不動産情報を広告に掲載するにはルールがあります。
不動産業界のルールはもちろんですが、広告の場合は法律による規制を受ける部分もあり、たいへん厳しいものになっています。
新聞広告や折り込みチラシなどでは、外部スタッフがチェックしてくれる場合もありますが、自社のウェブサイトに物件情報を掲載する場合、知らずに法律違反している場合もあります。
本記事では、消費者に正確な案内が行えるように、不動産広告にかかわるルールや法規制の概要を説明し、誇大広告や特定用語など注意したいポイントも解説いたします。
不動産広告のルールの大前提「広告をする前に承諾をもらう」
まず不動産広告に物件情報を掲載するには承諾が必要です。承諾をもらう相手は物件によって次のようにわかれます。
物件の種類 | 承諾をもらう相手 |
自社が媒介契約締結している物件 | 売主 |
他社が媒介契約している物件 | 媒介契約している不動産会社 |
他社が売主または売主代理の物件 | 売主または代理の不動産会社 |
自社の物件以外の広告を掲載するケースとはどのようなケースでしょう。
- 客付けできそうな物件のため資料を整備しウェブサイトに掲載したい
- オープンハウスをおこなう付近の物件を比較参考物件として広告媒体に掲載したい
他社が媒介あるいは売主の物件でレインズに登録された物件は、お客様に自由に紹介してかまわないですが、広告掲載については必ず承諾をもらわなければなりません。
理由は売主が広告掲載しないことを希望している場合や、媒介業者が広告掲載について制限をしている場合があるのです。
レインズの詳細情報には「広告転載区分」欄があり、「可」となっている場合は広告の承諾を得たことになりますが、「不可」の場合が多くなっています。
「不可」であっても連絡をすると承諾される場合もあるので、広告掲載したい物件があれば必ず連絡をしましょう。
レインズ以外で物件情報を知った場合、たとえばポータルサイトに掲載されている物件について、取扱業者に問い合わせをすると “先物” のため物件紹介はできないと断られるケースがあります。
(先物とは、取扱業者が売主との媒介契約を締結しておらず、媒介業者の承諾を得て物件を公開している状態の物件をいいます。)
【不動産広告】法律の規制によるルール
不動産広告には法律上の規制があり、ルールをしっかり理解し遵守しなければなりません。
1. 宅建業法による規制
- 誇大広告の禁止
- 広告開始時期の制限
- 取引態様の明示
- 不動産の表示に関する公正競争規約
それぞれ詳しくご紹介いたします。
宅建業法による規制ルール
宅建業法では3つの広告ルールを定めています。
- 誇大広告の禁止(法第32条)
- 広告開始時期の制限(法第33条)
- 取引態様の明示(法第34条)
誇大広告の禁止(法第32条)
不動産の内容を広告に記載する場合、事実と明らかに異なった表示をしたり、実際のものよりも著しく優良であるとか、有利であると誤認させるような表示を禁止しています。
事例をあげると以下のような表示があります。
- 「日当たり抜群」「特選住宅」「公園すぐ」など根拠のない表現
- 「バス停徒歩3分」など最寄り駅からバス停までの所要時間が記載されていない
広告開始時期の制限(法第33条)
宅地の造成工事や建物の建築工事が完了する前に、これらの物件を販売するため広告掲載する場合は広告開始の制限があります。
造成完了前の宅地 | 開発行為の許可申請をし、許可を受けてから |
工事完了前の建物 | 建築確認申請をおこない確認済となってから |
取引態様の明示(法第34条)
広告のなかに以下の取引態様を記載しなければなりません。
- 売主
- 代理
- 媒介
不動産の表示に関する公正競争規約
「不当景品類及び不当表示防止法」にもとづき、不動産業界が独自に自主規制として設けた規約が「不動産の表示に関する公正競争規約」で、公正取引委員会の認定を受けています。
広告の表示方法については、非常に詳細なルールを定めています。
折込チラシやインターネット用の物件詳細の原稿を作成するときは、必ず一度目をとおして漏れのないようにしてください。
新聞広告や情報誌などに広告を掲載する場合は、媒体側の担当者が校閲してくれますが、不動産媒介業務に携わるものの常識として知っておくべきことです。
参照:『不動産公正取引協議会連合会』不動産の表示に関する公正競争規約
広告表現のルール
上記「不動産の表示に関する公正競争規約」から重要な項目を抽出し解説します。
表示基準の適用を受ける事項
以下の項目に関する広告内容については「表示基準」を守らなければなりません。
- 取引態様
- 物件所在地
- 交通の利便性
- 各種施設までの距離または所要時間
- 団地の規模
- 面積
- 物件の形質
- 写真や絵図
- 設備や施設など
- 生活関連施設
- 価格または賃料
- 住宅ローンなど
- その他の取引条件
これらの詳細については、上記参照資料「不動産の表示に関する公正競争規約」の8ページ「第8章 不当表示の禁止 第4節 その他の不当表示」に記載があります。
特定用語等の使用基準
誇大広告に該当するおそれがある広告内容について「特定用語の使用基準」が決まっています。
- 新築
- 新発売
- ダイニング・キッチン(DK)
- リビング・ダイニング・キッチン(LDK)
- 宅地の造成工事の完了
- 建物の建築工事の完了
これらの用語については明確な基準があり、さらに原則的に使用してはいけない用語が定められています。
原則的に使用してはいけない用語
一例をあげると次のような用語が原則的に使用してはいけない用語となります。
- 完全
- 絶対
- 万全
- 業界一
- 最高
- 買得
などなど。ほかにもたくさんの用語があります。
詳細は上記参照資料「不動産の表示に関する公正競争規約」の6ページ「第7章 特定用語等の使用基準」で確認してください。
まとめ
▼不動産広告6つのルール▼
- 広告をする前に承諾をもらう
- 誇大広告の禁止
- 広告開始時期の制限
- 取引態様の明示
- 広告表現のルール
- 特定用語等の使用基準
販売図面の作成を担当するかたは、特に「広告のルール」を熟知しておく必要があります。うっかり気づかずにやってしまうことが多く、悪質な行為に対しては行政措置や罰則を受けることも。
業界ルールについても違反行為があると、相手業者との取引や情報交換に支障がでたり、レインズのガイドラインに違反すると是正や勧告処分を受けます。
本文に記載した各法律と「レインズガイドライン」も合わせてよく理解するようにしましょう。