令和4年3月22日に地価公示価格が公表されました。
公示価格についての価格変動の動向等については新聞やインターネットの記事で多数、見受けられますので詳細な解説等はコラムでおこないません。
ただし総括的な意味として、全国的に住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。
国土交通省によれば、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に緩和される中で、全国的な回復傾向が顕著になったのではないかと分析されています。
とくに価格の上昇が著しい住宅地の特徴としては、交通利便性等に優れた都市中心部の希少性が高いエリアであるとしつつも、ライフスタイルの変化により需要者ニーズが多様化し、希少地の周辺部も上昇拡大の影響が及んでいる傾向が顕著であるのも近年の傾向であると分析しています。
ご存じのように公示価格は「地価公示法」により、厳格に方法や手順が定められています。
具体的には国土交通省土地鑑定委員会が、一般土地の取引指標価格にするために毎年1月1日時点の1㎡当たりの正常な価格判定をすることを目的としての地価調査ですが、実際に調査実務をおこなうのは全国で166分科会に所属する2,348人の不動産鑑定士です。
これら鑑定士は全国26,000地点について選定及び確認を実施し、その結果を分科会等における議論を実施し、その後、鑑定評価に基づき公示価格が決定されています。
もっともこれらは不動産業に従事する皆様ならご存じのことだと思います。
ですが実際に公示価格を利用して「査定書」や「企画提案書」を作成するには、このような表面情報では少し足りません。
今回は国土交通省の公表データリンク先の紹介と併せて、顧客に提案する際に利用すれば、一味違うと感心される日経ビジュアルデータについて解説します。
国土交通省の情報公開先
単純に各都道府県の公示価格を知りたいだけであれば下記のURLからリンクして、国土交通省地価公示・都道府県地価調査システムにより該当地域を調査すれば良いでしょう。
https://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=0&TYP=0
ただ当該地の公示価格を知るだけではなく、プロである不動産業者としては全国的な価格の変動状況やその理由等についての知見を広げる意味でも国土交通省による国土交通省地価公示・都道府県地価調査には目を通しておきたいものです。
公示価格の概要は下記のリンク先から確認できます。
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000043.html
ご紹介したページからは概要の他、変動率及び平均価格の時系列推移表データをエクセル形式で入手することができます。
これら昭和50年から当該年度までの価格変動や平均価格の時系列推移表の基データを入手して必要な部分を抽出し、データを加工してグラフを作成するなどの活用をすれば、提案資料やレポートも一味違った説得力のある内容になるでしょう。
不動産の営業スタイルは変化していることを理解する
顧客に査定書や企画提案書を提示して交渉に挑むのは、広義にプレゼンテーションであるともいえます。
たとえ査定価格に妥当性があっても、顧客が納得しなければ行動に変化を及ぼすことはできません。
顧客の納得を得るためには説得力が必要ですが、そのためには話に具体性をもたせることが重要です。
そしてそれら主張の根拠としてデータ(数値)を提示する方法は有効で、かつ一目で理解できるようなビジュアルとして視覚化された情報提供は、更に説得力が増します。
立板に水で、何の準備もせず「口」だけで顧客を納得させようと考えるのは旧態依然の営業手法であり、夜討ち朝駆け営業のように、そのような長時間に亘るクロージングなどを有難がる顧客は現在においてはほぼ存在していないと言ってよいでしょう。
はっきりと言えば「嫌われるだけの営業スタイル」です。
もちろん営業ですから、トークを無下にしろと言う意味ではありません。
ただし説明をしながらも数字で意味を補足し、ビジュアルにより説得力を増す。
このスタイルこそが、これからの不動産業者に必要な営業スタイルではないでしょうか?
顧客にとって重要な財産である不動産を任せてもらうには信頼してもらうことが大切ですが一括査定システムのように、1件の顧客情報が登録会社に一斉に配信されるような場合はもちろんのこと、そうではなくても自社だけに査定や相談依頼が入っていると安易に考えるのは危険で、常に「競合が存在」していると考えておく必要があります。
最近では査定システムについても秀逸なものが多く、必要事項を入力すれば頭を悩まさなくても、査定額を算出してくれます。
ただし査定システムが入力しやすい、つまり入力項目が少なく簡略化されているほどに査定額は一律となり、反対に正確な査定金額を算出しようとすれば結果的に詳細な情報を入力しなければなりません。
そのようなシステムに依存した代わり映えのない査定書等を、懸命に口頭で補足して顧客の信用を得ようとしても難しいのではないのでしょうか?
日経ビジュアルデータで視覚的に価格変動率を確認する
これまで解説したように、不動産のプロである以上は新聞などの情報を、そのまま顧客に提供するのは素人のようで気恥ずかしくなりますから、少なくても国土交通省で提供されている資料を体裁よく加工するなどして提案するようには心がけたいものです。
以前にもコラムでご紹介したこともある日経ビジュアルマップですが、下記のURLから令和4年の公示価格データを視覚化した3Dデータが新たに公開されましたので紹介いたします。
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/land-value-map/
地図を開くと3D地図が展開されます。
ctrlキーを押したままマウスをドラッグすることにより「グリグリ」と上下左右、3D地図としての機能を存分に活用できます。
また地図は1983年(昭和58年)からのデータを取り込んで展開されていますので、年度ごとに変動していく地価動向を視覚的に確認できます。
当該地の地価変動状況をパソコンで顧客に示しながら、変動要因や今後の予測などを説明をするのにも利用できるでしょう。
解説するまでもないかとは思いますが、地図上に表示される棒状のカラフルなバーは、下記のように前年対比の地価変動率を表しています。
また3Dでは見えづらい場合、左下にあるボタンにより3Dから2Dへ切り替えができます。
まとめ
今回は公示価格公表に併せ、顧客にたいする提案資料等を作成する場合において「ひと味違う」資料にするための情報について紹介を行いました。
取り上げた例によらず、その気になって探せば査定書や企画書に流用できる情報は無数とも言えるほどにインターネット上で公開されています。
つまり顧客に対し説得力のある資料を作成するための情報を「探そうとするかどうか」だけのことかも知れません。
もっとも通常業務が多忙である場合や、事務所で情報検索をしていると「そのような時間など無駄だ」と上席から叱責を受けることもあるでしょうから、企業に属している状況で情報検索に時間を割くのは難しいのかもしれません。
そのような場合において「不動産会社のミカタ」のように最新情報や有益な知識を発信する業界専門サイト等は、手軽に入手できる最新情報の宝庫と言えますから欠かさずにチェックすると良いでしょう。
ただし、そのようにして得た有益な情報やデータをどのように活用するかは皆様次第です。
何よりも重要なのは「学ぶ」と同時に自ら「考える」ことですから。