不動産売買契約を締結する際には、物件を調査した結果を重要事項説明書などの契約関連書類に記載していきます。
調査をすることはもちろん大事ですが、契約の当事者にきちんと理解してもらえるような書類作成を行うことも非常に重要です。そこで今回は、物件調査後の契約書類への落とし込み方について解説します。
契約書類作成にあたり必要なもの
調査結果を落とし込む書類として代表的なものは、重要事項説明書でしょう。ここでは、主に重要事項説明書を作成する上で必要なものについて解説します。
不動産の表示
不動産売買契約書や重要事項説明書には、契約対象となる土地・建物の情報を記載する項目があります。この項目で必要なものの例として、以下のものが挙げられます。
・公図
・地積測量図
・建物平面図
・確認申請書類
など
契約対象となる土地・建物の所在・地番・家屋番号・地目などの概要を、登記事項証明書から読み取りましょう。地目と現況が異なる場合は、その事実がわかるように書類へ記載します。
注意点があれば、備考欄などを活用して記しておくとよいでしょう。例えば、現況は宅地であるけれど地目上は「田」となっていることがあります。地域によっては、田を農地転用で宅地化したとしても、宅地の上の建物がある程度完成しないと地目変更ができないことがあるからです。
また、契約対象となる地積が「公簿面積」であるか「実測面積」であるかを必ず記載しましょう。実測面積の場合は地積が確定した後に清算するため、1㎡あたりの金額を契約書に記載します。
権利に関する事項
登記事項証明書など、調査結果を基に権利に関する事項を記載していきます。所有権は誰にあるのかという点や、所有権に関する権利や所有権以外に関する権利が設定されていれば、その詳細を記載しましょう。未登記である場合は、その旨を記載します。
そのほか、第三者に賃貸しているなどの場合は、その詳細も記載します。第三者における占有で見落としやすいものの1つとして、電柱が挙げられます。敷地内に電柱がある場合、NTTや電力会社が敷地を借りて設置している場合があるからです。この場合は、所有者と使用貸借契約などを取り交わして使用料の支払いを受けている可能性があります。現地を確認するときに、敷地内に設置されているものについても確認しておくことが大切です。
都市計画法・建築基準法に基づく法令
ここでは、役所調査を行った結果を記載していきます。重要事項説明書の作成に慣れていない人は、白紙の重要事項説明書を持参して調査する項目を確認するのもおすすめです。
都市計画法・建築基準法に基づく法令について記載する際に必要なものの例として、次のようなものが挙げられます。
・道路台帳
・開発行為の許可申請書・検査済証
・建築協定や地区計画の内容がわかる資料
など
上記はすべて、必ず準備するものではありません。必要に応じて、資料などを取得していきましょう。例えば、道路に地番がある場合に登記事項証明書を取得して所有者を確認するなどが考えられます。
重要事項説明書には、調査の結果がわかるように記載していきましょう。上記の道路所有者の例でいえば、所有者は誰であるのか、管理方法はどのようになっているのかなども記載しておくとよいでしょう。
都市計画法・建築基準法以外の法令に基づく制限
該当する法令に基づく制限があれば、すべて記入しましょう。この項目では、該当する法令に基づく制限の内容を簡潔に記入していきます。法令に関する資料やパンフレットがあれば、一緒に添付してください。
現在は制限の概要に該当していなくても、将来建て替えなどで該当する可能性がありますので、地域全体で該当するような法令制限があれば、念のため記載しておくことをおすすめします。もしかしたら、将来の建て替えまで予測して購入を検討している買主がいるかもしれないからです。伝えた方がよい調査結果は、記載しておくとよいでしょう。
また、区画整理などの場合は区画整理事業の計画内容や実施段階などを記載します。役所などで調査ができますので、知り得た情報を顧客がわかるように記載していきます。特に、賦課金や清算金など、お金に関することは注意して記載しましょう。
書類の保存状況
建物の確認申請書や確認済証、検査済証など、売主が保管している書類の保存状況を記載します。売主に書類を持参してもらい、中身を確認して書類に落とし込みます。書類の有無、書類に記載された許可番号や日付など、わかる情報を記載していきます。作成義務のない書類や交付されていない書類については、斜線を引きましょう。
ライフラインの整備状況
水道局やガス会社などから取得した配管図面などの資料を基に、書類に落とし込みます。前面道路や敷地内の配管有無や口径などの情報を記載していきます。水道加入金や下水道受益者負担金など、ライフラインに関するお金がかかる場合は必ず記載しましょう。そのほか、ライフラインの利用に関して説明すべき点については、備考欄を活用してください。
その他
新規分譲地などで、売買代金以外にかかる費用があれば必ず記載しましょう。また、地域によっては積雪対策のための消雪施設関連の負担金がかかることがあります。後々のトラブルを防ぐためにも、不動産売買に必要な金額は記載しておくとよいでしょう。
また、最近では自然災害のリスクを気にしている買主がいます。ハザードマップについて調べている場合は、記載するのもよいでしょう。例えば「本物件は〇〇川・✕✕川等が大雨によって増水し、堤防が決壊した場合の浸水想定◎m未満の区域に該当します」など。調査結果は相手にわかりやすいように記入しましょう。
調査結果は必要な情報が伝わるように記載しよう!
物件の調査を行っても、書類に反映されていなければ顧客から「調査していない」と思われてしまう可能性があります。不動産売買契約にあたり必要な情報は、きちんと伝わるように書類へ落とし込むことをおすすめします。後々のトラブルを防ぐため、調査を行ったあとの書類作成も相手に伝わるよう意識して取り組みましょう!