現地確認や販売資料作成に欠かすことが出来ない住宅地図は、私たち不動産業者の必須アイテムです。
古くは印刷版ゼンリン地図が定番でしたが、最近は使い勝手や利便性からインターネット地図アプリの利用が増加しています。
数あるインターネット地図の中でも、基本的な住宅地図以外に「地番」や「用途地域」、簡易面積計算などの機能が使用できる宅地建物取引業者向けZENRIN_GISパッケージ不動産は使い勝手も良く、不動産業者にとって定番の地図アプリです。
基本パッケージにも様々な料金体系がありますが、1都道府県で月額¥11,000円/月(税込み)必要です。
さらに過去地図検索や台帳機能(条件検索・ラベル表示・CSVインポート機能)「学校区」「ハザード情報」「自治体ホームページリンク」など可視化や情報一元管理がおこなえるZENRIN_GISパッケージ不動産プレミアムになると月額¥22,000円/月(税込み)必要です。
私たち不動産業者は宅名だけではなく地番調査も必要ですから、そのような機能を兼ね備えているゼンリン地図は使い勝手も良く、定番になるのも頷けます。
秀逸な地図アプリであるということに異存はないのですが、ネックになるのがその料金です。
個人事業主や小規模不動産会社からすれば月々負担する経費も馬鹿になりません。
筆者は不動産コンサル業務をやっている関係上、依頼があれば日本全国どの地域でも不動産調査を行います。
その際に、調査エリアの都道府県でつどゼンリン地図を契約していてはとてもではありませんが経費倒れになります。
そこで今回ご紹介したいのが、無償で提供されている地図アプリの利用です。
無料の地図アプリですぐに思い浮かぶのは『Googleマップ』です。
歩いている感覚で近隣状況を視認できるストリートビューや指定場所まで誘導してくれるGPSナビ機能などの機能を有しており、日常的な使用においては使い勝手もよい地図アプリです。
ですが不動産調査や査定書作成などに使用する地図アプリとして考えた場合、同じく無料で提供されている国土地理院地図を使いこなせたほうがメリットも多くあります。
ただしどれか一つの地図アプリに固執するのではなく、無料で使用できる地図アプリを組み合わせ併用するのが正解です。
その中で国土地理院地図アプリは不動産業者にとって秀逸なシステムであるにも拘わらず、その有用性については知る人ぞ知るといった状態であるのは勿体ないことです。
今回は不動産プロが好んで使用する、国土地理院地図について解説します。
国土地理院地図へアクセス
国土地理院地図は、国土交通省の特別機関として測量法に基づき測量行政をおこなう国土地理院が、常に情報を刷新して管理・公開している地図ですから、その精度についてはお墨付きです。
不動産業者でも使いこなしている方が少ない地理院地図ですので、基本的な各機能や使用方法を一から解説します。
1.地理院地図/GIS_MAPsに下記URLからアクセスする。
まず、下記URLからアクセスしてください。
広域地図が表示されます。
調査したい当該地までは地図の中心である十字マークを目安に拡大していくだけですので、説明は不要でしょう。
拡大していけば地図の左下に標高が連動して表示されます。
一般的な調査で必要な情報ではありませんが、覚えておくと良いでしょう。
ツールを使いこなす
地理院地図の機能は地図上の右上にあるツールをクリックすると作図や計測などの機能が使用できるボックスが開きます。
使い勝手がよい機能についてそれぞれ解説していきます。
1. 作図・ファイル
地図上に点・線・面などを作図する機能です。
具体的にはマーカーの設置・円形マーカー・多角形・円マーカーの追加・テキストの追加などをおこなうことができます。
簡単なメモや、資料作成時のコメントなどが地図上に入力できる機能です。
2. 計測
私たち不動産業者にもっとも使えるのが、この計測機能です。
調査地から最寄り駅までの距離や、主たる施設までの距離が計測できます。
地図拡大の兼ね合いはありますが、おおよその敷地面積を確認することもできます。
3. 断面図
あまり使用することのない機能ですが、任意の始点と終点を指定し、断面的に標高差を計測して表示する機能です。
具体的には、調査地が高台などの場合で最寄りのバス停から当該地までの距離と併せて標高差によるおおよその勾配などを確認するために利用できる機能です。
4. 並べて比較
広域地図を確認しながら、縮尺の異なる地図を表示してツールを使用する場合に利用します。
販売資料や不動産調査資料を作成する場合には、視覚的に表示しやすいといった特徴があります。
5. 重ねて比較
2つの地図の境界を重ねて表示する機能ですが、不動産調査ではほとんど使用することがない機能です。
6.3D
任意の範囲を指定して、その起伏を表示する機能です。
調査地が高台などの場合にはその起伏を視覚的に表示するのに有効です。
専門性の高い機能ですが、査定書などで他社と差別化を図りたい場合には利用したい機能の一つです。
表示されたデータはSTL(色をつけられない3Dプリント用データ)のほか、VRML(フルカラー3Dプリントデータ)やWebGL(表示されている、全方位に回転できる状態のデータ)の3方式でダウンロードすることができます。
6. Globe
土地の起伏を地球儀で表示する機能ですが、広域表示した場合以外にほとんど使用することがない機能です。
7. その他
断面図と同様に、他社と差別化して提案書などを作成するのに適している機能です。
ツールボックスの「その他」をクリックすると下記のような専用ボックスが開きます。
開かれている状態の地図に、それぞれ追加情報を表記することができる機能です。
磁北線
地図は上が北方向を指しますが、実際の方位磁石による計測とは振れ幅があります。
この正式な方位を磁北線といいますが、この振れ幅を地図上に表示します。
等距圏
指定した地点から等距離にある場所を表示します。
等距圏の範囲(円の間隔)は自由に設定することができ、メートル・キロのどちらでも表示することができます。
物件から1キロ圏内の商業施設を視認させるなど、資料作りに役立つ機能です。
方位線
指定した地点の方位を表示する機能です。
地図表記における方位ですが、さきほどご紹介した磁北線の振れ幅を組み合わせることで、真北方向や真東方向などを確認することもできます。
その他地図
「いつもNAVI」「Mapion」の2種類の地図アプリと連動させる機能で、地理院地図で表示されている地図をそれらの形式で表示させることができます。
住居表示のほかビル名などを確認するのに使用します。
uPlace
地図上中心位置の緯度・経度のほか地図コード(場所情報コード)などが文字で表示される機能です。
外部タイル
地理院地図以外の外部タイルデータを呼び出し(URLなど)表示する機能です。
まとめ
今回は専門的な調査が可能であるにも拘わらず、一部の不動産プロ以外に利用されていない地理院地図を紹介しました。
記事をお読みいただけばご理解いただけるとおり、地図機能以外に使用できる標高差や距離の測定の他にも面積計算や等距離表示など、私たち不動産業者が専門知識にもとづき資料作成などを行う場合には非常に使い勝手の良い地図アプリです。
これだけの機能を有しているのに、おおもとが国土交通省であることから他の無料アプリのように広告が表示されることもなく登録も不要ですから、使わない選択肢が見当たりません。
この地理院地図にGoogleマップや地方自治体で公開しているハザードマップのほか用途図と組み合わせ、不動産登記情報サービスの機能として使用できる住所地番対照機能を使用すれば、実務面においてはZENRIN_GISパッケージを使用しなくても、必要な情報は全て入手することができます。
一つで必要な情報を入手できる有償の地図アプリは確かに便利ですが、組み合わせや創意工夫で余計な経費を使用しなくてもそれ以上の調査が可能なことは理解しておいた方が良いでしょう。
顧客の理解が深まる資料は、結局のところ作成し提案する私たち不動産業者の創意工夫や伝えたい情報が漏れなく表現されているものだからです。