【氾濫するリノベーション表記】でも、うかつに表現してはいけない理由

「リノベーション」という言葉はすっかりと定着しています。
不動産のインターネットサイトや広告でも「リノベーション工事済み物件」などの表現をよく見かけますが、皆様ご存じのようにリノベーションとは「既存の建物に新たな機能や付加価値を加える工事」を意味しています。
このことから広告活動や契約時においてもリフォーム工事とは区別して、明記する必要があります。

ところが浴室やキッチン交換・クロスやフロア交換工事などしか実施しておらず、性能向上が伴っていないリフォーム工事をリノベーションとして広告して契約をしたことにより、顧客との間でトラブルに発展しているケースが増加しています。
一戸建てと比較して改修工事が安上がりである区分所有マンションは、不動産買い取り業者が購入してリフォーム工事を施し、売却をして利益を上げていますが、この場合には共用部に手を入れませんからどれだけ工事を実施しても「室内大規模リフォーム」と表現しなければなりません。
あくまで筆者の見解ですが、マンションでリノベーションと表現できるのは「1棟買い」の場合のみであると考えます。
つまり共用部の水道や排水管の交換・補修、外壁や屋根からの防水処理、断熱改修工事等まで実施して、初めて使用できるとの見解です。

分譲マンションにおける大規模修繕は、長期修繕計画の中で段階的に組まれていますから、安易に「リノベーション工事」というキーワードを用いることはできません。
マンション丸ごとの工事、つまり大規模修繕であれば必要とされる役所等への届け出も、区分所有である住戸単位での工事では不要とされ、完了検査も必要とされません。
ですから販売業者の理解不足により、リフォームがリノベーションと表現されていても、対外的に支障はありませんが、その裏付けもありません。
請負金金額によっては施工者の建設免許も不要ですから、まさに無法状態です。
これが巷に氾濫しているリノベーション工事の実態です。
今回は、リノベーションという言葉が先行し、顧客に誤解を与えたことによりトラブルとなった判例も紹介しながら、リノベーションという表現を安易に使用してはいけない理由について解説します。

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裁判でリノベーションは、どのように見解されたか

東京地判_平成25年3月18日の判例を見て見ましょう。
築30年のマンションにおけるリノベーション工事に関しての判例です。

仲介業者が販売のために作成したパンフレットや広告に【スケルトンの状態からリノベーション工事を予定】との文言が入れられ、その内容で説明を受けた顧客が購入しました。
工事が未実施であったことから売買契約書には内装仕様書を添付し、特約条項として「別紙内装仕様書の工事を完了して引き渡す」との文言が記載されました。
工事が完了し物件の引き渡しを受けた後、ルーフバルコニーから書斎・居間に浸水が発覚したことから、購入者は販売した仲介業者にたいし、調査説明義務違反を根拠とする損害賠償請求を行いました。

判決では、仲介業者に「スケルトン状態からリノベーション工事が実施されているかについて調査・説明義務が存在する」として、調査説明義務違反が認められました。
判決内容から「スケルトン状態からリノベーション工事を実施するとしている以上、築年数が30年であっても社会通念上、新築もしくは築浅物件と同等まで性能(雨水等の侵入防止も含めて)が引き上げられていると解されるのは自然であり、業者には適切に工事が実施されたか確認し、説明をする義務がある」との考えが見て取れます。
上記の判例から、区分所有であるマンションの場合でも、共用部分にその原因があっても、安易に「リノベーション工事」と表現することにより、契約不適合であるとされる可能性が高くなると考えられます。

この場合においては「スケルトン状態からリノベーション工事」などの表現を使用せず、「室内リフォーム工事実施」として、具体的な工事箇所の詳細を記載しておくべきでした。
また売買契約書に添付する物件状況報告書にも、詳細に工事終了後の状況について記載を行うと同時に、区分所有法により工事を実施できるのは区分所有の範囲内であって、躯体もしくは共用部の性能向上まで実施することはできず、従って「新築もしくは築浅物件と同等の品質を保証することはできない」としておくべきだったでしょう。

物件状況報告は、性能を保証している訳ではない

調査,報告書

上記の事案において、業者が「リフォーム工事予定物件」として広告・契約を行った場合にはどうなっていたでしょうか?
あくまで仮定ですが、責任が否定もしくは損害賠償責任を最小に抑えられた可能性が高いと思われます。
根拠として、東京地判平成28年7月14日の「築23年の中古ビル売買における契約不適合」について争われた事件の判例を見てみましょう。
この事件では、物件状況報告書に下記記載がされていたことが争点となりました。

●現在まで雨漏りを発見していない。
●現在まで腐食を発見していない。
●現在まで給排水管の故障を発見していない。

上記の告知内容に反し、購入後にチェックすると外壁の剥離・雨漏り・排水管からの漏水・ベランダの水道管に腐食が発見されたことから、購入者が売主にたいし、瑕疵担保責任と説明義務違反に基づく損害賠償請求を行いました。
判決では買主が主張した物件的瑕疵は、築23年の中古ビルであることから勘案し、そのすべてにおいて経年劣化の範囲内であるとされ、購入者の主張は退けられました。
物件状況報告書に記載された告知について裁判所は「物件状況報告書は契約時点で知っている売買対象物件の状況を説明するに留まり、客観的事実と合致しないこともありうる」としています。
つまり買主が主張した「物件状況報告書に記載された各状態を信用して~」という論理は、それをもって直ちに肯定されるものではないとの判断を示したことになります。

もっとも現行の「契約不適合責任」が施工されていない平成28年の判例である点と、区分所有ではなく1棟売買であった点は考慮しなければなりません。
同時に、改正民法では物件状況報告書が重視される傾向が高くなっていることも理解しておく必要があります。
いずれにしても物件状況告知は「契約時点で知っている売買対象物件の状況」であると理解して、正確に告知する必要があります。

リフォーム工事と記載して紙一重で助かった事例

前項までの解説を裏付ける判例として、東京地判平成28年4月22日の「築44年のマンションにおけるリフォーム工事」があります。
売主は「新築同様にフルリフォーム完了!!」と、これまでの解説をお読みいただいている皆様なら、空恐ろしくなるキャッチ広告で建物を販売しました。
買主が入居後、すぐに排水管の詰まりや逆流現象が生じたことから、瑕疵担保責任と説明義務違反に基づく損害賠償請求をおこないました。

判決では「築44年以上が経過している建物において、設備等に関しては経年変化により機能面が必ずしも十分とは言えない点が存在するのは想定範囲である」として、逆流現象については経年変化の範囲内であると判断しました。
買主は「新築同様にフルリフォーム完了!!」という販売告知方法を根拠に食い下がったようですが、見解として「表現方法は別として、リフォーム工事は新築と同様の性能が期待されるものではない。したがって表現方法により、瑕疵担保責任と説明義務違反が肯定されるものではない」として買主の主張を退けました。
これが、現行法である契約不適合を適用させた場合にはどのような判決になるか分かりませんが、リフォーム工事はあくまでも内装・外装・設備・デザインを改良するに留まり、新築もしくは築浅物件と同等の品質を保証するものではないとの見解は、今後の裁判においても考慮される可能性が高いと考えられます。

余談ではありますが、上記の裁判において「新築同様にフルリノベーション工事が完了!!」などと表示されていれば、判決がどのようになったか興味深いものです。

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まとめ

今回は解説で、分譲マンションなどを中心に取り上げました。
理由として、一戸建てにおいて「リノベーション」と表現しトラブルになって事例が少ないことも一つですが、戸建ての工事は外壁や屋根そして室内と、規模が大きくなることから工事代金も高額になることが多く、買い取り業者も安易に手を出しません。
多少なりとも建築を知っている方ならご存じのように、戸建てのリノベーション工事は、高度な建築知識を有していなければ手掛けることができません。
解体して新築を立てる方が、場合によって安くなるほどです。

それらを理解して、戸建て住宅であえて「リノベーション工事済み」と表現する会社は、技術力にも自信があり、新築や築浅と同等程度の性能を実現させたとの自負もあるのでしょうから、本当の意味でのリノベーションであるのでしょう。
良いものをメンテナンスしながら、末永く使うという考え方が世界的に主流ではありますが、その点において日本は、不動産も含め後塵を拝しているのが現状です。
ですが大手ハウスメーカーが「百年住宅」を売り文句にするなど、必要なメンテナンスを実施することにより長期的に利用できるとする住宅コンセプトは、政府も「長期優良住宅」にたいして税制面などで優遇するなど、いずれ中心となる考え方です。

そのような意味合いから、正しくメンテナンス工事が実施された「リノベーション住宅」が増加するのは喜ばしいことではありますが、言葉だけが先行しては余計なトラブルに巻き込まれます。
リノベーションとリフォームの持つ意味の違いを理解して、適切に表現して販売に尽力していただければと思います。

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