【最速!】2024年「不動産の日アンケート」結果から見る消費者の多様化と省エネ志向

近年、IT最大手のGoogleがテレワークの実質的な廃止を公表するなど、コロナ禍で広まったテレワークの在り方が再び議論の的になっています。特にテレワークとの親和性が高いIT業界では、コミュニケーション不足や帰属意識の低下、人事評価の難しさといった課題を理由に、縮小または廃止する動きが増加しています。

一方で、日本政府は働き方改革を推進し、テレワークの普及を促進しています。しかし、テレワークが全ての業種や従業者にとって最適な働き方であるとは限りません。企業はそれぞれの業務特性や従業員の状況に合わせて、最適な働き方を模索し続けています。

不動産業界においても、デジタル技術の活用が急速に進展しています。たとえば、IT重説の全面解禁や、AI・VR/ARの導入による業務効率化が注目されています。これらの技術革新は、今後の不動産業界の競争力を左右する重要な要素となるでしょう。

加えて、デジタル技術の進化は、地方移住の促進やシェアオフイス・コアワーキングスペースの拡大といった、新しい働き方や住まい方に多用な選択肢を提供しています。不動産業界は、このような変化に柔軟に対応し、競争力を維持していく必要があります。

しかし、デジタル技術だけが不動産市場に影響を与えているわけではありません。2025年4月からすべての新築住宅に省エネ基準適合が義務付けられるなど、環境問題や経済環境の変化も重要な要因です。消費者意識はそれらの要因で変化を続けているのですから、私たちはその動向を的確に把握して対応する必要があります。

消費者意識の変化は、アンケート調査の結果や傾向から見えてきます。たとえば、不動産の日(9月23日)に、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)と公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)が共同で行っているアンケート調査は、消費者意識やニーズの変遷を示す重要なデータです。

今回は2008年から共同で実施し公開している不動産の日アンケート調査結果をもとに、過去のデータと比較しながら、最新の消費者動向について解説します。

政策金利引上げの影響が、購入意識に変化を与えている

過去の結果を含めた「不動産の日アンケート」調査は、次のリンク先から確認できます。

https://www.zentaku.or.jp/about/questionnaire/

例年、最初に質問される「いま、不動産は買い時だと思いますか」との問いに対して、「買い時だと思う」と回答した人の割合が、前年比で3.4%増加しました。

その理由として最も多かったのは、「今後、住宅ローン金利が上昇しそうなので」という回答です。

2021年までは「支援制度の充実」や「不動産価格の安定または上昇」を買い時の理由とする回答が多かったのですが、2022年調査以降は「金利が上昇しそうなので」との理由が主流となり、2024年では49.8%と過半数に迫る勢いで増加しています。

ただし、金利上昇を理由に買い時と考える割合には地域差が見られます。特に東北と中国地方ではその割合が顕著に上昇している一方で、北海道や近畿では逆に減少傾向を示しています。

こうした金利の動向に対する消費者の反応には、地域ごとの違いがあることを理解しておくべきでしょう。

また、「買い時だと思わない」と考える理由として「地震や水害などの天災」を挙げる人の割合も全国的に増加しており、とくに中部、近畿、中国地方ではその傾向が顕著です。

これらの地域で不動産事業を行う企業は、防災に関する説明や情報提供に特に配慮する必要があるでしょう。

持ち家派は減少傾向が続く

持ち家派は、2021年に一時的に増加しましたが、それ以降は減少に転じ、2024年の調査では過去最低の63.3%にまで低下しました。

依然として持ち家志向が多数派ではあるものの、住宅所有に伴う維持管理コストや経済的不安を抱える人が増加している傾向がうかがえます。

その影響を受け、かつて住宅購入時に重視されていた「交通利便性」や「周辺・生活環境が良さ」といった要素よりも、2018年以降は「購入金額」を重視する傾向が強まっています。

この傾向は賃貸市場でも同様で、「交通の利便性」や「生活環境」よりも、賃料を重視する人の割合が増加しているのです。

従来、経済的な負担と日常生活の快適さを重視する傾向は見られましたが、近年では金銭面への意識がより一層顕著になっていることを理解する必要があるでしょう。

激甚災害の多発で、住宅性能や防災に関する意識が向上

直近5年間を振り返えると、ほぼ毎年のように激甚災害に指定される大規模災害が発生しています。それに伴い、自治体が実施する災害復旧事業の箇所数は毎年1万件を超える規模となっています。

このような状況下で、住宅を購入する際に建物構造やハザードマップで示される地域性、地盤などを重視する割合の増加が、調査結果からも見てとれます。

先述したように、住宅購入時には価格や地域性が重視される一方で、消費者は物件情報を入手する際、省エネ性や耐震性といった住宅性能にも強い関心を抱いています。

実際に、「物件情報の入手の際、基本情報以外に『あると便利』な情報は何ですか」との質問に対しては、物件写真や周辺相場に続いて、物件の品質情報が挙げられているのです。

さらに、2025年4月から改正建築基準法が施行され、新築住宅(200㎡以下の平屋住宅を除く)には構造計算が義務付けられ、また、全ての住宅に対して省エネ基準への適合が必須となります。これにより、消費者の住宅選びにおける意識はさらに変化することが予想されます。

住宅性能は、特に冷暖房費などのランニングコストに影響を与えます。また、基準を満たしていない従来の住宅は「既存不適格住宅」とされ、大規模修繕の際に少なからぬ影響を受けます。

普通の家に求められる基準が引き上げられたことを理解し、今後、不動産広告で注目を集めるためには、物件の品質情報や防災情報の提供が必要とされていくでしょう。

求められているのは、介護対応が可能な住宅

住宅購入時に何を重視するかは、購入者の年齢によって変化します。若年世帯の場合、職住近接や交通利便性を重視する傾向が強いですが、40代以降になると、将来の高齢化を意識し始めます。

そのため、「将来、車椅子が必要になっても対応できる住宅が良い」などと要望がされる場合があるのです。近年、新築注文住宅において平屋住宅の割合が増加しており、国土交通省の「建築着工統計調査」によると、2012年には全体の約6.8%だった平屋の割合が、2022年には13.5%と、約2倍にまで増加しています。これは、高齢になり足が不自由になることを懸念している結果とも考えられます。

さらに、アンケート調査結果でも、介護を意識した回答が増加傾向にあります。

私たち不動産業者には、老後の生活に安心感を提供する説明が求められているのです。そのためには、バリアフリーや高齢者対応リフォームについての知識を積極的に学んでいく必要があります。

IT活用は必須

住宅を既に取得している方に対し、どのような場面でインターネットを活用したかと質問した結果、最も多かったのは「情報収集」でしたが、注目すべき点は、Zoomなどオンライン会議を利用した物件説明や商談をした方が増加していることです。

また、VRやARを活用した物件内見を利用された方も微増しているなど、不動産業とITの親和性が高いことを裏付けらる結果が確認されました。

しかし、業界全体では、従事者の高齢化によりIT対応が進んでいない傾向が見られます。一方で、ITの導入を積極的に進める企業も存在しており、高い成果を上げている実例が確認できます。

ご覧戴いている「不動産会社にミカタ」でも、ITを活用した査定や集客、営業自動化システムなどを紹介しており、また「役所調査のミカタ」など無料で利用できるサービスの提供を通じて、不動産業者のIT化を推奨しています。

一部の業者には、ITに対する苦手意識やその効果への疑問があり、導入に踏み切れない場合もあるでしょう。しかし、消費者の意識は明らかに変化しており、「オンライン商談やIT重説には対応できません」と回答するだけで機会損失が発生する時代です。

どのIT技術を導入すべきかは、システムのメリット・デメリット、導入コスト、さらに自社の主要顧客層やエリア、従業者のスキルなどを総合的に検討して選択する必要があります。ただし、消費者のニーズがITにシフトしていることを理解し、もはや導入を避ける時代ではないことを認識する必要があるでしょう。

求められているのは優秀な担当者

不動産の売買や賃貸において、消費者が不動産業者に最も期待するのは、「優秀な担当者を付けてくれること」です。これは調査開始以降、ほぼ首位を独占していることからも明らかです。

では、消費者が望む「優秀な担当者」とは、具体的にどのような人物なのでしょうか。

調査結果によると、最も重視されるのは「わかりやすい説明」、次いで「メリットだけではなく、全てを隠さず情報を伝えてくれること」、「丁寧な接客」といった点が挙げられています。

一方で、「取引に関する法律や制度などの知識が豊富なこと」は5位に留まっており、例年この傾向は大きく変化していません。この結果を見て、知識や経験を軽視する方が時折見受けられますが、それは誤りです。

実際、消費者に対し分かりやすく説明するためには、深い洞察力と知識が不可欠です。

消費者と事業者の間には知識格差があるため、消費者が疑問に思っても、それを適切に質問することができない場合がよくあります。

優れた担当者は、深い洞察力で消費者の意向をくみ取り、適切かつ分かりやすく説明できる能力を有しています。そのためには、豊富な知識と経験が基盤として必要なのです。

結局のところ、消費者に理想とされる「優秀な担当者」には、①豊富な知識に基づき分かりやすく説明できる能力、②嘘偽りのない情報を提供する心構え、③丁寧で誠実との印象を与える接客術、が必要なのです。

まとめ

過去のアンケート結果と比較すると、消費者の住まいに対する意識が年々多様化していることが理解できます。

特に近年においては、省エネ性能についての関心の高まりや、インフレの進行やそれに伴う経済的不安を背景に、住宅ローンに対する慎重姿勢などが確認できます。

このような背景下においては、これまで以上に住宅の環境性能、安全性、そして経済的メリットに関する説明が求められるようになるでしょう。

こうした消費者ニーズの多様化に対応するためには、常に最新の動向を把握し、それに適したサービスの提供を通じて、より一層充実した対応を行うことが不可欠なのです。

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