コロナ禍による急速に発展したオンラインによる商談や見学会は、工務店においても重要な集客施策の一つになりました。
今までチラシやイベント集客がメインの工務店も、時代の流れに逆らえない状況に、四苦八苦しているところが多いのが現状です。
特に地方の工務店やハウスメーカーは、商圏内でお客様を取り合う状況となり、どのように差別化をしていくか?が今後の工務店経営において解決すべき重要な課題となっています。
その解決策の一つとして、ここ数年で動画検索の需要が一気に増えたことも受け、建築業界でもYouTubeを自社で運営し、集客のみならず自社のブランド向上やファン化に成功している企業が多く出てきています。
YouTubeに否定的な意見として、
「動画がなくても集客はできる」
など、声を上げる経営者やWEB担当者は少なからずいらっしゃいます。
しかし「集客」だけでないYouTube動画の活用方法を知ることで今までのイメージが変わり、今すぐ取り組むべき重要な施策へと考えが変わりますので、しっかりと学んでいきましょう。
YouTubeの新規参入はまだ間に合うのか?
【結論】YouTubeは今からでも始めるべき、目先の集客だけでない様々なメリットがある!
今からYouTubeに参入することのリスクが大きいと感じられる方も少なくはないでしょう。
YouTubeがテレビ業界を席巻し動画市場を先導している中で、TikTokやインスタグラムなどの動画サービスも次々と生まれています。
Google検索でもテキストベースのWEBサイトよりも、YouTube動画が上位表示されるようにもなってきています。
この流れはユーザーの可処分時間が動画へと移行してきているからであり、文章で読む時間よりも、動画で視聴する時間の方が伝えられる情報量が多いことによります。
伝えたいことを「いかに短く」「濃い内容で」「印象に残るか」という軸で、自社の魅力を発信することが重要となります。
動画はストック型コンテンツマーケティングであり、蓄積させることで目先の集客だけではない、長期間安定した集客を獲得するものになります。
【おさらい】YouTubeの特徴とは?
YouTubeは2005年12月に提供が開始された動画共有サイトで、今年で17年目に突入します。
オンライン動画配信サービスの先駆けとして2020年現在、世界で月間20億人ものアクティブユーザーがいる動画プラットフォームとなっています。
国内では月間6,500万人のアクティブユーザーがおり、LINEに次ぐ2番目に使われているSNSです。(2020年3月)
国内ユーザーの年齢層は40代が一番多く、50代、30代、20代という順番で構成されています。
YouTubeは個人や企業が無料でアカウントを開設し動画を投稿することができるプラットフォームです。
登録者数の多い人気のチャンネルになると、集客につながる認知度向上だけでなくブランディングや広告収入など様々なメリットがあります。
しかし、動画を投稿すれば必ず見てもらえる訳ではなく、効果がわかりにくいことや集客に上手く結び付けられないことで、継続できない個人や企業が多いのも現状です。
YouTubeと工務店集客の相性
YouTubeはインスタグラムやLINEなどの他のSNSとは違い、動画を制作・編集・投稿という負担がかかる作業が必要となります。
この作業を内製化できるリソースがあるか?もしくは外注で制作が可能か?という課題がクリアになれば、間違いなく工務店集客との相性は良いでしょう。
なぜならば、動画による伝えられる情報量は、文字や画像だけの情報よりも格段の差があり、家づくりにおいて大事な「感性」に訴えることができるからです。
また、しっかりと作り込んだ動画が必要だと思われがちですが、クリック率を左右する「サムネイル」を見栄えあるものに作ることができれば、動画自体の品質がそこまで高くなくても視聴される確率は高まります。
上手く動画制作の分業化ができれば、費用を抑えながら視聴される動画を作ることができ、集客だけではないブランディング向上にも役立てることが可能となります。
【2022年版】YouTubeの集客ツールとしての最新情報
5Gによるストレスフリーな動画視聴
2020年3月に大都市圏から始まった第5世代高速通信(5G)により、超高速・超低遅延・多数同時接続が可能になりました。
今までの4Gと比べると通信速度が100倍になり、2時間かかっていた動画ダウンロード時間が3秒になるなど、超高速通信が実現します。
ソフトバンクは2022年4月に5Gの人口カバー率が90%を突破したと発表し、郊外での5Gの普及がますます向上してきています。
YouTube検索の普及
世界で一番訪問されているWEBサイトはGoogleで、主に検索する時に使用されています。
実は2番目に訪問されているのがYouTubeであり、YouTubeは2006年にGoogleに買収されているので、1位2位をGoogleが独占している状況です。
また近年YouTube動画での検索が増え、Google検索でもYouTube動画を上位表示をさせているように、ユーザーのニーズがテキストベースの情報から動画へと移行していることがわかります。
このことから、YouTube動画を投稿することで、Google検索への上位表示の機会が増えることや、ユーザーニーズとマッチさせることができるなどのメリットを享受することができます。
特にオウンドメディアでWEB集客を努力している工務店にとっては、活用しない手はないはずです。
集客において重要な「共感」をつくりやすい
これからの集客・マーケティングに必要な要素として「共感」があります。
一方的な広告や情報発信はユーザーの興味を削ぎ、離れていく傾向にあります。
表面的な情報を見抜きスルーされてしまう中で、動画による「内部発信」や信頼おける人からの「熱いメッセージ」が共感を生み、ファンへと発展させます。
今後、人口減少による新築着工数が減る中で、地域のファンを増やすことが重要になることは必須であり、ファン化を生み出すツールとしてYouTubeが最適と言えます。
【今日からはじめる】YouTubeの活用事例10選
YouTubeは工務店集客にとって大きな成果が生まれる可能性はご理解いただけたかと思います。
では具体的に「今日から」始めるために、何から手をつければ良いのか具体例を紹介します。
事例①:会社紹介
社内発信として、まず取り組むべき動画は「会社紹介」になります。
自社WEBサイトの会社概要ページにも活用できるので、オールマイティで活用できる会社紹介動画を最初に制作することをおすすめします。
事例②:トップメッセージ
企業の顔となる社長インタビュー動画もおすすめです。
特にユーザーが社長と接する機会が少ない場合、動画により安心感や信頼感を高められる効果があります。
会社選定にまよっているユーザーが社長の熱いメッセージを見ることで決め手となることもあるので、会社紹介と合わせて制作すると良いでしょう。
事例③:スタッフ紹介
ユーザーが実際に相談できるスタッフの顔が事前に確認できると、来場ハードルが低くなり集客へとつながりやすくなります。
どんなスタッフが働いているのか?という興味を解決するだけでなく、「この会社で働いてみたい」という採用活動に活かせる場合もあります。
コツとしては事前に台本は作らずに、飾らない等身大のスタッフ紹介動画がリアルな雰囲気で良い印象となります。
事例④:選ばれる理由
ユーザーにとって、会社選定をする上で「選んだ理由」を確認できる紹介動画があると安心です。
エリア内で競合となる企業が複数ある場合は、価格や商品だけでなく、「なぜその会社を選んだのか?」などわかりやすい説明動画がある方が記憶に残り、最終的に選ばれやすくなります。
事例⑤:オーナーインタビュー
企業の一方的な情報だけだと偏りがちになるので、お客様の声を動画で伝えることがユーザーへの安心感につながります。
アマゾンや食べログなどの口コミサイトは購入決定に絶大な効果があるように、高い買い物である住宅も口コミで評判をチェックするユーザーが多いのが特徴です。
事例⑥:イベントPR
【見学会のお知らせ】子育て世帯が暮らす各個室と回遊性のある高性能の無垢の家│川越市 埼玉で家を建てるなら無垢スタイル
近年イベント情報をYouTubeに投稿する工務店も増えています。
以前は自社WEBサイトやポータルサイトなどにイベント情報を掲載し、集客の受け皿として機能していましたが、最近はSNSなども台頭しており、待っているだけの集客だけでは難しくなっています。
YouTubeにイベント情報を投稿することで、Google検索にも引っかかるようになり、YouTube→自社WEBサイトへの送客も期待できるようになります。
事例⑦:人材採用
自社をアピールするのは購入いただくユーザーだけではなく、人材採用にも効果を発揮します。
人材採用専用の動画があると、働いてみたい方にとって事前に社員の顔ぶれや働き方などが知ることができるので、応募ハードルが下がります。
外部の採用サイトへ費用を支払って掲載するよりも、費用をあまりかけずに自社WEBサイトの採用動画のみで成功している工務店も多いです。
事例⑧:モデルハウス紹介
TOKYO WOOD モデルハウス / 小金井展示場 ~木を身近に感じる暮らし~
コロナ禍による対面営業の自粛により展示場への来場も下がる中、反動で動画によるモデルハウス視聴が伸びています。
最近では動画だけでなく360°バーチャル動画で好きな場所をみることができるツールなど、ユーザーの興味関心に合わせて進化してきています。
コロナが和らいできている状況下でも、オンラインによる営業やモデルハウス内覧は定番となっていますので、モデルハウスの紹介ページと動画はセットで考えておくべきでしょう。
事例⑨:商品・性能のPR
自社の商品や性能を動画にすることで、営業マンが直接説明するよりも、わかりやすく正しい情報が伝えられるメリットがあります。
特に性能については、難しい用語や数値、視覚的にわかりにくいことも多いので、動画でグラフや施工現場の様子などを説明と合わせて視聴できると、理解がしやすくなり親切に感じられます。
事例⑩:ルームツアー
OB様 ルームツアー(近江八幡 K様邸)【滋賀のSE構法・耐震住宅専門店 楠亀工務店】
ルームツアーという言葉が一般的となっており、今やどこの工務店でも実際に建てられたお宅を動画で紹介しています。
長さも1分〜10分と内容によって異なっており、3分未満の方が飽きずに最後まで視聴がされやすい傾向があるので、見どころを抑えた長すぎない動画にすることを心がけましょう。
YouTube運用のコツ(開設から運用までの流れ)
まだ自社のYouTubeアカウントがない方は、この章でポイントを抑えて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
①自社のGoogleアカウントの作成
YouTubeアカウントを開設するには、Googleアカウントが必要になります。
個人のGoogleアカウントでも作成は可能ですが、企業専用のGoogleアカウントを作成した方が運営がしやすくなりますので、この際に作成しておきましょう。
②YouTubeにログイン
企業用のGoogleアカウントにログインした状態で、YouTubeへアクセスします。
右上のログインボタンから入り、「設定」をクリックします。
③YouTubeチャンネルの開設
「設定」を押すとYouTubeチャンネル画面に遷移するので、「新しいチャンネルを作成する」ボタンにて、新規アカウントを作成できます。
④ブランドアカウントの作成
YouTubeには法人用のアカウント設定はなく、「ブランドアカウント」で企業用の設定をします。
チャンネル名は後から変更することも可能ですが、一目見て「どんな動画チャンネルなのか?」がわかるようなネーミングにすると視聴率が変わってきます。
・「家づくりの知識」オガスタ新潟の社長チャンネル
・アメカジ工務店【大人げない、大人の家】
・教えて松本さん貝塚工務店
・【寒冷地のプロ】長野の大井建設
・楽しいを造る!とちぎの工務店 だいこうホーム
たとえ工務店の名前を知らなくてもアカウント名を見ることで、どのような動画チャンネルなのかを想像できるネーミングが、視聴されるかどうかの分かれ道となります。
⑤ブランドアカウントの詳細設定
チャンネルの開設ができたところで、プロフィール画面の右上にある「チャンネルをカスタマイズ」をクリックして、詳細情報を設定しましょう。
カスタマイズする設定項目
<アイコン設定>
アップロード画像は800×800px以上が推奨されていますが、アイコン自体の表示があまり大きくないことを考慮すると、視認性の高いデザインを設定しましょう。また、丸型にトリミングされるので、重要な要素は中央に位置するように注意しましょう。
<チャンネルの説明文>
YouTube検索において、チャンネル名と概要説明が重要な要素になります。特に概要の前半部分が検索結果に表示がされるので、特に伝えたい情報は前半部分に収めるようにすると良いでしょう。
<チャンネルアート>
YouTubeチャンネルのトップに表示される画像になります。アカウントの世界観を表現する大事な要素です。バナー画像自体は2560×1440pxで設定しますが、様々なデバイスで閲覧されることを考慮すると、キャッチコピーなどは1546×423px内に収めるようにすると途切れずに表示することができます。
⑥動画をアップロードしよう
チャンネルを開設したら、早速動画をアップロードしてみましょう。
前章の「今すぐ取り組むべき活用事例10選」の中から取り組みやすい動画を始めてみることで、0→1になる大きな一歩を踏み出せます。
また、動画の視聴率はサムネイルの質で変わります。
動画は内製化したとしても、サムネイル制作は外部のデザイナーに依頼する方がコストパフォーマンスが良くなる場合が多いのでおすすめです。
⑦動画スポットライトの設定
動画スポットライトとは、YouTubeチャンネルのトップページに任意の動画を大きく表示して視聴を促す機能になります。
会社紹介や人気のある動画を設定することで、新たなファン化を促す効果が期待できます。
YouTube運用後の分析方法
動画の整理をして、ユーザビリティを上げる
<再生リスト>
動画を何本もアップしていくと、古い動画が埋もれていってしまいます。
古い動画でも見てもらいたい動画を「再生リスト」を使って、見てもらいやすくしましょう。
再生リストとは複数の動画をひとつのプレイリストにする機能です。
人気動画を集めたり、テーマごとにまとめたりと、ユーザーにとって親切な視聴動線を作ってあげることが重要です。
<注目セクション>
注目セクションとは任意の動画や再生リストをグループ化し、チャンネルのトップページに表示する機能になります。
全部で11種類のセクションが設定でき、特に「アップロード動画」「人気のアップロード動画」「1つの再生リスト」を設定するとユーザーの関心を引きやすくなります。
YouTubeアナリティクスで流入を分析
動画を投稿した後にどのくらい視聴されているのかを分析することが大事です。
まずは抑えるべき3つのポイントについて理解しましょう。
STEP1:チャンネルの大枠をチェック
集計期間にて90日に設定し、下記項目をチェックします。
・総再生時間
・チャンネル登録者数
この3つは動画チャンネルを運営する上で最も大切な指標となります。
また、エンゲージメントも確認します。どの動画が評価されているのか?などユーザーの動向を知ることができます。
STEP2:投稿した動画の分析
STEP1でチャンネル全体の傾向を把握した上で、次に個別の動画の動向をチェックします。
特に見るべき指標は以下の2つになります。
<視聴維持率>
投稿された動画がどのくらい視聴されたかがわかります。
どこで離脱されたのかがわかれば、動画の再構成や次の制作の判断材料になります。
<高評価率>
高い評価もあれば低い評価もあり、ユーザーがコメントに評価を残してもらえる場合もあります。
特に高い評価をもらえた場合、どの部分で評価がされたのか?をしっかりと分析することで、ユーザー満足度の高い動画を制作し続けることが可能となります。
STEP3:YouTubeSEOの観点からの分析
最後にユーザーにより多くみてもらうためのチャンネルに成長させるための分析方法について解説します。
みるべき指標としては以下の3つとなります。
<インプレッション数/インプレッションのクリック率>
表示されたうち、どのくらいクリックされたかを知る指標になります。
この数値によりサムネイルの効果を測ることができます。
ユーザーに最初に見られるのがサムネイルとなり、品質によってクリック率が左右される重要な部分になります。
<関連動画からの流入>
動画の流入元を確認する際に、関連動画からの流入数をチェックしましょう。
YouTubeが動画を高く評価している場合、様々なところに自社の動画を掲載してもらえるので、流入数が増える傾向になります。
<総再生時間>
YouTubeが高く評価することとして、どのくらい長く視聴されているか?が重要な指標となります。
最初から最後まで視聴されていることはユーザーにとって有益な動画であることと、YouTubeにとっても滞在時間が長いことは良いことであるため、注目してチェックしましょう。
YouTube集客の参考になるアカウント紹介
チャンネルを開設したが、どのような動画を投稿すれば良いのか?またどのような動画が人気なのか?を知ることは重要です。
ここでチャンネル登録者数の多い3つの工務店系YouTubeチャンネルをご紹介します。
きっとチャンネル運用の気づきが得られるはずです。
チャンネル登録者数1位 モリシタ・アット・ホーム
【チャンネル登録者数 52,500人】
兵庫県姫路市にある注文住宅の工務店チャンネルになります。
代表の森下氏による一級建築士の目線で自然環境に優しいパッシブ理論の講義動画がユーザーに支持されています。
特に高性能住宅を謳っている工務店や、セミナーなどを多く開催している工務店などは講義系動画の制作の参考になるでしょう。
チャンネル登録者数2位 クオホーム
【チャンネル登録者数 35,000人】
1位のモリシタ・アット・ホームと同じく兵庫県姫路市にある注文住宅の工務店チャンネルです。
ユーザーの素朴な疑問を動画にて解説し、わかりやすく楽しく視聴ができるので親近感が持てるチャンネルとなっています。
企業とのコラボや生ライブ配信など、積極的にYouTubeを活用している姿勢が参考になります。
チャンネル登録者数3位 一条工務店
【チャンネル登録者数 23,300人】
3位はご存知の大手ハウスメーカー一条工務店になります。
一条工務店はYouTubeの他にもインスタグラムやLINEなどSNSをフル活用して成功しているのが特徴です。
YouTubeでは自社の商品紹介や性能についての解説動画だけでなく、ルームツアーやユーザー協賛キャンペーンなども開催しており、新たな企画の参考になるアイデアが多いので一見の価値ありです。
まとめ
YouTubeの開設は誰でも簡単にでき、いつでも始めることが可能です。
しかし、継続して動画を制作することや運用後の分析に手が回らない工務店が多いのが現状です。
それはYouTube運営は片手間では難しく、目先の集客には使いづらいというイメージがあるからです。
しかし、今後も動画は重要なコンテンツに変わりはなく、ますます需要が伸びてきます。
まだYouTubeを始めていない方は、今からでも少しずつ取り組み始め、じっくりと成長させていくスタンスで行ってみてはいかがでしょうか?