建替え・リフォームで仮住まいする場合の契約条件を解説

「仮住まい」として借りたいと希望されることがあります。

短期間の賃貸借なので断りたいのですが、断りにくい事情がある場合や、当分の間は入居が見込めないなど「仮住まい」としての利用を検討するにあたり、賃貸借条件をどのようにするのか考え方を紹介します。

仮住まいとは

賃貸借契約は一般的に2年~3年の契約期間を設定し、契約期間終了時には賃借人の希望により更新をおこなう、「普通借家契約」により賃貸借契約を締結します。

入居者は生活の拠点として住宅を求めているので、当然の方法といえます。

一方、「仮住まい」という形式により住宅を借りる需要もあります。

・自宅の建替えやリフォーム工事期間の住まいとして
・買い替えのために新しい住まいがみつかるまでの期間の仮住居として

以上のようなケースが考えられます。

契約期間は数ヶ月間が多く、長くても1年以内になることが一般的です。

しかし「仮」といっても生活の本拠となる住まいが別にあるわけでなく、仮住まいも生活の本拠であり、借地借家法の適用を受ける形式で賃貸借契約を締結することは当然です。

一方借地借家法の適用を受けない「一時使用目的の賃貸借契約」がありますが、この形式による契約は非常に限定的なものになります。

仮住まいを受ける条件

仮住まいを必要とする事情には上記のように2つのケースがありますが、大きな違いがあることに注意が必要です。

・工事期間中の仮住まい~仮住まい期間が確定できる
・買い替えのための仮住まい~仮住まい期間が確定できない

工事期間中の仮住まいは通常の賃貸借契約と異なり、居住期間が短く契約終了により、退去明渡しが確実におこなわれることがほとんどです。

そのためもっとも望ましい契約形式は「定期建物賃貸借契約」ですが、ときには工事が予定よりも遅れてしまい、契約終了日までに退去できないケースもあります。

仮住まい期間が確定できない買い替えの場合は、「定期建物賃貸借契約」ではむずかしい面があり、普通建物賃貸借契約によることになるでしょう。

賃貸人からの契約更新拒絶には正当事由が必要となるので、 “仮住まい” という言葉であっても臨時的なものではなく、通常の賃貸案件であることを理解しておく必要があります。

入居・退去の時期を考慮する

建築工事のための仮住まいでは、工事期間は明確に予定されています。

新しい入居者募集に支障のない期間内になるよう契約期間を考える必要があるでしょう。

たとえば契約終了が11月になる場合は、退去後は年明けの春まで新規入居が決められないこともあり、避けたいところです。また4月になってからの退去も同様に繁忙期を過ぎての退去になり、秋のシーズンまで空室期間が生まれてしまう可能性も高くなります。

仮住まいに対応できるケースとして望ましいのは、3月までの退去や9月までの退去など、新規入居者の募集に支障のない契約期間になる場合です。

それでも注意したいのは、工事予定が大幅に狂い、契約終了期を変更しなければならないときの取決めです。

いくつかのパターンが考えられますが、代表的なところでは下記の2つが挙げられます。

1. 工事の延期にともなう契約更新を特約条項に加える
2. 200㎡未満の定期借家契約では、賃借人からの途中解除は可能なので、余裕をもった契約期間を設定する

以上のように賃借人との協議により、互いに支障のない契約期間を定めるように考えます。

買い替えの場合は、新しい住まいがみつかるまでの仮住まいとなり、明確に期間を決められません。

したがって普通借家契約で契約することが自然であり、特に契約時期を考慮する必要はないといえるでしょう。

契約時金と家賃の設定

家賃設定は上記の契約期間との関係も考慮して決めなければなりません。

契約終了後、あまり時間をおかずに新規の入居者が見込める場合は、通常時の設定家賃の契約でもあまり支障はありません。

しかし上記のように、11月に退去し翌春までは新規入居が見込めないケースでは、家賃の割増しを考えたいものです。

さらに工事の遅れにより契約期間が延長する場合、延長期間の家賃設定もあらかじめ契約書に記載し、後々のトラブルが起きないようにする必要もあります。

契約時金については通常の賃貸借契約と同様、次の費用を設定することが多いと考えられます。

・敷金
・礼金
・前家賃

敷金は原状回復費用や家賃滞納に対する預かり金なので、契約期間の終了により返還される性格のものですから、短期間の賃貸借であっても通常どおり設定します。

礼金は短期契約による収益性の悪化を補填する目的で設定しても、借主の同意は得られると思われます。

また前家賃は賃貸借では当然のルールになっているので、これも問題なく通常どおりの方法でいいでしょう。

原状回復やリフォームの条件

借主の義務となる原状回復も、通常どおり契約条件に加えるのは当然です。

ただし、前入居者の退去後リフォーム工事をおこなっていないなど、劣化や汚損がそのままになっている物件の場合、現状のままで入居してもらい、原状回復義務を緩和するといった弾力的な運用が考えられます。

具体的には故意・過失・善管注意義務違反による原状回復義務を緩和するわけですが、緩和できない部分を限定的に指定し、退去時のトラブルを防ぐよう配慮する必要があります。

退去後きれいに原状回復された物件を仮住まいとして利用する場合、たとえ数ヶ月といえども生活臭が染みつくこともあります。わずかな汚れや傷が着くことは防ぎようがありません。

原状回復のガイドライン」では、通常の使用による損耗などの修繕費用は、賃料に含まれるとしています。

修繕工事後数ヶ月で退去する仮住まいでは、退去後に原状回復工事をおこなうか、多少の汚れはそのままにして新規入居者に対応するか、判断がむずかしいケースがでてくる可能性があります。

退去時にトラブルとならないように、原状回復に関する取決めを明確にしておく必要があるのです。

具体的には、万全を期すのであれば契約時にクリーニング費用等を明示しておき、汚損状況に関わらず清掃は行うこと、通常使用の範囲を逸脱する部分の原状回復費は別途請求となること、以上の2点を特約に記載しておくと、短期間の入居であっても原状回復費の確保がしやすくなります。

一時使用目的の賃貸借契約

借地借家法の適用を受けない「一時使用目的の賃貸借契約」による仮住まい契約について解説します。

「一時使用目的の賃貸借契約」は民法以外に適用される法律はありません。

また民法上でも明確な規定はなく自由に契約を締結することが可能です。

ただし借地借家法第40条に規定されるように、「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らか」である必要があり、短期間の一時使用が客観的に判断できる内容を、契約書に記載していなければなりません。

1. 居住期間
2. 目的
3. 用途
4. 賃借条件

単に契約書のタイトルに「一時使用目的の賃貸借契約」とする方法や、契約条項に「本契約は一時使用目的の賃貸借契約とする」と記載するだけでは不十分であるとされています。

居住期間に関しては延長や更新は不可能と考えた方がよく、期間を限定できる場合にだけ使用できる契約方法です。

目的としては次のようなケースがあります。

1. 別荘などの一時使用
2. 選挙期間中の選挙事務所
3. 期間が定まっている展示会などの使用
4. 工事従事者が工事期間中のみ利用する宿所

「一時使用目的の賃貸借契約」は、契約期間が変更される可能性のある場合、借地借家法第40条に抵触し「期限のない普通建物賃貸借」とみなされる場合があるので注意が必要です。

まとめ

仮住まい案件は、オーナーが知り合いから頼まれる場合や、ハウスメーカー・リフォーム会社から頼まれる場合もあります。

仮住まい専門の物件紹介サイトやマンスリーなど、対応している物件も多くなっていますが、通常の賃貸物件に相談がある場合もまだあります。

契約の形式は3種類です。

・普通借家契約
・定期借家契約
・一時使用目的の賃貸借契約

もっとも適する形式で契約を進めてください。

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