不動産オーナーに家賃下げを提案するときの交渉術

管理会社が、頭を悩ます問題のひとつに、“管理物件が決まらない”という問題があります。管理会社共通の悩みです。

空室を埋めるために、一番多く使われる提案が“家賃の値下げ”です。しかし、オーナーによってはなかなか家賃を下げたがりません。

では、どのような交渉を行うとオーナーは値下げに同意するのでしょうか。

不動産管理会社勤務20年超の筆者がこれまでの経験をもとに交渉術を説明します。

なぜ不動産オーナーは家賃を下げたがらないのか

家賃を下げた方が入居者が早く決まって家賃収入が早く入ります。「ではなぜオーナーは家賃を下げたくないのか?」

オーナーが家賃を下げたがらないと理由は主に以下の3つです。

  1. 新築のときの状態でイメージが止まっている
  2. 家賃を下げると、良い入居者が入らない
  3. 資産価値が下がるから家賃は下げたくない

①新築のときの状態でイメージが止まっている

実際にオーナーが物件を見る機会はあまりありません。

オーナー宅の近くにあるとか、オーナー自身が物件の掃除を行っているといったとき以外はほとんど管理会社任せです。

新築からのオーナーは新築時のまま、中古を購入したオーナーは購入直後で物件の状態が止まっています。

当然、物件は年数が経過すると、色々な部分に汚れや傷みが出てきます。管理会社は、物件を見に行くわけですから物件の状態が悪くなっていくのはタイムリーに分かります。

しかし、オーナーは実際に目で見ていないので、いいイメージがそのまま残っています。

ここに担当者とオーナーの間でイメージの差が出て、なかなか値下げに応じてくれない。最悪は管理会社の努力不足と感じてしまうのです。

②家賃を下げると、良い入居者が入らない

私も、年数が古くなった物件の値下げ交渉を行うことは良くあります。

そのときにオーナーから「家賃を下げたら良い人が入らなくて家賃が滞納される」といわれることが良くあります。

オーナーの頭の中では

家賃が高い物件=裕福な人で家賃の滞納がない
家賃が安い物件=貧乏な人で家賃の滞納が多い

というイメージの人が多いのです。

管理会社の立場から考えると果たしてそうでしょうか。

家賃が高い物件でも、事業に失敗したり会社を辞めたりした人は滞納します。家賃が安い物件でも、きれいに使って近隣との関係性も良好で滞納もない人がほとんどです。

家賃が高いか安いかは滞納にあまり関係ありません。

家賃が高い物件でも、態度が悪くトラブルを起こす人もいます。つまり、入居者の質に家賃は全く関係ないのですが、オーナーには、家賃が高い物件のほうが、グレードが高いと考える人が多いことも事実なのです。

③資産価値が下がるから家賃は下げたくない

これは、投資家オーナーに多い傾向ですが、家賃を下げることは、物件の売買価格に大きく影響すると考えている人が多いのです。

例えば5万円の家賃で20戸のマンションだった場合、満室時の年間家賃収入は、1200万円です。

この物件を表面利回り8%で売却しようとすると1200万円÷8%=1億5千万円となります。

この物件を、家賃を下げて募集してみると結局全戸4万円の家賃になったとします。

すると満室時の年間家賃収入は、960万円です。

この物件を表面利回り8%で売却しようとすると960万円÷8%=1億2千万円となります。

つまり3,000万円の資産価値が下がってしまったと考えるのです。このような点から家賃下げを拒否するオーナーも少なくありません。

家賃値下げの交渉術は?

では、このようなオーナーの心配を払しょくするための交渉術にはどのようなものがあるのでしょうか。

実際に私が使っている交渉術を紹介します。

①一緒に物件を見に行く

自分の物件がいつまでもきれいなままと思っているオーナーには、退去したばかりの部屋を物件の現状を把握してもらうために一緒に内覧する方法が効果的です。

そうすると、オーナーと管理会社のイメージが共有されやすいのです。

一緒に物件を見た際に、近くの物件も一緒に見ると家賃が妥当なのかどうかが分かりやすいです。先日70,000円で15年住んでいた人が退去した部屋の値下げ交渉を行ったときにこの手を使いました。

あわせて、同じくらいの家賃で募集しているもっと築浅の物件も紹介しました。そうすると今の状況が分かりやすく、値下げ交渉が通りやすいです。

実際の状況を目で見せる方法は非常に効果的です。

②家賃保証会社の有効性を説く

実際のところ、家賃の高低は滞納にあまり関係ありません。しかしオーナーの中には家賃を下げることは、家賃滞納の可能性が増えると思っている人も多いのです。

現在私が、管理業務を行っていて一番感じる点が、滞納の処理が昔に比べると断然減ったことです。

これは多くの管理会社の担当者は感じているのではないでしょうか。近年の賃貸物件は、家賃保証会社を併用して賃貸借契約を締結しているので、滞納の心配はほとんどなくなっています。

実は、オーナーによっては、この部分があまりわかっていないのです。再度、家賃保証会社を付けたことによる家賃滞納のリスクが大幅に減ったことを強調してみましょう。

私が行っていた保証会社の有効性を説明する手法は、

・家賃保証会社を利用していない頃の管理物件の滞納率
・家賃保証会社を利用後の管理物件の滞納率

この2つを比較して家賃保証会社の有効性を伝えています。

家賃の滞納を心配して値下げに抵抗があるオーナーには効果があります。

③資産価値は表面利回りだけで判断しない

家賃が下がることは確かに資産価値が下がるので、オーナーの立場からするとできることならば避けたい手法ではあります。

しかし、家賃を下げないでずっと部屋が決まらなかったら何にもなりません。

このようなオーナーには実際の稼働率から、本当の収益を示しましょう。先ほどの5万円で20戸の物件の稼働率が70%だったとしたら年間の家賃収入は840万円になります。

では、4万円に下げて稼働率が90%になったら年間の家賃収入はどうなるでしょうか。
4万円×20戸×12ヶ月×90%=864万円となり、家賃が5万円のときよりも24万円程家賃収入を多く得ることができるのです。

満室時の資産価値を考えても満室にならなければ意味がありません。いかに稼働率を上げて満室に近づけるのかを考えるのも管理会社の仕事です。賃料を下げても、それによって稼働率が上がり、結果として家賃収入が増えるということをしっかりと説明すると値下げに応じてくれます。

このようなオーナーには、現在の家賃による稼働率から得られる年間家賃収入と、家賃を下げた場合の想定稼働率から得られる家賃収入を表にしてオーナーに説明しています。

表面利回りというのは満室時の家賃から算出する資産価値の計算方法ですので、稼働率まで加味した資産価値を算出することで理解を得る方法も効果的です。

まとめ

部屋が決まらないと管理会社の責任を問われるので管理の仕事の中で非常に悩ましい問題です。何とか家賃を下げてでも決めることがオーナーにとってメリットがあると思っても、オーナーに伝わらなければ意味がありません。

まず、値下げをすることによるオーナーの悩みや心配事をしっかりと掴みましょう。その悩みを解消する提案で案外すんなり応じてくれることも多いです。

私が利用している方法だけではなく、他にもいろいろな方法があると思いますので是非、私の手法を参考にして自分なりの攻略法を見つけてほしいものですね。

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