政府一斉点検で発覚【全国1,357箇所で盛土造成に問題あり!!】不動産業者も告知が必要

2021年7月3日に発生した静岡県熱海市土石流災害は、住戸被害等128棟・避難者153名・死者26名以上の甚大な被害を生じさせました。

熱海市土石流災害

図_盛土による災害防止のための関係府省連絡会議事会資料より

原因として記録的な大雨がその背景にありますが、併せて人為的な要因として盛土造成工事に問題があったことにより被害が拡大した可能性も高く、事態を重く見た政府は、土砂災害警戒区域などにおける盛土造成の総点検を、各都道府県に要請しました。
全国総点検は、崩落により人家などを巻き込む可能性のある3万6,226箇所が対象とされ、11月末時点で約8割となる2万8,152箇所の調査が終了したことから結果がまとめられました。
政府からの発表は令和3年12月20日付となっています。

図_盛土による災害防止のための関係府省連絡会議事会資料より

公表された調査結果は、上記の図に該当する土砂災害警戒区域内や上流地域のほか、山地災害危険地区の集水区域、大規模盛土造成地などの調査が完了した2万8,152箇所についての状況です。
驚くべきは、調査の結果「問題ありとの指摘が1,375箇所」にも及んだという事実です。
数字だけで見れば全体の約5%弱に過ぎませんが、そこには人の営みがあります。
放置していれば熱海と同様の、もしくはそれ以上の数で、尊い人命が失われる可能性が否定できない状況です。

しかも問題ありと指摘されたうち、657箇所については水抜き対策など、法令で定められている災害防止処置などの安全対策が施されていないとのことです。
これではいつ、災害が発生してもおかしくありません。
私たち不動産業者には、法令上の制限(土砂災害警戒区域に該当しているかなど)の説明が義務付けられていますが、擁壁の水抜き穴の有無を確認するなどの調査や説明まで求められてはいません(相応の知識があれば見ればわかる内容なので、万が一それによる問題が生じた場合、調査不足とされる可能性はありますが……)
背景には「宅造申請をして完了検査を受けているのだから、当然に安全対策が施されているだろう」という、行政に対する信頼(甘え?)があることは否定できません。

ところが今回の調査内容を見る限り、そうではないようです。
私たち不動産業者には高額な資産を取り扱うビジネスであるという割り切った考えの他に、不動産を通じて社会貢献するという理念が根底にあるはずです。
取引を通じて不動産を斡旋した当事者に対し、出来れば皆、幸せになって戴きたいという思いです。
「盛土造成に災害防止に関する検討会」の決意表明文章では、下記のようにまとめられていました。

「盛土に関連する主体は公共から民間まで多岐にわたっている。盛土による災害により、二度と尊い命が失われることのないよう、関係者一人一人が社会的な役割と責任を果たしていくことを切に希望する」

今回は盛土造成調査結果をもとに、原状がどのような状況であるのかについて、ニュース等では詳細に報じられていない内容について、「盛土による災害防止のための関係府省連絡会議」の議事記録から抜粋して解説します。

調査結果はどのようになったか

政府が要請した対象個所数は36,226箇所で、そのうち点検が完了した箇所が28,152箇所で、おおよそ80%になります(11月末時点)
点検は、各都道府県における専門部署により目視でおこなわれています。
結果の内訳は下記_図の通りです。

盛土,災害防止,関係府省連絡会議事会資料

図_盛土による災害防止のための関係府省連絡会議事会資料より

許可・届け出等の手続きがとられていなかった盛土が743箇所。
届け出はされているけれども現地の状況に相違がある盛土が660箇所(タイトルとした問題のある1,375箇所は、重複を除いた合計数です)もあります。
この調査結果により検討会は、盛土造成を包括的に規制する罰則も含んだ新たな法制度の創設が必要であるとして提言し、それを受けた政府は、2022年の通常国会において関連法改正案を提出する方針です。

いままで問題視されてこなかったのか?

過去に総務省行政評価局が、2015~2020年の5年間について全国41自治体を対象として実施した調査では、建設残土の不適切な埋め立てが120件、確認されました。
この件について、事態を重く見た総務省から国交省にたいし改善が求められていました。

またそのような大規模な物ではなくても、各都道府県から盛土造成等にたいする包括的な規制要望は、反復継続してあげられていたようです。
つまり行政の中でも、問題があるとして是正を求める声は少なからずあったのです。
ところが国交省はこれまで具体的な対策を取らず静観していたことから、冒頭で上げた熱海の悲劇を引き起こすことになりました。

指摘された造成地はどこ?

政府公表では総点検の対象箇所、及び問題があると指摘された地域について具体的な所在地情報は公開されていません。
ですが、放置しておくことにより、人命に影響を及ぼす災害の危険性を無視することはできません。
そこで危険箇所への是正対策が完了するまでの間の措置として「災害危険性の高い盛土」と特定された盛土については、各都道府県等において速やかにその内容を公表するとしています。
つまり、政府からは公表されませんが、各都道府県から具体的なエリアや是正対策方針も含め、今後、公表されていく形になります。
今回の総点検該当区域数は、下記の図のとおりです。

盛土,災害防止,関係府省連絡会議事会資料

図_盛土による災害防止のための関係府省連絡会議事会資料より

各都道府県がどの段階で具体的な情報公開に踏み切るかは分かりませんが、公開は微妙な問題をはらんでいます。
例えば盛土造成で問題ありと指摘されれば、当然に市場流通性(実勢価格)に影響を及ぼすでしょう。
それに付随して現状取引で問題が生じる可能性もありますし、造成工事を実施した販売業者等にたいし住人による集団訴訟が提訴される可能性があるなど、様々な問題が頻発するでしょう。

また人命に関わる部分としては、早急な対策が望まれます。
それに関しては対策が完了するまでの間で問題が生じないよう、各都道府県において緊急の通報体制の構築等により盛土の変状等の異常が発生した際や台風の接近等で大雨による土砂災害の発生が予想される場合に近隣の住民の迅速な避難につなげる情報を発信するなど、行政と住民の情報共有による被害の防止を図るとしています。
また速やかに応急対策処置を講じるために、詳細調査が必要な場合にはボーリング等調査を実施して、必要な災害防止処置の有無を明らかにするとしています。
また法令上の適正な手続きが取られていない盛土については、当然のことながら各種法令に基づき必要な行政上の処置をとるとしています。

盛土造成にたいしての罰則は?

無許可で盛土等を行った場合や、都道府県知事等の命令に違反した場合には罰則がありますが、該当する法律により内容が異なります。
例えば宅地造成等規制法では懲役1年以下、罰金50万円以下です。
森林法に抵触すれば懲役3年以下、罰金300万円以下になります。
農地法でも同じく懲役3年以下、罰金300万円以下です。

これに法人重科が該当すれば、罰金が1億円以下まで引き上げられますが、各法令によって罰則の内容が異なっていますし、宅地造成等規制法の罰則が低い印象を受けます。
そのような罰則の軽さによるコンプライアンス軽視を是正する目的として、各都道府県等が独自に盛土行為を規制する条例を制定しています。
ですが条例は地方自治法(昭和22 年法律第67 号)に定められた上限を根拠としていることから、懲役2年以下、罰金100万円以下が最大ですので、宅地造成等規制法の罰則より多少、重くなった程度でしかありません。

まとめ

各都道府県から情報が公開されていくのは、早くても次年度以降になるかと思います。
都道府県ごと具体的な対策を講じる箇所にバラつきがありますが、私たち不動産業者も情報に敏感になり、対応策を検討しておく必要があります。
指摘箇所に該当している地域の取引を手掛ける場合には、知りえた事実として、当然に重要事項説明書への記載と説明義務がかかせられるからです。
情報公開前に、土砂災害警戒区域内などの取引を手掛ける場合には災害防止処置の状況や、当該地が是正箇所に該当していないかなども含め、確認しておくほうが良いと言えるでしょう。

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