売買や賃貸市場で導入が進むホームステージングは、販売促進・Web反響率・内見率・成約率の面でその効果が評価されています。
日本の中古・賃貸不動産市場において、ホームステージングが行われるようになってまだ10年未満ですが、いまホームステージングは大きな変化をしようとしています。
物件内に家具などを実際持ち込まずに、バーチャル技術により同じ効果を生む手法が広まりつつあります。
ここではバーチャルホームステージングの現状と、今後の発展性についてお伝えします。
ホームステージングの変化
ホームステージングが不動産取引のマーケティング手法として、日本に根付いたのが2013年ころです。
そのごすこしずつ普及していきましたが、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大により大きな変化が起きています。
非対面・非接触が推奨され不動産物件の内覧・内見も、オンラインやバーチャル手法が採り入れられるようになりました。
ホームステージングは売買物件や賃貸物件の室内に、家具やインテリアグッズを配置し個性のない空室を演出し、成約率向上などのマーケティング効果を生むものです。
せっかくホームステージングをおこなった室内ですが、来場者がいなければ無意味なものになります。
しかし室内を写真撮影しWebページに掲載することにより反響率が高まるなど、ホームステージングは実際の内見者がいない場合でも効果があることがわかりました。
さらにホームステージングの手法はバーチャルでも可能になっていきます。
バーチャルホームステージングとは?
バーチャルホームステージングは実際に家具などを物件内に配置せず、CG技術によりホームステージングをした状態を画像としてつくり出す方法です。
最近リリースされた事例を紹介します。
画像データ1枚単位でのバーチャルホームステージングの依頼が可能なサービス
・世界82か国で利用されるバーチャルホームステージング
オーストラリアを拠点とする不動産テクノロジー会社BoxBrownie.comが日本市場に参入
・カリモク、コクヨ、Francfranc、日本フクラなど家具ブランド約40社が参画した家具シミュレーター
AIが間取りに合わせて家具の配置をおこない360度パノラマVR上に配置するサービス
・株式会社いい生活がバーチャルホームステージングの画像編集業務を開始
不動産DXを推進する上場企業「株式会社いい生活」が編集業務を受託するサービス
・石川県の不動産物件検索サイトを運営するクラスコが提供する「フォトステ」
不動産事業もおこなう株式会社クラスココンサルファームが提供するバーチャルホームステージングサービス
リアルよりバーチャルが優れている理由
実際に家具などの配置をおこなうホームステージングよりもバーチャルのほうが優れている面があります。
・時間が早い
・デザインのやり直しが簡単にできる
・画像データの再利用ができる
バーチャルホームステージングのCG技術は非常に優れており、リアル感はもちろんのことエンドユーザーにとっても、わざわざ物件を訪れて実感するよりも画像で捉えるほうが判断しやすいと言えるのです。
人間の五感による知覚の割合は視覚がもっとも多く、8割以上を占めると言います。
ほとんどの情報は視覚からであり、画像による情報で十分評価や判断が可能です。
今般の新型コロナウイルスは、リモートでも情報の収集と判断が可能であることを教えてくれました。
実際に家具を物件内に運び入れる必要もなく、家具の購入費やレンタル費用も不要でありコストはぐんと下がります。
アットホームもバーチャルホームステージングを提供
全国約57,000店以上が加盟するアットホームは加盟店向けに、360度パノラマに対応するバーチャルホームステージングサービスを提供しています。
同サービスには実際の物件に家具を配置するサービスもあり、会員店はリアルとバーチャルのどちらも選択可能で、売買・賃貸にかかわらずホームステージングの導入は活気づいていきそうです。
バーチャルホームステージングの編集業務は、実際には株式会社カラーアンドデコがアットホームより業務受託し行う流れになります。
カラーアンドデコは2019年7月4日設立ですが、代表者は2013年からホームステージング事業をおこなう株式会社ホームステージング・ジャパンのCOOが務めており、同社は2017年にはすでに360度3D-VR撮影サービスを導入し、バーチャルホームステージングの先駆けともいえる企業です。
高いデザイン力とCG技術力により、実物以上のリアリティを感じさせるバーチャルホームステージングが可能になると期待できそうです。
空間提供事業から空間創造企業へ
不動産業は住宅やオフィスなどの空間を提供する事業をおこなってきました。
しかし時代の流れとともに現代は「空間創造企業」へと、質的転換をしなければならない時期にあると思います。
1LDKや2LDKといった中に何もない空間を紹介してきたのがこれまでの仲介業の現場でした。
今後はその空間で繰り広げられるさまざまな体験や感動を、イメージとして伝えることにより、からっぽの空間に意味を持たせることができます。
ユーザーが感動できる空間を創造することが、これから求められる役割かもしれません。
お客さまが探している住まいの姿をイメージとして提案することこそ、バーチャルホームステージングの本質ではないかと思います。
重ねて言うならば、不動産仲介業は空いている物件や売りに出す物件と、理想的な住まいや店舗を探している人とのマッチングが仕事です。
しかしバーチャルホームステージングにより、空いた空間に命を吹き込む創造的な仕事に変化していくのではないでしょうか。
まとめ
内見・内覧もバーチャルでおこなえる環境が整っています。不動産契約も対面せずにリモートで可能になります。
不動産業界でのDX(デジタルトランスフォーメーション)は、さまざまなジャンルで一気に進む状況となりました。
ホームステージングも同様であり、リアルな手法よりもバーチャルな手法は、さらに変化していく可能性があり普及するスピードも早いのではと思われます。
ビジネスに係る技術や環境の変化は、ビジネスモデルさえも変化させることがあり、バーチャルホームステージングはその1つかもしれません。
・入居率の高い管理会社
バーチャルホームステージングにより、そのような評価の得られる会社に成長できるチャンスがあるとも言えそうです。
積極的な導入を図る機会の到来です。