私の所属する朝日リビングは、一都三県に11営業所があり正社員は約120名、パートタイマーなど含めると300名規模の会社です。
私は2007年から管理職となり、年間の営業所成績1位を6度に渡り経験いたしました。
そして現在は、11営業所を任される「統括指導者」という立場になっております。
今回の記事では、管理職になりたての2007年度に経験した失敗例をご紹介します。
皆様の管理職としての方向性を模索するのにお役立てください。
管理職になって見えた現場の実態
まず、管理職になりたてだった頃、私の部下への主な印象は下記のようなものでした。
② 仕事が遅く、質と量ともに低い
今までは営業マンとしてお客様を相手にしていたのが、管理職になると自分の部下を相手にしなければなりません。
どういった業界でも成績が優秀だったからこそ役職があがっていくはずですから、管理職の皆様はおそらくお客様に対する観察眼が優秀だったに違いありません。
その観察眼により部下を見ていると、能力が透けてみえる様に感じられると思います。
その時の感じ方はさまざまかと思いますが、上記の二つは感じられることが多いのではないでしょうか。
私が所長になった当時、部下は10名いたのですが主要なメンバーは以下の4名でした。
Kさん 6つ下の後輩(新卒)
Nさん 1つ年上の後輩(中途)
Yさん 3つ年上の後輩(中途)
Sさんは安定して数字を残すアベレージ型なので、先輩という事もあり特にアドバイスなどないのですが、Kさん、Nさん、Yさんは私より社歴がなく、いろいろと指導が必要でした。
ここからは、一年目で失敗した4つの事例を経験談を踏まえながらお話ししたいと思います。
失敗1.自分が成功した手法を部下に行わせる
① 仕事の量を自分が行っていたレベルまで上げる
営業時代の自分と部下を比較し、仕事量が圧倒的に少ないことに愕然としました。
それ故に、そのような部下を率いた未来に不安を感じ、仕事量を増やすことを指導します。
② 仕事の質を高めるために、部下を教育する
さらに、部下の仕事内容一つ一つの質の悪さにも愕然とします。
これじゃお客様に伝わらない。
この質の部分についても細かく指導していきました。
③ それらの事を強制する
指導したものに対して、部下が行わない。
学ばない。
よって強制になります。
これらを実施していくと、さて、どうなったか・・・
→部下の不満がつのり失敗
・細かい
・いつも怒っている
などレッテルがはられ、部下との距離がとても遠くなりました。
この状況が営業所運営の大きな壁となっていきます。
私のイライラ感が営業所内を覆っていたので、所内はいつもピリピリした空気が張り詰めていました。
部下は私に叱られないよう緊張しながら仕事をしていたように思います。
失敗2.頑張った部下を特別扱いする
部下の中で、最も素質のある社員Kさんにトップセールスをとらせてあげたく、特別に指導や案件などを回し、トップセールスにさせる事に成功しました。
ある人物を特別扱いすることで、他の部下が「自分も特別扱いしてもらいたい」という風になるかと思い、見本となる人物を特別に成長させたのですが、
さてどうなったか・・・
→他の社員からの妬みや僻みなどがつのり悪循環に
失敗3.朝礼など全員の前で優秀な部下を褒める
まず、全員の前で叱るのはとても良くありません。
ある程度の規模の会社ですと、社内に表彰式があったりするかと思います。その表彰にあこがれて「自分も表彰されたい」と考えるのではないか・・・
その様なイメージで、全員の前で褒めたらとても良い効果が出るのでは?
さてどうなったか・・・
→他の社員からの妬みや僻みなどがつのり悪循環が加速
失敗4.背中をみせて部下の見本となる
背中を見せて部下を育てる・・・これは色々なビジネス本に書いてあります。
私はそれを実践するべく、部下と同行したり、契約に至るまでを見せたりと奔走しました。
出来る上司を見せれば、部下の成長を促進できるのでは・・・そう思いました。
さてどうなったか・・・
→自分と所長とではそもそもの能力が違うから真似できないです・・・
解説編
ここからは「4つの失敗」について、今だからこそわかる原因と解決策をお伝えしたいと思います。
失敗1.自分が成功した手法を部下に行わせる
例えば、プロ野球選手で三冠王をとった選手がいます。
その選手が監督になったら、全員三冠王にできるのか?違いますよね。
プロ野球の世界だと、小学生から中学生と同じような指導法で、同じようなバッティングフォームやピッチングフォームです。
それがプロ野球選手ともなればそれぞれ違います。
おそらく、彼らは自分自身の今までの経験を通じ、最も打ちやすく最も投げやすいフォームを身に着けたからこそ、プロで通用するのだと思います。
また、足の速い選手、守備の良い選手などそれぞれの長所を伸ばすことも重要でしょう。
営業マンそれぞれ長所が違います。
部下をよく観察し、その部下の長所を一緒に磨き上げていくのがマネジメントの極意になります。
失敗2.頑張った部下を特別扱いする
日本人は、右へならえ精神の強い民族です。
「出る杭は打たれる」ということわざ通り、特別扱いなどは妬みや僻みの対象になります。
そのような感情を抱くような行為を繰り返すと、離職の原因となっていきます。
部下を接するにあたり「平等」を基準としましょう。
部下にとって上司とは「親」に似たイメージを抱きます。
基本的にはこの「平等」を基準として、どうしても特別扱いしたい社員がいるとしたら、他にばれないようにしましょう。
失敗3.朝礼など全員の前で優秀な部下を褒める
人それぞれ価値基準は違います。
ご自身にそんなつもりはなくとも、相手によってさまざまな印象をもってしまう懸念があるのです。
そして、その印象には当然ネガティブなものが含まれます。
「自分はもっとすごい事をしているのに褒められない」
「アピールしているからまた褒められるんだ」
ここで「褒める」や「叱る」の伝え方ごとに、結果を一覧にしてみました。
部下を皆の前で叱る・・・・他の社員にも悪影響、部下が辞めます
部下をマンツーで叱る・・・叱るタイミングは即、呼び出して2人きりになってから叱る
部下を皆の前で褒める・・・他の部下にやや悪影響、褒められた部下が妬みの対象に
部下をマンツーで褒める・・2人きりで褒める。褒めた後に他の部下も褒める。
一対一(マンツー)は自分の為に上司が直接的に指導にあたり、上司が時間を割いてくれた特別感があるのと同時に、皆の前で発言することによる嫉妬心などを気にせずに、ある程度自由な表現で直接的に伝えられる良さがあります。
部下との接し方はこれが正解だと思います。
また、これは応用編ですが、褒めた後に他の部下を褒めることで、それが褒められた本人に間接的に伝わると、その部下にも良い影響を与えます。
人づてに評判を聞くのは誰しも嬉しいものです。
マンツーの時に最初に自分を褒められたから、他の社員の褒め言葉に妬みを抱かないのもこのマネジメント手法の良さです。
失敗4.背中をみせて部下の見本となる
そもそも、トップセールになっていますから「背中を見せる」というのは筋違い。
凄くて当たり前なので、それを見せても能力差を目の当たりにしてついて行けなくなるのでしょう。
マネジメント神髄は、「部下が自分で考え、成果を残したように誘う」です。
人に教えるのではなく、教わりたいという気持ち、向上心などを植え付けなければ部下は成長しません。
「責任は俺がとるから自由に思い切って仕事しようぜ」
この言葉は以前、自分の上司が言っていた言葉で、響いた言葉です。
営業マンは「言葉」で商売しております。
その「言葉」を巧みに駆使して部下と一丸になって戦うのです。
自分の感情だけの発言ではなく、部下を動かす「言葉」を使っていきましょう!
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