとはいっても互いに責任を補完するものではありません、個別の契約を連名で締結する形式であることに注意しなければなりません。

ルームシェアの運用

ルームシェアで入居できる物件は非常に少なく、オーナーや管理会社がルームシェアに否定的な見方をしていることが想像できます。

一方ルームシェアに対する需要が少ないかというと、ポータルサイトの検索条件に「ルームシェア可」があるように一定の需要があることも想定できます。

他にも検索条件として「高齢者」や「LGBT」など、入居審査が簡単にとおりにくいケースに対応する住宅も増えてはいます。

賃貸住宅は空室率の増加により競争の激化がいわれますが、入居条件が厳しくなりがちな「住宅確保要配慮者」を対象とした賃貸住宅の不足が、一方で指摘されていることも忘れてはなりません。

今後も高齢者の単身世帯が増加するなど、賃貸事業者から歓迎される顧客層と、あまり歓迎されていない顧客層との2極化が進行する可能性が高いといえます。

そのような状況のなか、ルームシェアに対応する住宅は、入居者にとって賃料の負担が低減できる大きなメリットがあります。

低廉な賃貸住宅を求める顧客層を対象として、積極的なマーケティングを仕掛けることもできるように思われます。

まとめ

ルームシェアは賃貸住宅の借り方として新しい形式であり、長く家族を最小単位とした社会構造であった我が国においては、オーナーの理解を得るのもむずかしく普及する可能性は低かったといえます。

しかし一定の需要があることは否定できず、空室の増加や低廉家賃の住宅が少ないなど、賃貸経営を取り巻く環境を考慮すると検討したいテーマです。

ただし従来の慣行どおりではトラブルとなる可能性もあり、リスクヘッジの面では「定期借家契約」が望ましいといえます。

ルームシェア事例を増やすことにより管理ノウハウが蓄積されてくると、自信をもってオーナーに勧められる空室対策に、なる可能性があるのではないでしょうか。

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