ウィルの売上・戦略は?2020-2Q

ウィルの成り立ち

株式会社ウィルの創業は1993年10月1日のことです。

現在本社がある宝塚市逆瀬川にて、知人社長所有のビルの2階に間借りしてのスタートでした。

1995年6月に株式会社ウィル不動産販売を設立し、創業以来中途入社人材に頼っていた方針を転換、新卒採用を開始します。]

内定式は全社員と内定者全員による「運動会」がおこなわれ、現在もつづく大事な社内行事となっています。

兵庫県内にて店舗展開し、不動産売買仲介や事業主物件の販売代理をおこなってきましたが、1999年に自社ブランドの分譲マンションと戸建住宅の企画開発に着手します。

2003年には中古住宅購入者を対象とした、オーダーメイドリフォーム事業を開始しました。

2005年3月には創業の地「宝塚市逆瀬川」に念願の自社ビルが完成、リフォーム事業を担う子会社株式会社ウィル空間デザインを含め、ウィルが目差した「住まい探しのための複合拠点」が実現します。

2007年2月、ジャスダック証券取引所に上場し、翌2008年社名を「株式会社ウィル」と変更、創業以来の「三つの意思(will)」を目差すのです。

しかし、同年9月にリーマンショックが発生し、同社も存亡の危機を迎えました。

2009年3月には有価証券報告書に「GC注記」が付くことになりましたが、なんとか倒産をまぬがれることができ、2010年には仲介手数料を値引きする「平日会員制度」をスタートさせ顧客からの指示を得ることとなります。

多角化した事業を専門特化させるため2011年からは、グループ企業となる子会社の設立をくり返し、さまざまなメディア戦略も実施します。

そして2015年12月には東京証券取引所第二部への変更を実現するのです。

現在は兵庫県および大阪府の関西圏に店舗網を構築しており、名古屋市の3店舗に加え中部圏9店舗体制を目差しています。

※参考文献
https://www.wills.co.jp/corp/history/

ウィル全体の売上と利益

直近3期の売上と営業利益は以下のとおりです。

ウィル,売上

営業所網の拡大に伴い売上が順調に伸びています。

営業利益は2018期に落ち込みがありますが、名古屋市進出に伴う先行投資などが影響したようです。

四半期ごとの業績では決算期が12月であり、4Qで大きな伸びをみせます。

ウィル,売上

ウィル,売上

利益率が大きく変動しますが、主要事業である3つのうち2つ「リフォーム」「開発分譲」の売上変動が大きいこと、および「流通」の利益率の変動が大きいことが原因と考えられます。

これらについては次項『セグメントごとの売上』で触れます。

「ウィル」セグメントごとの売上

ウィルの事業はウィル株式会社と連結子会社6社により構成されており、次の5つのセグメントになっています。

ただし賃貸事業は2019年からであり、2018年までは「受託販売」がありました。

1. 流通
2. リフォーム
3. 開発分譲
4. 賃貸(2018期までは受託販売)
5. 不動産取引派生

ウィル,売上

ウィル,売上

売上高においては「開発分譲事業」のウェイトが大きいですが、利益貢献度は「流通」「リフォーム」の両事業が牽引役といえるでしょう。

セグメントを四半期ごとにみていくと、四半期ごとの全体利益率の変動要因をつかむことができます。

ウィル,売上

売上高に関しては、開発分譲が4Qに大きく伸びる傾向になっています。

リフォームも4Qで同様の傾向がありますが、4Q19は落ち込みが見られ消費税アップの影響がでたものと考えられます。

ウィル,売上

四半期ごとの利益推移では「流通」「リフォーム」の利益変動は、売上高の変動よりも大きく、これも全体の利益率変動に影響していると考えられます。

またセグメント別四半期ごとの利益率をみると、さらに同社の利益率変動の大きさを把握できるでしょう。

ウィル,売上

ウィルの短期的な戦略

2020年1Qから2Qは新型コロナウィルス感染症の影響を受け、来店客減少により売上・利益とも前年比マイナス2割~3割の実績でしたが、現在はすでに持ち直しています。

2020年度中に、中部圏4店舗目となる新規店舗が計画されており、営業網拡大による売上増が見込まれています。

さらに流通事業の取扱件数増加を目的とし売却物件の獲得に注力しており、その結果が流通+リフォーム事業の収益面においてどの程度向上するかが注目されます。

開発分譲事業で注目されるのは「ウィルプロデュース物件」です。

関西圏で2ヶ所が公開中、3ヵ所が近日公開予定であり、2019年11月オープンした仁川清風台PRIMESの26区画、2020年1月オープンの伊丹池尻B-HOUSEの25区画は完売しています。

企画力が左右するプロデュース物件の成否は、今後の成長力の指標となると考えられます。

※参考文献
https://www.wills.co.jp/ir/database/pdf/N975.pdf

ウィルの長期的な戦略

人口減社会を迎えた我が国は現在、ストックビジネスへのシフトが必要とされています。

2019期末報告書にて明らかにした「中古住宅×リフォーム×FP」の増加は、まさにストックビジネスに対応するものであり、長期的には中枢事業となっていくことを期待したいところです。

現在は「開発分譲」事業が牽引する状況ですが、流通+リフォームの実績が大きく開発分譲を超えることが望ましいと考えらます。

ウィルが掲げる「ワンストップ体制」は、顧客のさまざまなライフステージに対応するためのサービス体制であり、その体制から生まれる成果はストックビジネスにおいてこそ発揮されるものといえるのです。

仲介業からスタートした同社の歩みは、地域密着型不動産業の典型ともいえ、学ぶところは多いのではと思います。

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