家賃滞納者の連帯保証人が亡くなった場合の3つの対処方法

管理会社に勤めていると、頭が痛くなる問題がいくつか頭に浮かびますが、そのうちのひとつが滞納者への対応です。せっかく入居しているのに入居者が家賃滞納しているために家賃が入らない。

空室よりも厄介な問題です。

滞納者の対応において、更に厄介な展開になる場合があります。家賃滞納者の連帯保証人が亡くなっている場合です。

滞納者の連帯保証人が亡くなっている場合、管理会社としてどのような対応を行えばいいのでしょうか?

本記事で詳しく解説していきます。

連帯保証人の役割ってどんなもの

借主と賃貸借契約を締結するとき、一般的に連帯保証人を付保して契約を交わします。

一般的に連帯保証人の役割とは、借主が貸主に対して負うべき責任において連帯して保証する役割を担うのです。

例えば、貸主に対する修繕義務や借主が契約違反している場合の是正義務など、借主と同程度の責任を負わなければいけません。その中で、最も重要な内容のひとつが家賃滞納に対する債務保証です。

借主が家賃を支払えなくなり滞納してしまった場合、借主との契約が終了するまで連帯保証人も債務を一緒に背負います。もしも、借主が何年間も家賃を滞納したとしても連帯保証人は滞納家賃全額に対して支払う義務が生じるのです。

2020年4月の民法改正で変わった連帯保証人の債務限度額

今までは、家賃の滞納に対し連帯保証人は無限に責任を負う契約でした。

しかし、連帯保証人に関する債務が大きくなる可能性があることや、いくらの金額に対して連帯保証を負うのかについて不明確です。

そのため、2020年の民法改正から債務負担の最大額を極度額として賃貸借契約書に記すようになりました。

最大で負担しなければいけない金額が明確化されましたので、旧賃貸借契約のように無限に責任を負うことはなくなりました。

連帯保証人が亡くなっていることに気づくのか

借主の契約中に連帯保証人がなくなっている場合、管理会社は、なくなっていることについて気づくのでしょうか。

答えは、借主から通知がなければ気づきません。

しかし、商慣習にもよるのですが地域によっては契約の更新時に気づく場合があります。
賃貸借契約の一般的な契約期間は2年から3年です。

賃貸借契約の期間が経過したとき、地域によって更新料をもらって、更新の契約を締結することもあります。

また、自動更新で、何もないまま契約が自動的に延長する契約もあります。賃貸借契約の更新によって、新たに契約書の更新を行っている地域ならば、早い段階で連帯保証人がなくなっていることに気づくでしょう。

ポイントとなる2点です。
・ 賃貸借契約の更新時に更新料をもらっているか?
・ 更新料をもらうときに契約書の再契約を行っているのか

少し古いのですが平成19年に国土交通省の調査により更新料の徴収において地域ごとに調査しています。

不動産,連帯保証人

参考:国土交通省「民間賃貸住宅に係る実態調査(不動産業者)」

地域ごとに大きく異なり関東圏は更新料の徴収率が高く、関西圏は低いのです。

つまり、更新料の徴収が少ないということは、契約は自動更新になっていることが多く、連帯保証人がすでになくなっていることが分からないままになっている可能性があります。

逆に更新料を徴収している割合が高い関東圏では、更新時に契約書に変更がないかを確認することが可能です。連帯保証人がなくなっている場合に、他の連帯保証人を立ててもらうなどの対策ができるので、滞納などが起こっても比較的連帯保証人への請求ができやすいといえます。

滞納者の連帯保証人が亡くなっている場合の対処

では実際に滞納者への請求の際に連帯保証人がなくなっていると管理会社としてどのような対処が可能なのでしょうか。連帯保証人がなくなっている場合の対処方法3点について詳しく解説していきましょう。

  1. 他の担保を提供してもらう
  2. 連帯保証人の相続者に支払ってもらう
  3. 通知義務違反ということで賃貸借契約を解約する

① 他の担保を提供してもらう

入居者へ他の担保を提供してもらい家賃の滞納にあてる方法が考えられます。民法第451条(他の担保の供与)で「債務者は、前条第1項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。」と記しています。

担保とは、借主の財産にあたり、例えば所有している不動産や自家用車、骨とう品などがあたります。担保を提供され、処分することで家賃の滞納を解消して、引き続き賃貸借契約を継続することも対処方法のひとつです。

ただし、実務上私は経験したことがありません。
なぜなら

・ 滞納者が他の担保を持っていない
・ 担保を提供してもらっても換金方法が難しい

このような理由から、この手法を活用したことはないのです。

しかし、民法上は有効ですし、担保提供による滞納補填ができると貸主にも管理会社にも大きなメリットです。

② 連帯保証人の相続者に支払ってもらう

連帯保証人がなくなってしまうと債務は消滅してしまうのでしょうか。決してそのようなことはなく連帯保証人の債務保証はそのまま相続人へと移行します。

ただし、相続人が相続放棄や限定相続をしていると相続者に滞納家賃の支払い義務はありません。

以前、管理物件に居住している単身入居者が、部屋内でなくなっていたことがありました。金額は少ないのですが家賃の滞納があり、荷物の撤去も含め連帯保証人へ連絡したところ、連帯保証人も既になくなっており、弁護士に相談したことがあります。

弁護士のアドバイスのもと、借主に相続人はいなかったので連帯保証人の相続人へ滞納家賃など、借主の債務を全て支払ってもらうことができました。実務上、相続人の特定など、非常に大変でしたが相続人への請求で解決したことがあり、実際に一番対処できる方法ともいえます。

③ 通知義務違反ということで賃貸借契約を解約する

賃貸借契約の内容によって異なるのですが、借主に通知義務を付帯した賃貸借契約があります。

・ 借主が破産した。
・ 借主が法人で会社更生法を申請した。
・ 連帯保証人がなくなった。

このような場合には、貸主に対して通知しなければいけないことを契約書に記載している場合があります。滞納してしまい、連帯保証人がなくなっていることを知った場合、通知義務違反として解約をしてもらう方法です。

ただし、実務上、通知義務違反による解約が有効なのかどうかによっては見解が異なります。

いくら契約書に記載していても、消費者契約法で貸主に不利な内容だととられてしまうと契約は無効になるので、必ずしも効果があるとはいえません。

しかし、通知義務違反を理由に借主への対抗手段が取れますので滞納解消への効果はあるでしょう。

まとめ

連帯保証人がなくなっていると借主が滞納者だった場合、管理会社には多大な労力がかかります。できれば、更新時に借主の状況に変化がないのかをきちんと管理会社が把握しておいた方がいいでしょう。

そうすることで、滞納がはじまって、はじめて連帯保証人がなくなっているといった事態は極力避けられます。

ただし、地域によっては更新料の考えがない地域もあるので、契約の更新による契約内容の確認という手間を無料で行わなければいけない可能性も考えなければいけません。連帯保証人は、貸主や管理会社にとってとても大切な存在です。万が一なくなっていたとすると、物件の債務を保証してくれる人がいなくなるということですのでしっかりと存在を確保しておきたいですよね。

万が一滞納がはじまったときに連帯保証人がなくなっていたら対処方法を参考にしてもらえると幸いです。

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