【住宅市場動向調査】から読み解く、変化する中古住宅の選択基準

毎年、国土交通省が新築・中古・賃貸の市場動向をアンケート方式による回答結果を、詳細にデータ化して公表している「住宅市場動向調査」は、ページ数が400Pを超えるボリュームでその検証に労力を要しますが、私たち不動産業者にとって顧客動向の変化を読み取り販売戦略を立案することは大切であり、そのような意味合いからも有効に利用できる情報の宝庫です。

下記URLから確認することができますので、不動産業者である皆様は目を通しておいたほうが良いでしょう。

https://www.mlit.go.jp/common/001401319.pdf

とはいえこのようなボリュームのある資料を読み込むのは、忍耐もいりますし時間的な余裕も必要です。

また「住宅市場動向調査」は、あくまでもデータを公開しているのに過ぎませんので、内容の検証までおこなっていません。

大切なのは数字の変化から、時代の趨勢も併せなぜそのような変化が生じているのかを検証することです。

顧客動向の変化、つまり購入動機や物件選択基準などを把握することにより、営業の説得力も増しますし、またアプローチブックの裏付け資料や、査定時に提示する価格算出根拠としても利用することができます。

どのようなデータを重視するかは皆様が手掛ける不動産業務によりことなりますが、今回の記事では中古市場を中心として、顧客が不動産を選ぶ基準の変化にスポットをあて解説します。

情報収集はインターネットに切り替わった!!

不動産を販売する場合においての広告の重要性は、いまさら論じる必要はないかと思いますが、顧客動向の変化を読み取り広告媒体先を検討することは、費用対効果から考えても大切なことです。

そのような観点からデータを見ると、物件情報の収集方法の変化に着目できます。

平成30年以前は、圧倒的に私たち不動産業者が提示する「販売資料」が顧客の主な情報源でした。

下記のグラフを見てもわかる通り平成29年度51.6% 平成30年度45.2%ですが、令和元年を境としてインターネットが上回り、令和2年には不動産業者からの情報収集が38.5%まで下がりました。

この傾向は、今後さらに進んでいくと予測されます。

中古,不動産,選ばれる

従来であれば顧客との人間関係を構築して抱え込み、業者が選定し提示した資料を中心として購入する「業者主導型」でした。

この手法には顧客の希望内容を詳細に聞き取り、予算や年収・必要条件を加味して物件提案できたことから、プロ目線で問題のある物件を除外するなど顧客にとっても安心して不動産を購入することにもメリットがありました。

ですが今後は顧客が自由にインターネットで検索し、興味のある物件があれば連絡して内覧し、判断するといった傾向が高まっていくでしょう。

ある意味ではドライであり、別の意味では合理的な変化です。

今後の不動産営業はこのような顧客動向を理解した上で、どのようにアプローチを継続していくかを考えなければなりません。

中古住宅を選ぶ理由も変化している

中古住宅の購入を検討する場合に優先する項目は「校区などの地域」「設備やデザイン」などが従来は重視されていましたが、平成28年以降は「価格」がトップに躍り出ました。

この傾向は年を追うごとに増加しており、中古戸建では65.4%に及ぶなどその傾向が顕著になってきています。

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私自身も経験がありますが、「○○小学校校区限定で、それ以外は検討しません」と言っていた顧客が、まったく校区違いの中古物件を購入しているケースです。

その後、機会があり「購入された物件は校区が違うのでは?」と質問すると「校区限定で探すと物件があっても予算が合わず、校区違いだけど手ごろな価格の物件があったのでそちらを購入しました」とのこと。

生真面目な不動産営業マンほど顧客の希望する「良い物件」を探そうと頑張るのですが、市場相場と希望予算を度外視して物件を探しても、そんな物件が出てくる道理はありません。

「あなたの予算では、そのエリアで購入はできません」との趣旨を、やんわりと伝えて現実を直視してもらい、価格重視で物件を探すほうが成約率も高まるでしょう。

ウッドショックによる建築資材の高騰を受け新築住宅(マンション含む)が価格上昇していることは皆様ご存じかと思いますが、それに合わせて中古市場も値を上げています。

その傾向により、中古住宅の設備等にたいする選択にも変化が表れています。

それが間取りやデザインよりも、「広さ」を重視する傾向です。

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この傾向は令和元年から現れています。

つまり住宅価格が総体的に上昇したことにより、「購入できる予算の範囲内でより広い住宅」を選択するといった指向性の変化です。

端的に言えば、リフォーム工事などにより間仕切りやデザインは変更できるので、まずは広さを確保したいという志向性の変化でしょうか。

また比較的若い世代を中心に、「新築住宅にこだわらない」といった理由で中古住宅を選ぶ購入層も増加しています。

中古,不動産,選ばれる実際に「新築にこだわらなかったから」という中古住宅購入理由が、微増ではありますが上昇を続けています。

伸び悩むインスペクション

中古市場の安全性を高め、流通活性化の切り札ともいえる「インスペクション」ですが、認知度がほとんど増加していません。

いまだに「知らない」との回答が過半数を上回っています。

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個人的には売主の費用負担で実施し、現況状況を検査するのは有用であると考えていますが、やはり費用の拠出も問題もありなかなか浸透していません。

データを見ても中古戸建ては微増していますが、中古マンションにおいては売主負担のインスペクションが減少し、逆に買主負担による実施が増加している傾向が見て取れます。

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まとめ

今回の記事では、膨大なデータの中から中古住宅の選定基準等に関してのみをピックアップして記事にしました。

「住宅市場動向調査」で公開されているデータは、これ以外にも融資の借入金利動向や融資先の選定、購入者の平均年収や自己資金比率など、私たち不動産業界の人間にとっては有益な情報が公開されています。

それらのデータについても、今後、機会があれば解析してお伝えしていきたいと思っています。

時代により変化する顧客動向をいち早く読み取ってお届けすることにより、皆様の業務に参考となれば幸いです。

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