建築基準法では「建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない」と定められています。
これにより道路に2メートル以上接しない敷地に建築物を建てることはできないのですが、この接道長さの考え方が、意外と難解なのです。
この記事では敷地の接道長さの基本から変則形の敷地における考え方までを詳しく解説していきます。
接道の基本的な考え方
まずは敷地の接道長さの基本から押さえていきましょう。たとえば次のような敷地があったとします。
この場合、接道長さはAの長さです。これが最も基本的なパターンです。さらに基本的な接道長さの考え方を探っていきましょう。
①フェンス塀のある敷地はどうなるのか
よく誤解されるのが「接道長さを確保するために、塀やフェンスがない開放的な部分が2メートル以上必要だ」という考えです。結論からいえば、これは間違いです。
敷地にガレージを設けていれば、車の出入りのために2メートル以上の開放部分は労せず確保できます。ではマイカーを所有しない家庭で、次のようにフェンス塀を構築したらどうなるでしょうか。
フェンス塀の一部に門扉を設けてそこから人が出入りをします。この場合であっても、敷地と道路は有効に接続しているとの考え方から、接道長さは、Aの長さになります。この場合のbの長さは、常識的に人が出入りできる幅である1メートル内外であれば有効な接道として認められます。
②敷地が道路に接していても接道にならないこともある
単に敷地が道路に接しているからといって、必ず接道長さになるわけではありません。次の図のように、法面で道路に接している敷地があったとします。
このように敷地境界と道路が接していても、通常の歩行でフラットな敷地面にたどり着けないものは、接道しているとはみなされません。
③階段を設ければ接道していることになる
この場合は、容易にフラット面にたどり着けるように階段を設けることで接道と見なしてもらえます。
上の図のように法面に階段を取り付けることで、この敷地の接道長さはAの長さになります。この場合の階段の幅は、常識的に人が通行できる1メートル内外であればよいとされています。
変則的な敷地における接道長さの考え方
敷地や道路は常に四隅が直角な形とは限りません。不整形な敷地や道路に接する場合、接道長さはどのような考え方になるのかをみていきましょう。
①一部非道路である通路に接している
上の図のように、避難上有効な通路であっても、非道路の部分は接道長さの対象にはなりません。道路と敷地が接しているAの長さが接道長さになります。
②敷地の前面が水路で道路に接していない
敷地と道路の間に水路が流れていて、道路に接していない場合は、水路管理者(土木事務所・農業用水路管理組合等)から占用許可を取得して、下の図のように占用橋を設置することで接道している扱いになります。この場合、占用橋の幅が接道長さになります。
③道路の端部が敷地に接している
下の図のように道路の端部が接して場合の接道の長さはどのように考えればいいでしょうか。
一見「b+c」の長さでもいいように思えますが、この場合は、斜辺のAの長さが接道長さになります。
もし球体を道路から敷地に通そうとした場合、直径が「b+c」のものは通貨できません。通過できる最大の球体の直径がAの長さであるとの考えから、Aを接道長さとしています。
④接道長さは道路に接している長さとは限らない
下の図のように道路と敷地の接している長さが十分にあっても、路地状敷地の一部が狭くなっている敷地では、接道長さはAの長さになります。
この場合Aの長さが2メートルに満たないと、再建築不可の敷地になります。
接道義務は2メートルだけではない
ここまで建築物を建てることができる最低条件として、2メートルの接道要件について解説をしてきましたが、建物の用途によっては、2メートルの接道長さだけでは建築ができないことがあります。どのようなケースがあるのか解説をしていきましょう。
①3階建てのある路地状敷地は4メートルの接道義務
3階建ての建物は、3階以上の居室に消防車のはしごから直接中に入ることができる非常用進入口という窓を設ける必要があります。通常の敷地であれば、道路面に面した窓に非常用進入口を設ければいいのですが、次の図のような路地状敷地の場合、奥まった場所に建物があるため、道路からの進入ができません。
このため路地状敷地では、直接消防車が寄り付くことのできる4メートル幅の通路を敷地に確保する必要があります。この通路には障害物を置くことができないため、道路と接する境界にフェンス塀を設けることはできません。
②条例による6メートル接道
建築基準法施行条例は、各都道府県や政令指定市で定めるものですが、避難上の観点から1,000平方メートル以上建物の敷地に対して「幅員4メートル以上の道路に6メートル以上接しなければならない」と定められていることがあります。
次の図のような敷地における条例の接道長さの考え方は、AとBの合計で6メートルを確保するのではなく、道路aもしくは道路bのどちらかで6メートル以上の接道するよう求められます。
まとめ
敷地の接道長さは、2メートルに1㎝でも不足していると、その敷地に建築することはできません。このため、接道条件ぎりぎりの敷地は、かなり正確に敷地を測定する必要があります。
特に変則敷地では、接道長さの考え方が非常に重要になってきます。適切な測定によって、トラブルのない取引を進めていきましょう。