【荷物の処分が売却条件】ところで処分費用はご存知ですか?

近隣に影響を及ぼす放置空家や土地など、それらを減少させる対策として相続や移転時の登記が義務化されます。

すでに令和3年12月14日に閣議決定され、令和6(2024年)年4月1日から施工される予定となっていますが、不動産情報サイトや政府広報などの効果もあり認知度も徐々に高まっています。

具体的に利用する目処もなく、登記を怠れば罰則が適用されるとなれば、いっそ売却してしまおうと親族会議を開くケースも増加しているようです。

全国的に値上がり傾向が続く不動産市況ですが、売り手市場でありながらも管理されず放置されている家や土地は、地方の場合では売却すれば赤字になるようなケースもあるほか、相続人の間で折り合いがつかず揉めているなど様々な理由があります。

筆者は不動産コンサルでそのような相談に数多く対応していますが、相続不動産の場合には売却価格(査定額)の優劣より「手間がかからず相場程度で売れれば……」といった、面倒なことは避け、相場の金額で売却できれば良いという思いが強いように感じています。

相続トラブルや物件が遠方であるなどの理由で放置されている住宅は、ほとんどが適切な管理もされていない状態ですので、窓が締め切られたまま家屋も相応に傷んでいる場合も多く、型番の古い生活家電や布団なども放置され印象が良いとはいえません。

販売計画を練るにもリノベーションを実施して中古住宅として販売するか、解体して更地にするか悩むケースが多いものです。

いずれにしても有利に売り抜けるためにひと手間必要とされるのですが、相続人はできれば手間を掛けたくないという意向が強く、リノベーションを施して販売すれば手取り金額の増加が見込めると説明をしても、工事費用が持ち出しになる点などが引っかかるのか好感触が得られないケースがほとんどです。

売却に同意が得られても、「条件としてゴミの処分をお願いできないか」と言われることも多く、手間を掛けたくないという意向が強いのも特徴です。

そこで相談当初から、ゴミ処分も含め可能な限り相続人の手を煩わせない形で提案をすれば、売却や買い取り交渉が有利に進めることが出来るといった傾向があります。

このような業務を数多く手掛けていれば話は別でしょうが、残置物の処分についてご存じない場合には、処分費用についてどの程度を見込んでおけばよいのか分かりません。

そこで今回は、残置物の処分等について解説したいと思います。

業者に丸投げならラクだが……

処分代行業者に「丸投げ」で依頼すれば自ら動く必要もありません。

この選択は楽なのですが、言うまでもなく処分費は割高になります。

業者に依頼して産業廃棄物とした場合、処分費は4トンダンプ一台で約8万円前後が目安です。

分別を行い一般廃棄物として、直接、処分場に持ち込んだ場合と比較すれば、ほぼ「倍」の金額です。

自治体や取扱区分により処分費は異なりますが、一般廃棄物処理手数料は10kgあたり100~200円といったところですが、産業廃棄物の場合は200~400円になります。

この金額はごみ処理場に支払う処分費だけですから、さらに重機損料や燃料費・人件費などが加算され、見積もりを取得すればなかなかの金額になります。

所有者が処分費を負担してくれるのであれば、労力を用いず業者に「丸投げ」でも良いのですが、「ゴミ処分も全てやってくれるのであれば」と売却同意を得て買い取る場合や、売却(仲介)に応じてもらった場合には経費の出どころがありません。

そうなれば「安い」に越したことはないでしょう。

自ら動く手間は必要ですが、トラックをリースして必要に応じ社員に手伝いを依頼すれば、業者見積の「半額以下」で収めることも充分に可能だからです。

動くことをためらわないのなら、自治体のごみ処理施設に直接持ち込むのが一番安上がりであることは間違いないでしょう。

自治体ごとの詳しい処分費を知りたい場合には、予め持ち込み先の処分場に連絡をするかインターネットで検索しておくと良いでしょう。

不法投棄は厳禁!廃棄物処分の法律を甘く見ないこと

商店や飲食店、事務所や事業所から出るゴミは事業者が自己の責任で適正に処分するよう法律に定められています。

この場合における事業者とは、労働安全衛生法第2条第3号で定められている「事業を行うもので、労働者を使用するもの」とされており、法人企業であれば当該法人(法人の代表者ではありません)、個人企業では事業経営主を指すとされており、労働者の使用によらず私達、不動産業者は原則としては事業者に定義されます。

事務所等から出るゴミではありませんが、業務に関して排出されるものですから広義には産業廃棄物として処分する必要があるのでしょう。

もっとも費用を安く上げるため自ら動くのですから、「あくまでも知人の家の清掃を手伝っている」と思い込みましょう(原則から外れていますので、あくまでも自己責任として)

処分場で「産廃ですか?」と質問されたら、「いえ、引っ越し荷物の処分です」と言えばすんなりと通してくれます。

依頼者が多少なり処分費を支払ってくれる場合、手間賃を上乗せして依頼者に請求するかどうか別として、処分費が安くなって怒る方はいませんから、労働を厭わないのであれば直接、処分場に持ち込むのはオススメです。

注意点として、処分場に直接持ち込む場合には可燃ごみ・資源ごみ・埋立ゴミに予め分類しておき、トラック等への載せ方も工夫しておきましょう。

またエアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機(乾燥機含む)のいわゆる家電4品目は、所有者に責任のある家電リサイクル品とされます。

「家電リサイクル法」に定められた方法で処理をしなければならず、「リサイクル料金」「収集運搬料金」が必要とされます。

家電リサイクル法

家電リサイクルは許可が必要ですので、代理で処分することは認められていません。

不法投棄でとくに家電製品が多いとされている理由が、無許可であるのに処分を引き受けているからです。

不法投棄は割にあいません。

個人の不法投棄にたいしては「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方(廃棄物法第25条 第1項第14号)」、法人の場合には「3億円以下の罰金刑(廃棄物法第32条 第1項1号)」と大変、厳しい罰則があるからです。

また不法投棄することを目的として収集・運搬をしただけで「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方(廃棄物法第26条 第6号)」が適用されますから、「手伝っただけ」などの言い訳も通用しません。

家電については処分場でも受け入れてはくれませんので、事前に所有者から家電取扱店などに引取依頼を連絡して処分してもらうのが一番ですが、引取先がない場合などにおいては製造したメーカーを調べてから郵便局で必要な額面のリサイクル券を購入し、指定引取場所へ持参すれば処分することが可能です。

処分場への持ち込みルール

処分場の入り口では「ゴミ搬入申込書」が必要とされます。

各処理施設の計量所で用紙をもらい記載しても良いのですが、自治体によってはホームページ等でダウンロードできる場合もありますから、事前に入手して記載しておけば余計な手間を省くことができます。

ゴミ搬入申込書

ゴミの重量については行き(受付時)と帰り(精算時)に車両ごと重さを量り、重量差に応じた処理手数料(通常は現金のみ)を帰りに支払います。

行きと帰り、同じ人が受付に行かなければ体重差が重量差として計測されてしまうので、細かい話ではありますが注意しましょう。

後は職員の指示に従い、可燃ごみ・資源ごみ・埋立ゴミなど処理方法の異なる処理施設でゴミを降ろすだけです。

載せ方と降ろす順番を吟味しておくと効率が良いでしょう。

注意点としては、処理場内にガラスや釘が散乱している場合もありますので底の浅い履物の着用を避けるほか、長袖のシャツを切るなど、軽装は控えたほうが良いでしょう。

まとめ

今回は残置物処分に関して解説を行いました。

残置物のある住宅の買い取り査定を複数業者で行った場合、通常は処分費を必要経費として計上し売却後の手取り金額を提示しますが、その金額は処分業者による見積金額を根拠としているでしょう。

「ラクができれば相場並みで」と言ってはいても、手取り1,990万円より2,000万円のほうが良いのは売り手側の本音です。

総額から見れば僅かな金額であっても、条件が同等であれば少しでも高く買い取りしてくれる業者が優遇されます。

これは買い取りに限らず仲介の場合にも同じことが言えるでしょう。

業者に全て任せてしまうのがラクに違いありませんが、処分費についてできる限り抑えて条件の良い内容で提示することにより承諾を得る可能性も高まるのではないでしょうか。

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