空室をすこしでも埋めようと繁忙期におこなう「入居促進キャンペーン」、成功することもあれば空振りにおわることもあります。
必ず成功する方法のないのが空室対策、しかし視点を変えると失敗例から学べることもあり、結果に一喜一憂せず失敗の原因を分析することが重要です。
ここでは割とありがちな失敗事例から、入居促進の考え方を紹介します。
失敗例から見る入居促進キャンペーン必勝法
【事例①】敷金0・前家賃0で失敗
空室対策としておこなう「入居キャンペーン」、敷金や礼金ときには入居時の日割り家賃や翌月家賃をゼロにするケースもあります。
入居希望が殺到し空室がすべて埋まることもあり、キャンペーンは大成功と喜ぶのは一時的なもので、数ヶ月もすると次のような失敗が明らかになります。
2. 生活スタイルが乱れており他の入居者とのトラブルが絶えない
3. 室内がゴミ屋敷状態になっている
入居時初期費用はできるだけ抑えたいと考えるのは誰にも共通の意識です。
そのため入居キャンペーンでは初期費用が安くなる方法を採用することが多いのですが、気をつけなければならない点があるのです。
入居者募集にあたって「申込みは先着順」であることです。
自社への申込みや外部に依頼して入居者を募集している場合を含めて、申込みは先着順で入居審査をおこないます。
管理会社に複数の申込みが直接あった場合は、1番手の申込み客と2番手以降の申込み客のスクリーニングは可能ですが、やはり先着順が基本です。
仲介会社からの申込みについては、1番手の申込み客の情報しかない状態で審査に入ることもあります。
入居初期費用の安い物件は、部屋探しをする人なら必ずチェックする条件ですが、属性的に弱い人ほど重視する条件であり、申込みすべき物件かどうかを検討するさいに、他の条件を無視して最優先される条件にもなってしまいます。
申込み客が多くいる場合でも先着順に審査するため、後順位の申込者にすごく属性のよい人がいても、先の申込者に決定してしまうことになるわけです。
つまり人気のある物件であっても、管理会社やオーナーは入居者を選ぶことができず、先着順で決まってしまう業界ルールによって、キャンペーン失敗を招くことがあるのです。
【事例②】リフォームしたのに失敗
古い物件にありがちなのが、リフォーム工事が失敗におわるケースです。
人気があるといわれるバストイレ別、ユニットバス、洗浄便座、室内洗濯機置場などのリフォームを実行しましたが、もともとスペースのない物件のため、かえって使いづらくなってしまったケースがあります。
空室期間の長い物件は次のようなレッテルを貼られることがあります。
・間取りが現代の生活スタイルに合わない
・キッチンやトイレなどの設備が旧式
そのためリフォームときには大々的なリノベーションをしようとするときにも、失敗の原因になる要素が隠れています。
・ターゲットになる客層をイメージしていない工事計画
このようなリフォーム工事は失敗に終わる可能性が高くなるのです。
コンセプトのないリフォームは失敗の元
空室対策としておこなうリフォームは退去後の修繕工事と意味が違ってきます。
ただ元のとおり新しくすればよいというものではありません。
なかなか入居者が決まらなかった住戸の原因を分析し、新しい客層を対象とした物件に一新させることです。
そのためには対象となる客層を具体的にイメージし、実現するデザイン・仕様・性能を明確にしてリフォーム業者に注文しなければなりません。
「今風にしてほしい」「客が気に入る部屋に変えてほしい」「なんでもいいから満室にしてほしい」などと、一方的に業者に要求するだけではリフォームを成功させることは難しいでしょう。
リフォーム業者は設計図や工事計画にもとづいて工事をおこなうのが仕事であり、漠然とした希望を伝えられても具体化することはできません。
工事内容をより具体的にするのはオーナーの役割であり、管理会社の役割でもあるのです。
【事例②】フリーレントで失敗
フリーレントは必ずしも入居者にとって嬉しいサービスとはいえません。
入居予定日の数ヶ月前には物件を決めておきたいというケース、たとえば3月末に入居したい新入学生が、年末のうちに部屋を決めておきたいという場合は有難いサービスです。
しかし途中退去した場合の違約金など、部屋探しの決め手としては重要な要素ではないという考え方もあります。
競合物件がフリーレントをおこなう時期に限っては、条件比較でふるい落とされないために必要な場合もありますが、一年中フリーレントを設定するのは見直したいキャンペーンです。
フリーレントは入居初期費用が少なくなりますが、礼金の設定が一般的な地域では礼金ゼロでも同じことになります。
礼金の設定がない場合は敷金ゼロでも初期費用の低減は可能です。
フリーレントが常態化すると収益性を悪化させること、そしてフリーレントは際限のないサービス競争に陥る可能性もあるのです。
仲介会社にとって客付の面では、フリーレントの方がしやすいのは当然です。
しかし仲介会社にはもうひとつ物件を優先的に紹介する要素があります。
仲介会社は部屋探し客の希望条件にあうなら、ADがある物件を優先するのが当然です。
さらにフリーレントがあるとなおさら勧めやすいわけです。
優先順位がADよりもフリーレントが優先されることは少なく、さらにフリーレントは入居初期費用が下がる分、属性の弱い客層が集まりやすく滞納などの新たなトラブルを抱え込む危険性もあるのです。
入居キャンペーンでは長期居住客を狙う
入居キャンペーンは必ず費用の負担があります。
・礼金ゼロであれば1ヶ月分の収入がゼロになる
・ADを増額するとその分が出費となる
・TVドアホンやアクセントクロスなどのリフォームオプションは工事代を出費する
なんらかの費用を負担して入居促進を図るのがキャンペーンです。
ようやく入居してくれた入居者が短期間で退去し、そのご2ヶ月~3ヶ月と空室になるのでは、さらに収益性が悪くなるのは必至といえるでしょう。
キャンペーンを実施するのであれば、長期に居住してくれる可能性のある入居者を選択するのが鉄則です。
1室を埋めるのに費やした費用を居住期間で割り返すと、2年間で退去されるのと5年間入居してもらえるのでは、費用対効果は2.5倍の違いがあります。10年間の長期居住になると5倍の違いがでるのです。
長期居住がいかに重要か明らかといえるでしょう。
では長期居住客に絞った入居促進が可能かというと、残念ながらこれも難しいことです。
勤務先や転居理由などから長期居住が期待できるケースはありますが、必ずそうなるとは限りません。
長期居住客を対象にした入居促進対策・・・それは長期居住者を優遇する “退去抑制策” 、退去を防ぐことが最善の空室対策となるのです。
まとめ
空室対策は必ず成功するものではありません。
条件が整わなかった場合には失敗におわることもあります。
大切なことは失敗だったとき、その原因を分析することです。
同じ対策であっても条件次第によって、成功と失敗の結果は分かれます。
・物件の状況や特性
・入居者属性の悪化
など失敗の原因となる一例をあげましたが、逆に成功する条件もあるわけです。
賃貸管理は試行錯誤をつづけるなかで、いかにノウハウを蓄積するかが重要なことといえるのです。