心霊現象は説明責任があるか?

人はえてして不可思議な物にひかれる傾向があり、また自身で理解ができない現象に恐れを抱くものですが、その代表に「心霊現象」があります。

海外を問わず映画の題材にされることも多く、日本映画の「リング」「呪怨」は海外リメイクされるほどに人気を博しました。

ホラー映画や怪談話で盛り上がっているぶんには良いのですが、例えば査定依頼で売却理由を尋ねた際に「家に悪霊が憑いているから」と言われた場合、私達には「買主への告知義務はあるのだろうか?」と疑問に思いました。

また、あるとしたら重要事項説明書へ記載する必要はあるのだろうか、また不告知の場合に契約不適合は成立するのでしょうか?

今回は「ネタ」としの意味合いもありますが、そのような不可思議な現象についての法律的見解を、情報を収集しながら皆様と考えて見たいと思います。

少なからず、そのような話は身近に存在する

私自身、長らく不動産業に携わってきたことから事故物件の典型ともいえる自殺のあった一戸建てや、近隣で「幽霊屋敷」と噂される物件の取り扱いをしたことがあります。

もともと霊感がないのか、それとも鈍感なのか分かりませんが、残念ではありますが「幽霊」と呼ばれる存在に遭遇したことはありません。

先ほどご紹介した自殺のあった事故物件は、相続人からの依頼により販売活動をおこないました。

もちろん事故物件として適切に告知し、相応に価格を下げての活動です。

しばらく空き家で放置されていたことから、販売のために長時間に渡って室内清掃をしているときの話ですが、時折、人のいるはずもない2階から妙な「音」がしました。

通気のために1階と2階、すべの窓を解放していたことから風による影響だろうと思いますが、実際にあまり気持ちのよい体験ではありません。

また別件で霊感が高いと自称される方の内見時には、「このマンションは駄目。だって、そこに白い女の人がいるのが見えるでしょう」と何もない空間を指さされたことがあります。

私には見えていないのに同意するわけにもいかず「はあ……」とだけ答えておきました。

さて、残念ながら私は直接お会いしたことはない「霊」ですが、見える人には見えるらしいのです。

「見える・見えない」といった主観的な部分については、一概に判断できませんのでコメントは差し控えます。

ただし「見える」という主張にたいして「見えない」と反証するためには、その証明が必要となります。

証明が非常に困難もしくは不可能に近いという現実があり、このような証明は一般的に「悪魔の証明」と呼ばれます。

幽霊裁判の事例はあるか?

実際に日本で「心霊現象による裁判」の事例がないか調査しましたが、「心霊に取りつかれるなどと詐称して……」と、いったように論告求刑の中で表記が見受けられるケースはありますが、直接、「霊」を取り扱った事件は見当たりませんでした。

提訴がまったく存在しないということはないかも知れませんが、おそらく「棄却」されているか、相談を受けた弁護士が、「幽霊」の表現を婉曲化して「心理的瑕疵」として提訴している可能性もあります。

このように日本では見つけられなかった「幽霊訴訟」ですが、訴訟王国と言われるアメリカで数例、見つけました。

詳細に調査を実施すれば、かなりの数に及ぶかも知れません。

例えば1991年7月18日にニューヨーク最高裁判所で争われた事件を解説します。

「スタンボフスキー対アクリーによるゴーストバスター事件」

事件概要は以下の通りです。

近隣で有名な「幽霊出没」する家を、売主からその事実を知らされずに契約をした買主が契約金の返還と併せて精神的な慰謝料を請求した事件で、判決は買主(原告)勝利で結審しています。
裁判官は「その家で実際に幽霊が出没するかどうかは問題ではなく、そのような噂があることを予め告知していなことについて瑕疵が存在する」と、判決理由を述べています。
また物件を仲介した不動産業者にたいしても損害賠償が請求されていましたが、「買主に対し霊の出没を証明する必要はなく、併せて証明することができない情報(この場合、噂話)について開示義務はない」、として原告の訴えを退けました。

売り主からの「心霊現象」は、告知や記載は必要か?

結論として「告知」は必要だと考えられます。

これは先ほどのニューヨーク最高裁判所による判決理由と同じで、実際に「出る・出ない」ではなく、「購入の動機に影響を与える、知り得た情報の開示義務」の観点から、売り主が「出ると言っている」と告知する必要があります。

もちろん存在の証明は必要ありません。

万全を期すなら、告知と併せて重要事項説明書の「その他重要な事項等」欄などに記載しておくのが良いでしょう。

売主の告知内容を、主観を交えず記載して説明責任を果たしておけば、トラブルを未然に防ぐことができます。

【記載例】
売主からの告知により、以下内容につき予め買主に説明をおこなった。
1.家屋内において不定期に、原因を不明とする「振動音」の発生がある。
2.同じく原因は不明だが、不定期に照明が点滅を繰り返すなどの現象が生じることがある。
3.不定期に浴室方向から、「声」とは断定できない音が聞こえてくることがある。
4.売主からの告知により、複数回、点検調査を実施したが、仲介人は1~3の現象を確認できていない。
心霊現象,説明責任

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まとめ

心霊現象の存在が否定できない以上、私たちは告知があった場合にはその内容を伝達する必要があります。

これは事故物件の告知と同じですが、予め告知をして、それらの内容を判断し買主が購入した場合には、その後において実際に現象が生じても、私たちに責任が及ぶことはありません。

また、売主が告知事項として「霊が出る」と言っているならば、事故物件と同じ扱いとして査定額は相場よりも下げる必要があるでしょう。

根拠として、購入の動機に影響をあたえる心理的瑕疵と同列として取り扱う必要がありますから、当然の処置です。

「馬鹿らしい」と一言で片づけることは簡単ですが、最近はSNSなど口コミ情報の拡散もあり、噂話を単純に否定してしまうより、理路整然とこのような話もあると説明責任を果たしてしまう方が得策だと言えるでしょう。

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