住宅会社の営業指導を23年間にわたって私は行っていますが、これだけやっていると実に様々な営業マンに出会います。
「20年前のY君はユニークだったな」「7年前のHさんも強烈なキャラだったよな」などとコラムで紹介する人選を考えていましたが、今回は現在進行形の案件を選択してご紹介することにしました。
地域の有力工務店に入社した2年目のO君。
細身のすらっとした体系でいつもニコニコの好青年。
O君は毎月のように契約予定をしっかり上げてくるのですが、なぜか契約がボロボロと落ちていきます。
接客する様子も私はしっかり観察していますが、ベテラン先輩営業マンと比較しても遜色ないもので、幹部社員たちも「あいつは何が悪いのかな?」と唸るばかり。
契約後の解約が多い営業マンの3つの特徴【住宅営業】
①鷹揚とした性格が受注を飛ばしまくる原因の一端
鷹揚(おうよう)とは小さなことにはこだわらない様、と広辞苑では解説されています。
コンサルティング過程では全く気付かなかったのですが、よく言えば鷹揚としているし、少し意地悪に書けばルーズな性格ともいえるO君。
ある時こんなことがありました。
「O君から電話は入っていないの?」と聞く私に「連絡ありません」との設計の返事。
「10分くらい遅れますね」
商談に多少遅れることもあるでしょう。
それ自体は不可抗力もあるので仕方がないことです。
しかし問題はO君が自分から遅れる旨の電話を入れなかったということに尽きるのです。
皆さんいかがですか?にわかには信じがたいでしょう(笑)でもつい最近あった話なのですよね。
鷹揚とした性格なのかルーズな性格なのかはわかりませんが、細かいことを気にしない性格が失注原因の一つになっているのは間違いないと私は判断しています。
②なんでも答えられる応酬話法の巧みさも原因
お客さんの質問や疑問に対して当意即妙に即答する力は営業マンにとって大きな武器です。
これを否定する気はさらさらありませんし、否定する理由など全くないと考えるのが普通でしょう。
ところが、あまりに早い受け答えというか、切り返しができる営業マンは、お客さんにとって嘘くさく見えてしまうこともあるのです。
これは声のトーンや話し方の癖なども影響しますので、皆さんに文章で伝えるのは非常に難しいのですがね。でも、O君は何となくこの匂いがするのです。
O君「アクアフォームといって素人でも簡単に吹き付けが可能なくらいよく出きたものです」
お客さん「素人というのは・・・」
O君「職人によって差が出ないという代物でして、とにかくよく出きたものです。こちらをご覧下さい。アクアフォームを説明したビデオがございますので」
何と言ったらよいでしょうか、まずはお客さんが話し終える前に返答を始める癖があります。
そもそもこれは問題で、ちょくちょく注意をしてはいるのですが、なかなか直りません。
知識面は2年目とは思えないほどの分量なので、私でも知らないようなことをガンガン話す能力があり、特に水回りの設備機器関連の商品知識は舌を巻くレベルです。
こんな豊富な知識量も影響しているのでしょうが、お客さんの質問に答えるのではなく、ディベートのように相手の疑問を理論でつぶしに行くような空気がにじみ出ているのです。
「どうだ。俺の答えに反論できないだろう。参ったか!」極端に言うとこんな感じです(笑)
③断りやすい雰囲気がにじみ出ている
言うは易し行うは難し。
まさにこの格言がぴったり。
簡単に断れる雰囲気がO君から滲み出ていて、これは幹部社員も指摘する共通点なのですが、簡単に修正できるものではありません。
応酬話法能力の高さが災いしているとしか思えないのです、O君自身の性格もかみ合ってうまくいかなくなっているのでしょう。
契約後の解約が多いO君をどう指導したらよくなるのだろうか
①落ち着いた接客の店長を参考にさせる
この会社の店長は安定した受注を誇っているのですが、ニコニコしながらも実にクールな折衝をします。
また、お客さんの話を最後までじっくり聞くだけではなく、話し終わった後に一呼吸おいてから話すタイプでもあります。
この店長の折衝シーンをビデオで撮影したのですが、それを本人に対する研修資料として使いました。
これに対してO君の折衝シーンも撮影して、それを本人に見せました。
この2本のビデオを使って話す速度や顔つきなどを検証しました。
もちろんこれだけで問題は解決しないのですが、できうる限りのことをやっています。
その甲斐もあってか以前よりはよくなってきたのは間違いないのですが、人を変えるというのは本当に難しいことだとつくづく実感しています。
自分の折衝を本人に見せるのが効果的
今回のコラムは営業マンではなく経営者や幹部社員向けに書いていますが、話の題材に取り上げたO君だけではなく、不振営業マンへの対応策の一つして有効なのは、該当営業マンが折衝しているシーンを撮影して本人に見せることです。
私はこの手法を20年前から行っていますが、その源泉は積水ハウス時代の研修にありました。
新卒時でしたが私が営業マンで先輩がお客さんの役になり、この設定でロープレを行うのですが、ここまでは特に変わった点はありません。
ところがその当時驚いたのは。
このシーンをビデオでしっかり撮影していた点にありました。
他の営業マンもみな同じように撮影していましたが、ロープレを行った直後に、今度はそのビデオを見ながら先輩たちが指導をするのです。
こう私に質問する先輩に対していろいろと答えた記憶がありますが、先輩にまず指摘されたのは私の話すスピード。
「お前は早口すぎる。もう少しゆっくり話せ。お前はわかっているかもしれんが、お客さんは初めて聞く話ばかりだから理解のスピードが違うんだよ」
このことは今でも強烈に覚えています。
そもそも自分が商談しているシーンを客観的に映像で見る機会など普通はありませんからね。
そして、指摘された「お前は早口すぎる」に関しては実に的を射たもので、たしかに早口で何を言っているのが原因で、理解しづらいと自分でも心底納得したのです。
このことは今でも役に立っていて、講演やセミナーなどで話すときも、登壇しながら「あっ、ちょっと早口になっているな。少しペースを落とすかな」などと戒めながら話す癖がついています。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。