不動産登記受付帳を活用した営業についてこんな悩みを抱えていませんか?
- 不動産登記受付帳を使って営業してみたいけど、どこで取得すればよいかわからない
- 不動産登記受付帳の見方がわからず、うまく営業に活用できていない
不動産登記受付帳の特徴を知らないと、どのように営業をかけてよいかわからず、難しく感じますよね。
不動産登記受付帳は、だれでもいつでも取得できる登記事項証明書にはない、以下のような特徴があります。
- 行政文書開示請求が必要で取得までに時間がかかる
- 取得可能な情報が限定されている
当記事では不動産登記受付帳の見方と仕組みを、任意売却案件の物上げにつながる可能性のある処分の制限に関する登記や相続登記が申請された場合を中心に解説しています。
当記事でわかること
- 不動産登記受付帳の見方、仕組
- 処分の制限に関する登記や相続登記申請後に関するユーザーの状況
- 不動産登記受付帳をもとに営業をかけた際に想定されるやり取り
不動産登記受付帳とは
不動産登記受付帳とは、登記が申請された際に、以下の内容が記載される台帳のことです。
- 登記の受付番号
- 登記の受付年月日
- 単独、連先、連続の種別
- 申請された登記の種類
※所有権移転(売買)、所有権移転(相続)、処分の制限に関する登記など - 土地か建物の種別
- 不動産の所在 ※不動産が複数あれば外1、外2のような記載があります。
※不動産登記受付帳 記載イメージ
【第9998号】 〇月×日受付(単独) 処分の制限に関する登記/
郵送・嘱託 既)土地 〇×市△△2丁目9-9 |
【第9999号】 〇月×日受付(単独) 所有権移転相続・法人合併
既)区建 ▼〇市××1丁目3-2 |
※区建→区分建物のこと
不動産登記受付帳は行政文書の一種で、物件の管轄法務局で誰でも取得できます。
以下では不動産登記受付帳の詳細について解説します。
不動産登記受付帳の取得方法
不動産登記受付帳は各物件の管轄法務局で、行政文書開示請求書に以下の必要事項を記入して請求します。
- 請求する行政文書の名称
希望の受付帳(不動産・商業・法人のいずれか)
希望の管轄 - 求める開示の実施方法(閲覧、写し、CD-R、DVD-R)
開示請求手数料は1件300円です。
収入印紙を法務局や郵便局で購入して開示請求書に貼ります。
開示請求書の記載例については東京法務局の記載例が参考になります。
引用:東京法務局・行政文書会請求書記載例①(不動産登記受付帳)
https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/content/001346022.pdf
行政文書開示請求の流れ
行政文書開示請求書を作成したら法務局庶務課窓口に提出します。
提出してから文書が開示されるまでの流れは以下のとおりです。
②開示対象文書の特定及び開示できない部分の検討
※行政機関が保有する情報の公開に関する法律の第5条各号には、
開示できない文書の種類が定められています。
③開示もしくは不開示の決定
※開示請求者に対し、開示もしくは不開示の決定通知書、開示の実施方法等申出書が
郵送されます。通知書には開示手数料額が記載されます。
④庶務課窓口へ開示の実施申出
※開示の実施方法等申出書に収入印紙を貼付します。貼付する金額は上記の決定通知
書に記載されています。
※郵送で開示実施の申し出をする場合は返送用の郵便切手を準備します。
⑤開示の実施
開示決定までの期間は原則30日以内です。
引用:法務省・行政文書開示請求の流れ
https://houmukyoku.moj.go.jp/fukuoka/content/001368259.pdf
処分の制限に関する登記が申請された不動産について
ここからは不動産登記受付帳をもとに不動産売却の案件化に繋がる可能性のある、処分の制限に関する登記と相続登記が申請された場合について解説します。
処分の制限に関する登記とは、以下のような、不動産の自由な処分を制限・禁止する登記の総称です。
- ・差押の登記
- ・仮差押の登記
- ・仮処分の登記
- ・破産手続き開始の登記
以下では、任意売却案件でも比較的よく見かける差押を中心に解説します。
差押の種類
差押は、国(裁判所)によって強制的に財産の使用を制限される手続きで、強制執行の前提としてなされる措置です。
強制執行とは勝訴判決を得たにもかかわらず判決内容に従わない場合、国が不動産や動産などの財産を差押えて強制的に売却してお金に変える手続きのことです。
この強制的な売却を強制売買といいます。
強制売買(競売)が開始されたことを公示するため差押登記をします。
差押の登記には次の3種類があります。
①担保権の実行による競売のための差押
②強制執行の実行による競売のための差押
③滞納処分に基づく公売のための差押
担保権の実行による競売のための差押とは、代表的なものとして抵当権の実行があります。
住宅ローンの支払いが滞り、返済ができなくなると、銀行は裁判所に申し立てて、抵当権を実行できます。
強制執行の実行による競売のための差押は、判決や和解により金銭の支払いや不動産の引渡が決定しているにもかかわらず、これに応じない場合に裁判所が強制的に行います。
この差押は判決や和解によって権利を獲得した人(債権者)の申立が必要です。
滞納処分に基づく公売のための差押は、税金の滞納が長期化すると国や地方自治体が、滞納者の財産を確保し、金銭に変えて税収に充てるためにされる手続きです。
公売とは国や地方自治体が主導して、差し押さえた財産を一般向けに販売することです。
不動産を差押されるとどうなるのか?
不動産を差押えされると自由に処分ができません。
競売が開始されると入札者がその不動産の権利を取得するので、自宅であれば引っ越しを余儀なくされます。
仮に不動産登記受付帳を取得して、差押えされた不動産の所有者にアプローチをかけたとしても、競売は公開された手続なので、周囲に自宅を差押えられたことを知られる可能性があります。
返済に悩まされるだけでなく、周囲に知られてしまう恐怖感から精神的に苦痛を感じることになるでしょう。
カードローンや税金の支払いの滞納によって差押えられると、生活費を工面しながら返済に追われるため、精神的に余裕はなく、です。
このような状況下で、通常の売却営業を持ち掛けられても、売却手続きに対する時間的余裕も精神的余裕もなく、前向きな回答を得るのは難しいでしょう。
不動産売却により生活再建の手助けをする
上述のとおり、不動産を差押された人の経済状況は良くないにもかかわらず、ローン返済をつづけ、生活費や不動立退き費用なども準備しなければなりません。
差押登記がされた物件の所有者に対し、生活再建の手伝いをする目的で売却のアプローチをすれば、不動産の営業を嫌がる人でも、興味を持ってくれる可能性はあります。
任意売却に関する以下の代表的なメリットを提示し、生活案件の手助けを目的とした売却の提案が可能です。
- リースバックが可能であること
- 生活状況を考慮したローン返済が可能となること
- プライバシーが守られること
不動産登記受付帳の見方と仕組みを理解すれば、このような生活再建の手助けを目的とした売却案件につながる可能性があります。
相続登記が申請された不動産について
相続登記が申請された不動産について、以下の理由から、物件の所在と申請した人の住所とが一致しないこともあります。
- 生前に被相続人が賃貸していて実際に相続人は住んでいない
- 既に空き家となっている
相続登記がされた後の状況
相続登記が申請された物件についても、不動産登記受付帳を取得すれば、「所有権移転(相続)」と記載のある不動産を把握できます。
上述のとおり、相続した不動産に相続人は住んでおらず、もともと処分したいと考えていた人もいます。
しかし、被相続人との別れが終わって間もないのに、売却に関するダイレクトメールが不動産業者から届くと、困惑する人もいるでしょう。
相続が発生すると、葬式や財産整理、相続税申告や年金などの諸手続きに追われ、相続人は精神的にも時間的にも余裕はありません。
相続登記をした人の特徴
相続登記は差押の登記と異なり強制的に登記されません。
令和6年より、相続登記は義務化されますが、現時点では相続登記をするかどうかは任意です。
そのため、わざわざ相続登記をする人は相続した不動産を売却したいと考えている可能性があります。
相続後間もないタイミングで、売却のアプローチをしても強引な営業という印象を与えかねません。
しかし、
- 相続した不動産が遠方にあるため処分したい
- 唯一の相続財産が不動産だけなので売却化して相続人同士で分けたい
処分を考えている人にたいして、処分の手伝いをしたいとアプローチすれば、強引な印象は薄まり話を聞いてくれそうだとは思いませんか?
相続登記をした人の事情を理解したうえで、売却アプローチの戦略を立てましょう。
相続登記と一緒に申請された登記は要注意
不動産登記受付帳において、連先・所有権移転(相続)の後に連続で所有権移転が申請されていた場合、既に売却されている可能性があります。
相続登記と同時に売買による移転登記を申請できるからです。
不動産登記受付帳の見方を理解していれば、アプローチをかけても徒労に終わるということもありません。
まとめ「案件化に向けて登記受付帳を上手に活用しよう」
不動産登記受付帳は、行政文書開示請求すれば誰でも取得可能です。
しかし、営業手法や営業のタイミングを見誤ると、情報の出処についてクレームをうける可能性があります。
一般の人は、誰でも不動産登記受付帳を取得して、差押や相続といった事情を知ることが可能だと知らないからです。
そのため、不動産登記受付帳をもとに営業する場合は、差押や相続を把握している理由の説明が必須です。
不動産を差押えされた人に対しては生活再建の手助けをしたい、相続が発生した人に対しては不動産の処分に困っている場合は処分の手伝いをしたい、という営業目的を理解してもらいましょう。
不動産登記受付帳を活用して、相手方と信頼関係をうまく築き、不動産の売却案件につなげてみてはいかがでしょうか?