2021年に新築着工棟数は71万戸あり、このままの人口動態で行くと2040年には49万戸まで減少すると予測されています。
今現在、新築住宅のみ対応している工務店も、新築だけでは経営が持たない状況はもはや避けられない状況です。
そのためフルリノベーションや部分リフォームの受注を獲得することが生き残る道であり、経営を継続させるためには必要なことになります。
まだ、リフォーム業界に参入していない工務店にとって、まずはOB客のメンテナンスや外壁塗装、設備の交換といった数年に一度、必ず必要となる工事を他社に依頼されないようにすることから始めてみましょう。
OB客から依頼が集まるようになるには、会社や担当者へ対する信頼感を得ることが必須であり、新規のリフォーム客を獲得するためにも基本的な流れを掴むことが大切です。
今回のコラムでは、これからリフォーム業界に参入しようとする工務店にとって、注意すべき点やリフォーム受注を伸ばすための対策を解説します。
リフォーム契約時の確認事項と注意点
築30年以降の年数の経過した住宅の場合、事前調査を念入りに行っていても工事開始後に見えない部分の腐食や劣化が発覚するケースが少なからずあります。
特に新築よりもトラブルやクレームが起きやすいリフォームは、工事日程の延期や見積金額の増額に関することが多いため、事前に契約時に確認しておくべきポイントがいくつかあります。
工事開始後に考えられるトラブル
リフォームでは、築年数や使用頻度、現地調査結果の内容を元に、建物内部の劣化具合を予測して工事範囲や工事内容を決定します。
しかし、工事部分を解体してみると予測以上に部材の老朽化が進んでいるケースや構造材に劣化が及んでいるケースもあります。
別紙で特記事項や約款などに、想定されるトラブルについての対応策を盛り込んでおくことで、最小限に抑えられることがあります。
ここでは、特に起こりやすいトラブルについて解説します。
① 水回り設備交換時のトラブル
水回りの設備交換時に床下地の劣化が発覚した場合、その場で交換が必要です。
劣化の規模によっては高額となるので、トラブルとなりやすいケースです。
そのほか、水回りで考えられるトラブル例を紹介します。
・水回りの床下部分に水が回ってシロアリが発生
・キッチン交換工事時の給水管の腐食
・トイレ交換時の床下構造材の腐食
・ユニットバス交換時の土台腐食、脱衣所床下へも腐食が広がっていることもある
② フロア貼替時のトラブル
新築時の施工状況によっては、フロアを剥がした際に下地がボロボロになってしまうことがあります。
そのまま工事を進めると床の不陸や床鳴りの原因となるため下地の交換が必要です。
また、床解体時にシロアリ被害が見つかる可能性も考えられます。
③ クロス張替え時のトラブル
元々厚手のクロスを貼っていた場合、剥がすまで壁下地の不陸がわからないことがあります。
その場合、下地処理が必要になるので追加費用が発生します。
④ 打合せのイメージと違う
交換範囲や工事内容について、説明不足で顧客に勘違いさせてしまうことも想定されます。
トラブルを未然に防ぐためにできること
コミュニケーションを小まめに取ることがリスクを最小限に抑える秘訣ですが、抑えるべきポイントをしっかりと対応しておくことが、強固な信頼関係を築くことにつながります。
顧客との強固な信頼関係を築くためには下記の点に注意が必要です。
① 現地調査・現地確認の重要性
現地確認を念入りに行い「きちんと調査してくれている」と顧客が感じることで、工事中の追加工事発生時にもスムーズに打ち合わせがすすめることができます。
リフォーム工事をはじめ工事部分の解体を行う際、職人任せにせず担当者が立会していると顧客にとって安心感が増します。
実際の状況を見ながら状況や必要な対処方法について説明できるので早期解決につなげることも可能です。
工事期間中ずっと立ち合いし続けることは難しいですが、最低一日に一度現場へ訪れること、または電話での状況報告を行うことを欠かさないようにしましょう。
工事期間中に、施主から新たに要望が出てくることもありますので、逃さずキャッチして、追加受注につなげることもできます。
② 顧客説明の重要性
顧客への内容説明に、「説明しすぎ」はありません。
顧客によって、理解度は様々なので相手に応じて、説明の仕方を調整することも必要です。
「言った言わない」を防ぐためには打合せごとに「打合せ記録」を作成しましょう。
(商談時、契約時の打合せ記録の記載内容)
打合せ日時、参加者、打合せ内容(決定事項・保留事項)、保留事項の今後の予定、参加者のサイン
追加工事として予想することができるものについては、契約前に必ず説明し、見積書内にも記入します。
概算金額を提示して了承を得られると、万が一の際にもスムーズにすすめることができます。
可能であれば、過去の事例や、想定される最大金額も併せて伝えられると安心感が増します。
③ 見積書・図面・契約書等の書類の整備
見積明細を「一式工事」の表記とすると、工事内容の認識差異を生じさせる原因となりがちです。
図面には、誰が見ても勘違いしないよう詳細まで記載し、見積書も連動して使用材料、単価、数量詳細を記載します。
見積書提示の際は、現地で指差し確認しながら説明を行うと、認識の違いによるトラブルを防ぐことができます。
契約書には、工事完了後の保証期間や補償内容を明記して説明します。
契約後に発生した工事については、少額であっても、追加工事の発注書、請書又は追加工事の契約書を発行し、書類で残しましょう。
それでもトラブルが発生してしまったときの対処方法
顧客との信頼関係や詳細の説明、書類の整備を行っても、クレームを完全にゼロにすることは難しいのが事実です。
どんな問題に対しても、誠意ある対応をとる態勢が整っていることを伝えることが大切です。
まずは、相手方の話をしっかり聞きこむことが重要です。その上で事実関係の確認と状況の整理を行います。
詳細記載のある図面や見積書、ここまでの経緯がわかる打合せ記録があれば、双方納得の上で状況整理することが容易です。
話し合いの内容は「打合せ記録」に記載して、双方でサインします。
顧客、担当者、社内の他部門ともにクレーム内容と対処の方向性、進捗状況について共有すると、返答内容のブレや対応漏れによる更なるクレームを防止に役立てることができます。
(トラブル発生後の打合せ記録の記載内容)
打合せ日時、参加者、問題点、対応策、経緯、結果、保留事項、保留事項の対応予定、参加者のサイン
安定した受注のための顧客管理方法
破損部分の改修工事を「大至急しなければならない」以外は、計画を進めるきっかけづくりが重要です。
生活の質を上げるためやライフスタイルの変化に応じて行うため、「いつかやりたい。できればやりたい」といった要望を取りこぼすことなく成約につなげるためのポイントについて解説します。
今すぐリフォームしたい熱量の高い顧客を確実に受注
競合他社が入っている場合、価格競争になりがちです。
価格競争には乗らず、価格以外の部分で受注の決め手を作ることを目指しましょう。
商談前に自社の強みやこだわりを伝え、現地を細かく調査して差別化を目指します。
すぐに金額だけを知りたい顧客に対しても、見積提示前の短時間だけでも差別化の時間を確保しましょう。
計画中断となった顧客への対応
商談途中に何らかの理由で長期保や計画中断することもあります。
現状に対する不満点はそのままなので、いつかまたリフォームへの熱が高まることを考えるとそのまま顧客との接点が切れてしまうことは将来的に大きな損失となります。
リフォームへのニーズや考え方をキャッチできているので、担当者との関係性を失わないように注意すれば、リフォームのタイミングが来た時におのずと顧客から声掛けいただく可能性も低くありません。
競合他社において関係性が切れてしまっていることも多いので、接触を続けているだけでも差別化の効果があります。
情報収集段階の顧客への対応
イベントへの誘致やお役立ち情報をDMやメルマガ送付でしたり、SNSで発信しましょう。
元々リフォームを考えていた箇所以外の情報について触れることで新たなニーズを引き出すこともできます。
SNSを利用することで反響分析を行って次の情報発信の企画へ生かすこともできます。
顧客と自社情報との接点を絶やさないように配慮しましょう。
火災保険利用の修繕工事と同時にリフォーム提案
成約率の高い受注内容として、火災保険を利用した改修工事があります。
自然災害等で被害を受けた部分の修繕工事や生活の中で起きた室内のキズの補修などです。
保険に該当する部分の工事だけでなく、同時に周囲のリフォームを提案すると高額受注に繋がる可能性があります。
それには、競合との差別化を図り、顧客へお得感を伝えられる提案が必要です。
火災保険利用の修繕見積作成時の注意
自然災害による被害の修繕工事に火災保険を利用する場合、免責金額が設定されているケースが大半です。
見積が免責金額以下の場合、火災保険が利用できません。
修繕見積作成前に、保険証書で免責金額を確認してもらいましょう。
免責金額以下の工事となる場合でも、同じ災害によって起きた違う箇所の補修金額の合算額が免責金額を超えていれば保険を利用できます。
顧客の立場で考えると、修理代金は保険で賄いたいので、見積金額が免責金額以下の場合、他業者へ相見積を依頼してしまうのは当たり前のことです。
付加価値をつけたリフォーム提案
修繕工事と同時にリフォームの提案を行うと、顧客単価をあげることができます。
例えば、修繕工事に使うために架けた足場を使って塗装工事を行う、雨漏り修繕工事のついでに室内全体のクロス貼替工事や照明交換をする、窓ガラス交換のついでに窓周りのコーキング打ち換えるといった工事が考えられます。
また、部材交換が必要な場合、保険対応では同ランクの商品への交換ですが、耐久性に優れた商品やメンテナンスの手間が少ない商品への交換を提案することも顧客満足度を高めるポイントとなります。
修繕工事の現地調査に行った際は、同じ災害で受けた他の部位の損傷や、ついでに工事を行える範囲で提案できる工事はないかを確認するようにしましょう。
金額的なメリットが大きい
修繕工事のついでに行う工事や商品のランクアップ分については、火災保険は適用されず、顧客の自己負担となります。
しかし、顧客にとって金銭的に大きなメリットがあります。
工事を同時に行うことで、職人の人件費や足場代が削減できるからです。
近いうちに必要となるメンテナンス工事であれば時期の前倒しも検討して、同時に行うことが推奨されます。
メンテナンスの重要性についての説明を細かく行って積極的に提案しましょう。
見積提出した損害工事は放置させない
火災保険は、保険金受取後の用途について限定されておらず、契約者が自由に使用用途を選べます。
保険契約上は、損害補修を必ず行う必要がないので、時期の先延ばしや補修中止となるケースもあります。
保険金を受け取った箇所について未修理のまま、同じ箇所に損害が起きた場合は重ねて保険請求はできないほか、未修理部分から家の内部に損害が進む可能性もあります。
未修理のままにすることは、顧客にとってデメリットが大きいので、早期に補修工事に取り掛かれるよう説明して確実に受注に結びつけましょう。
まとめ
今回は、これからリフォームへの新規参入を検討している工務店にとってタメになる情報をお伝えしました。
リフォームならではのクレームポイントや顧客の管理方法、火災保険修繕時の注意点についてお分かりいただけたでしょうか。
今後新築だけでは安定した経営が難しい時代に突入します。
スムーズにリフォーム業へ参入できるように、今から着々と準備をすることで安定した受注の仕組みを構築することが可能となるでしょう。