【首都圏では築30年超のマンション成約率が3割超え‼】築年が古いマンションを紹介する際に注意したいポイントを解説

電気料金の値上げを代表とするエネルギー価格の高騰や原材料費の値上、円安による輸入品の高騰など新築物件価格を引き下げる要因は見当たりません。

現在入ってくる情報から、当面は上昇傾向が続くとの予想が一般的です。

首都圏における新築マンション供給価格は2021年平均が6,260万円、その翌年(2022年)が6,288万円と、2年連続でバブル後期(1990年)に記録した平均価格である6,214万円を超えています。

筆者が拠点としている北海道札幌市の平均価格でも前年比17%上昇の4782万円(中心地である中央区平均は5,700万円)になっているのです。

もはや新築マンションの購入価格も5,000万円以上は当たり前、駅近で相応の平米数の物件を希望すれば「億超え」も仕方がないといった様相を呈しています。

ですが景気がそれだけ上昇しているのかと言えばそうではなく、多少回復の兆しが見られるもののGDPにおいてはコロナ禍以前(2019年)平均水準まで達していません。

ですが新築マンションの供給価格は、全国の様々な地域からバブル超えの過去最高金額を更新していると報道されているのです。

住宅ローンを利用する場合の安全目安は「5倍年収」が基本で、返済負担率においては20%を切ることが推奨されますがそこから考えると6,000万円前後の新築マンションをフルローンで購入しようとすれば少なくても1,000万円以上の収入が必要です。

それ以下の収入であれば相応の貯蓄がある、もしくは相続した「お金」があるなど、自己資金を投入しローン金額を減少させるしかありません。

2022年の「民間給与実態調査」によれば年収1,000万円を超えている給与所得者は4.6%とされており、計算上は「20人に1人は給与所得が1,000万円超えている」ことになるのですが、それにしてもです。

そのような高額な新築マンションが販売不振なのかと思えば、販売担当者曰く「お陰様で好調に売れています」と言うのですから、同業でありながらも「一体、誰が購入しているのだろう?」と思ってしまいます。

そうは言っても男女中央値である平均年収は403万円(2022年度)なのですから、やはり高額な新築分譲マンションは一般庶民にとって「高値の華」であることは間違いないでしょう。

そのような価格高騰の煽りを受け変化したのが、既存マンション市場における築年数の変化です。

東日本レインズ(公財_東日本不動産流通機構)が公表した「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」によれば、成約物件の3割強が築30年を超えたマンションらしいのです。

中古マンション成約状況

また全般的な傾向として、上記の「中古マンション成約状況」を見ても、築年数と価格が上昇しているのが見て取れます。

立地状況や専有面積を重視して物件を選ぶ一定の層は目新しいものではありませんが、昨今のリノベーションブームや新築分譲価格の上昇により、築年数が経過しているマンションの取引量が増加しているのでしょう。

確かに壁の内側を専有権として所有するマンションは、内部については手直しをすれば快適に暮らすことはできますが「分譲マンションは管理を買え」との不動産格言もあるように、一般の方では気が付かないポイントもあります。

今回はこのような時代背景などもふまえ、30年超の分譲マンションを紹介する場合に注意したいポイントについて解説します。

かならず抑えておきたいポイント

躯体が木造である戸建て住宅の法定耐用年数が22年であるのにたいし、RCやSRC構造の分譲マンションは47年と長くなっていますが、これは財務省が建物構造や用途によって定めた資産の算定基準に過ぎません。

たとえ木造であっても、現在の技術水準であれば適切な時期にメンテナンスを行うという前提はありますが、某ハウスメーカーが「100年住宅」と謳っているとおり建物寿命を引き伸ばすことは可能です。

立地や間取り部屋の状態などは、あえて説明をしなくても分かります。不動産のプロであれば、顧客の気が付かつきにくい下記のポイントをチェックしましょう。

修繕計画・積立金・管理形態の確認は最重要

築古の場合にはまず管理や修繕が計画に基づき適切に実施されているかどうかの見極めが重要です。

特に戸数が少ない築戸マンションの場合には自主管理であることも多く、その場合には特に修繕積立金の額や運用状況についてはシビアに確認する必要があります。

最近では少なくなりましたが、以前は理事長による修繕積立金の私的流用が報道されるにも珍しい話ではありませんでしたから、管理形態なども含め精査する必要があるでしょう。

特に注意したいのが以下の5点です。

1. 修繕積立金の額と増額予定の有無
2. 外壁塗装の頻度
3. エレベーターの交換
4. バリアフリー化など、共用部にたいする実施状況
5. 元請業者の信用や知名度

30年以上経過していれば、少なくても一回は大規模修繕が実施されているはずです。

なかでも外壁塗装の周期は一般的に12~18年を目処に実施されますから、2回目となる塗装工事が計画されている場合もあるでしょう。

マンション全体の塗装工事は多額な費用が必要となりますから、金額不足から積立金の「増額」が予定されている場合もあります。

また外壁塗装と同様に高額な費用を必要とするのがエレベーターの交換工事です。

エレベーターには1年に1回の法定点検が義務付けられていますが、それ以外メーカーにより1~2ヶ月に1回程度を目安に自主点検が行われているはずです。

それら点検などにより損耗したパーツ交換などが適切に行われていても、機械全体にたいし耐用年数が定められています。

この耐用年数については国土交通省では17年としていますが、建設・設備維持保全推進協会や各エレベーターメーカーは20~25年としています。

このエレベーター交換工事が実施済みであればよいのですが、中には資金不足や管理組合による決議が難航しているなどの理由で延期されている場合もあります。

交換には高額な費用が拠出されますから、実施の有無については確認する必要があるでしょう。

また築30年以上のマンションについては、建築当時バリアフリーにたいしての概念が現在ほど浸透していませんでしたから、共用部に設けられたスロープや手すりなどは後から設置された可能性が高く、組合員(所有者)の要望に応え適切な管理が実施されているという目安にできるでしょう。

修繕や管理とは直接関係しませんが、施行会社がどの程度の規模であるか確認しておくことも大切です。

必ずとまでは言い切れませんが、大手の施行であるほど社内品質基準は高く設けられている傾向がありますので、安心・安全である可能性が高いものだからです。

また専有部分である室内についても、築後30年以上を経過していれば設備機器やクロスの交換が行われていることも多いでしょう。交換時期などについても現況報告書などからしっかりと読み取りたいものです。

その他のチェックポイント

建築確認に新耐震基準が設けられたのが1981年5月31日ですから、それ以降に設計されたマンションの場合は良いとして、問題はそれ以前に設計されている場合です。

当然に旧耐震で設計されていますから許容応力度や保有水平体力計算は義務とされておらず、「震度5の地震で倒壊せず、生活に大きな支障がでない」程度の構造基準です。

ですが大手など施工会社によっては旧耐震基準を上回る堅牢な建物を建築しているケースもあり、また耐震診断を実施して必要とされる耐震工事を実施しているケースもありますから、その確認や証明となる書類の取得は必須です。

築年数が25年を超えていれば住宅ローン控除は利用できませんが、例外として瑕疵保証保険に加入できる場合には控除を利用することができます。

瑕疵保証保険に加入するには耐震診断が必須とされていますし、金融機関による担保の判断基準にも影響しますから、いずれにしても確認が必要です。

また立地がいくら良くても、戸数が少ないマンションなどは必然的に管理費や修繕積立金が高くなる傾向がありますので注意が必要です。

築年数の経過によりちょっとした修繕箇所も増加しますから、その上げ幅は顕著です。

同様の条件で販売されている戸数の多いマンションがあるのならそちらを紹介するほうが良いかもしれません。

また室内についてですが、キッチンや洗面台、給湯器の給水・配水管の劣化状況は必ず確認したものです。

見落としがちな部位ですが、たとえば水道用の亜鉛メッキ鋼管の耐用年数は15~20年が目安です。

素材別,給水管の耐用年数

配管内部が錆びていれば白濁水や黄水、赤水や水量減少などの影響が表れている可能性が高く、また継手部材が劣化していれば漏水している可能性も否定できません。

ご存じのように修繕積立金でメンテナンスされるのは共用部にたいしてのみですから、床から立ち上がった「管」のメンテナンスは所有者責任で実施しなければなりません。

水道管

筆者も築古マンションの内見立会時には必ず給水管などのチェックを行うのですが、かなりの確率で分譲当時から一度も交換していない割合が高いものです。

劣化が著しい場合には交換費用も念頭におく必要もありますから、プロの目線で確認するようにしましょう。

まとめ

築年数が30年を超える分譲マンションは、「立地に優れ比較的価格が安い」というメリットがある一方で、今回、解説したようなポイントのチェックが不可欠であるというデメリットもあります。

文中でRCやSRC構造の分譲マンションの法定耐用年数は47年と解説しましたが、これはあくまでも財産算定の話であって所有者にはあまり関係のない話です。

マンションの寿命については諸説ありますが、たとえば新規分譲マンションを数多く手掛けている長谷工アーベストなどはホームページ上で「条件次第では100年以上」としています。

ただしこれは適切に管理され修繕計画が実施されていることを前提としての見解ですので、全てのマンションに当てはまるものではありません。

「マンションは管理を買え」との不動産格言は言い得て妙で、私たち不動産のプロが見ても管理体制がしっかりとしているマンションは築後30年などではビクともしておらず、「確かに100年以上持つかもしれない」と思わせるものですが、反面、自主管理でかつ管理体制が杜撰なマンションなどは共用部にゴミが目立ち、各住戸の玄関脇に自転車などがおかれ歩行を妨害しているような物件も存在しています。

私たち不動産業者と顧客の間にはいかんともしがたい知識格差があるのは当然なのですから、プロの目線で正しく検証し、物件提案するよう心がけたいものです。

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