空き家対策に欠かせない「空き家活用」、空き家所有者の多くが空き家対策として不動産会社への相談を望んでいる実態が明らかになり、不動産会社が空き家問題へどのように係わっていくかが問われそうです。
ここでは空き家所有者への意識調査からみえた、不動産業者への相談ニーズに対してどのような対応を現在しているのか、今後どのような姿勢が必要なのか考察します。
空き家所有者の意識
空家等対策の推進に関する特別措置法が成立し、空き家所有者が「解体」を検討することも多く、解体工事に関心が持たれる傾向が強くなってきました。
そのような社会状況のなか、解体工事業者のコンシェルジュサービスをおこなう民間企業が、空き家所有者を対象にした意識調査をおこないました。
調査結果はプレスリリースとして公表され「PR Times」から出されています。→「空き家所有者・意識調査」~利用しない空き家保有者の実態とは~
調査の結果から特筆すべきポイントをあげてみます。
2. 空き家のままになっている理由として「特に困っていない」がもっとも多い
3. 次に多いのが「処分に費用がかかる」となっている
4. 空き家に訪れる頻度は「半年に1回程度以下」が6割を超える
5. 建物のどこかに腐食や破損があるとの答えが6割を超える
6. 空き家に対しての心配としては「空き家による弊害」が7割を超える
以上のような結果となっていますが、プレスリリース本文では「空き家のままにしている理由」について回答があった項目を次の3つのグループに分けて集計しています。
2. 使い道がないグループ
3. 活用方針はあるが難航しているグループ
これら3つのグループに分類して空き家の対処を検討し始めるきっかけを集計したところ、どのグループにおいても上位3位までに「不動産業者に相談できる」ことをあげており、空き家所有者と不動産業者との結びつきが空き家対処の重要な課題であることが明確になりました。
不動産業者と空き家所有者とのマッチング
空き家所有者が不動産業者に相談したいと望むテーマとはどのようなことでしょうか。
・売却する方法
・維持管理する方法
空き家の活用や売却は不動産会社の本来の仕事といえ、維持管理は建物管理に付随した仕事です。
不動産会社に相談したいといった意識が高いことは頷けることです。
不動産会社はこれら、活用・売却・管理についてのソリューション提供を準備し、そして空き家所有者は抱える課題を解決できる事業者を見つけるプラットフォームを求めています。
空き家プラットフォームの類型
空き家所有者を対象としたプラットフォームとしては、現在次のようなWebサイトがあります。
・定期借家と借主負担リノベーション・サブリースを組み合わせた新しい賃貸ニーズの創出(カリアゲJAPAN)
・空き家を購入・リノベーションし外国人や高齢者などの「住宅確保要配慮者」を対象とした低廉家賃の住宅供給(Rennovater)
・格安価格による売却や賃貸により、買主や借主が自由に活用を図ることを提案(空き家ゲートウェイ)
・賃貸物件として使用可能な状態の物件を対象にして、柔軟な賃貸条件設定により利用者を募集(空き家マンスリーネット、ADDress)
・空き家所有者と空き家ビジネス事業者と投資家を結びつけるマッチング(ハロー!RENOVATION)
今後期待したいプラットフォーム
空き家活用の動きが大きなうねりになっていくと、さまざまな試みが生まれてくるでしょう。
今後期待されるプラットフォームを予想してみます。
・空き家活用のアイデアを所有者と不動産会社そして投資家がWeb上でできるコミュニケーションサイト
・空き家の売り手と買い手、貸し手と借り手を直接結びつけ、取り引き条件をまとめるコーディネートサイト
・物件ごとにリノベーションと活用プランを競い合うコンペティションサイト
・空き家管理の効率化を図る管理事業者と空き家所有者のネットワーク
所有者も積極的に参加できるプラットフォームが増加し、業者任せではなく所有者がみずから対策を考え決定する仕組みが用意される可能性も高いでしょう。
空き家活用のためのクラウドファンディングも充実し、所有者と不動産会社がより強いパートナーシップにより結びつく可能性もでてきます。
空き家資源と利用者のマッチング
空き家を「資源」と捉えた場合、必要なのは資源を利用する「人」をどのように発掘するかです。
現在その役割の一旦を「空き家バンク」が担っており、利用を考える人がバンクに掲載された物件のなかから希望に合いそうな物件を探すことが可能になっています。
空き家バンクは自治体独自が運営するサイトに加え、全国版の空き家バンクが2つの事業者により運営されています。
全国版空き家バンクには自治体運営の空き家バンクに掲載された物件の登録や、空き家バンクを運営していない自治体でも物件掲載が可能であり、空き家対策が課題となっている自治体に対する支援にも役立っていると言えるでしょう。
空き家バンクにおける不動産会社の役割は「仲介業者」としての立場ですが、利用を検討する人にとっては事業プランの提案や、事業のプロデューサーとしての役割も求められると考えられます。
空き家の取り引きは一般的な仲介物件と異なり居住用途だけではありません。
活用方法や事業プランがより具体性のあるものでなければ簡単に成立しません。
物件概要に加えて活用方法をまとめるためには、マーケティングリサーチに必要なデータ提供も重要です。
・エリアの産業構造
・交通事情
・気候や自然環境
・商圏特性
など提供できるデータをできるだけ多く掲載するか、詳細データを別途送付やダウンロードできるなど、空き家バンク利用者とのマッチングも考慮した情報発信が大切です。
まとめ
空き家対策は所有者にとって大きな悩みになることもあります。
また全国的にも社会問題となっており、国をあげての課題ともなっています。
その解決には空き家の有効活用を図る施策が必要で、空き家バンクはそのためのツールとも言えるでしょう。
空き家を活用しようとするユーザーの目的と、その目的に合致する物件を的確に結びつけるマッチングに、不動産会社がはたす役割は大きなものです。
単に仲介業者としての立場を超えて、空き家を活用したビジネスプロデューサーとしての役割を認識しなければならないでしょう。