「今期の新規受注は打ち止め!」人気の小規模工務店は何が違うのか?(愛知県の実例報告)

「今期は新規受注をやめました」

愛知県内にある家族経営工務店のA社長はこういいます。

小規模工務店ということもあるので、年間の受注限度を超えてしまったことと、ウッドショックの影響があることもたしかに影響はしています。

ただ、ウッドショック問題を割り引いても常に受注が好調で人気があるのです。

7月には本社にお邪魔していろいろとお話を聞くのと同時に、自社展示場や分譲地モデルハウスなども見学。

「考えているな~」と思うことが多数でした。

今日のコラムはこの「考えているな~」と私の目に留まったことをいろいろと書いていきます。

住宅展示場に行ってみた

玄関でスパイダーマンがお出迎え

つい先日ですが、この小規模家族経営工務店が保有する自社展示場に足を運びました。

自社展示場に本社事務所を併設した建物だったのですが、展示場自体がなかなかユニーク。

入り口にはスパイダーマンの実物大人形を置いて「さぁ、中へどうぞ」とやっています。

住宅展示場の入り口にこんなものを置く工務店は珍しいのですが、こちらの社長は「やりたいと思ったことや面白いと思ったことは絶対に実行するんだよね!」ときっぱり。

スパイダーマンの人形を置いたことにより「一緒に写真を撮ってもいいですか?」と声をかけてくる通行人もいるとのこと。

別に家を建てる人である必要はありません。

地域の人になじんでもらい、喜んでもらえばいいのです。

インナーガレージには往年の名車であるフェアレディーZ

この展示場にはインナーガレージが併設しているのですが、その中にはなんと80年代のフェレディーZが格納してありました。

私は車に明るくありませんが、これを見れば「この社長はこの手のものが好きなんだな」くらいはすぐにわかります。

普通であれば展示場のインナーガレージには新しい車を展示したりするものですが、わざわざこんな車を手配するには手間暇とお金をかけている証拠です。

「所さんの世田谷ベースのイメージですよ(笑)」と社長は笑って話していましたが、これが小規模工務店の魅力です。

大きな会社であれば展示場の飾り付けやデイスプレイは戦略を練ってやるものですが、こちらのような工務店では社長の趣味によって一発で決ねられるのです。

展示場がとにかく楽しくワクワクする

エアコン1台で展示場全部が涼しい

これには私も驚きました。

1階、2階、ロフトスペースまで含めると50坪近くはあると思いますが、一番上に設置したエアコン1台だけでそれなりに涼しく保たれているのです。

冷気循環の仕組みを社長が話してくれましたが、システムは社長独自の考案。

うまくダクトを配置して、冷気を全室に循環するように工夫しているのです。

もちろん1台ですからキンキンに冷えるとまではいきませんが、気温が30度を超える中で十分な効果を示していたのです。

この循環システムを話す社長自身が楽しそうでしたが、私も聞きながらワクワク。

「旨い事考えましたね!社長!」と思わずうなってしまったほどです。

クライミングできる壁を子供部屋に設置

オリンピックでスポーツクライミングが行われたこともあるので、かなりなじみのあるものになった感はありますが、子供部屋の壁に色鮮やかな石をたくさん埋め込んでそこを登っていけるようになっています。

さすがに危険なので実際に作るかどうかは別問題。

しかし、来場したお客さんは子供だけではなく大人も楽しそうにしていることが多いとのことでした。

水琴窟がある展示場

「展示場の裏に面白いものを作ったんですよ」と裏手へ案内されたのですが、そこにあったのが水琴窟。

ビデオでしっかり撮影しましたよ。

音もはっきり録音できましたが、完全な遊びで水琴窟を社長は作ってしまったのです。

もちろん家は何の関係もありません。

こんなのがあったら面白いんじゃないかな?というだけの理由です。

でも、こんな社長の接客を受けているうちに「この工務店は面白いそうだな」と多くのお客さんが感じるのは疑いないところです。

話は逸れますが、展示場が楽しいと言えば、急成長を遂げているアイ工務店の展示場もそうです。

私は2021年度の新卒者研修依頼をアイ工務店から受けた関係もあり、事前に展示場を見学して営業マンのインタビューなどもしてきたのでわかるのですが、展示場がとにかく楽しいのです。

「来場されるお客さんはみんなそう話します」と営業マンが話していましたが、これはオーバーではなく、本当に楽しい展示場なのでこのような評価を受けるのでしょう。

好き嫌いがはっきり分かれるのは目をつむる

これは想像できることです。

社長の好みや趣味的な内容をちりばめた展示場ですので、趣味や感性が合う人はばっちりなものの、人によっては「私はちょっと・・・」と引かれるでしょう。

これがハウスメーカーなどになると、コンセプトはある程度絞るものの、なるべく多くのお客さんに受け入れられる住宅展示場を作るはずです。

年間棟数が7~8棟で十分な工務店だからこそ、こういったこういうことができるのですが、このコラムをお読みの小規模工務店の方は一考してほしいですし、そうではない大手ハウスメーカーの営業マンであっても参考になる点は多々あることでしょう。

趣味の合わないお客さんを捨てられるのは年間契約棟数が少ないということもあるでしょう。

しかし、一概にそうは言いきれません。

ログハウス大手のBESSをご存じでしょうか。

かなり昔になりますが、渋谷の本社に呼ばれて話をしたことがありますが、今でもはっきり覚えている話がこれ。

「BESSは普通の売り方とは違うんですよ」

つまり、売る相手の層が普通ではないということ。

確かにそうですよね。

ログハウスに住もうという考えを持っているのですから、一般的とは到底言えません。

でも彼らは全国的な規模で事業を展開しています。

つまり、的を絞った営業をして、対象から外れたお客さんは要らないということです。

【要らない】というのは少し語弊がありますが、自分が好きだと思う住宅を取り扱って販売するのが一番良いことだと私は考えています。

「動画発信をどんどんやっていくぞ」

この工務店との接点は動画。

社長が動画発信の重要性を感じ始めたのがきっかけです。

動画発信を小規模工務店がどんどんやっていますが、中には明らかにその戦略がはまって受注が増えている会社もあります。

私は直接知らない工務店ですが、動画発信を積極的にやり始めてから年間の受注が7棟➡︎9棟程度に増えたという会社があります。

ここの社長曰く「明らかに動画を見てきてくれている」というので確かなことでしょう。

こうした情報がこちらの社長の耳にもどんどんと入ってくるので、いてもたってもいられなくなったと思います。

少し大変ですが、その気になれば動画を自分で撮影し、字幕を付けてYouTubeにアップするのは無料です。

ただで大きな宣伝効果を得られるわけですから、これをやらない手はないと私は思います。

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