家を建てたいお客さんと工務店が、ある時点で接点を持ちます。
これは自社が所有する住宅展示場かもしれませんし、会社の事務所かもしれません。
いずれにしても、どこかで初対面の機会があり、そこで家の話を進めてある程度お互いの合意が得られれば「図面をお書きして見積もりも合わせて出してみましょう」と話が進んでいきます。
図面にはもちろん興味津々でお客さんは関心を示すわけですが、見積もりにも鋭い視線を投げかけます。
総合金額だけを見て中身をほぼ見ない人もいますが、目を皿のようにして一つ一つの項目をチェックしていく人もたまにいます。
振り幅は極めて大きいのですが、一般的にお客さんが見積もりの中で目の行きがちな項目や質問をしてくるところはどういうところか?
これを探っていきましょう。
「諸経費って何?」
会社によって見積もりの出し方はさまざまですが、一般的によく見られるのが、最後に「諸経費10%」などと明記した項目でしょう。
しかし、我々の業界では諸経費を計上するのは当たり前かもしれませんが、お客さんから見れば極めて怪しいブラックボックスと目に映るのは至極当然だと思います。
筆者が積水ハウスに入社した一年生時の話なのですが、初めて自分だけでお客様に見積もりを提出した時に、ここを突かれて右往左往した経験があります。
あまり深く考えることもなく、また見積もりの中味も事前にほとんど精査せずお客さんの前で話し始めました。
ほとんど精査せずと書きましたが、そもそも見積もりの詳細については、読んでもよく意味が分かっていなかったのです。
今考えればでたらめな話なのですが、そのときは出たとこ勝負でいきました。
私 「諸経費・・・ えっとですね・・・ いろいろとやはり必要な経費がございまして・・・えーっと、まぁ、とにかくいろいろ必要な諸経費だと考えてください」
意味不明な答えですが、こんな感じの返答をしたこと今でもはっきり覚えています。
このお客さんは飛びました。
当然ですよね。
この時の商談はまともにお客さんの目を見ることができなかったです。
自分がおかしいことは、この私が一番良くわかっているからです。
このように、翌日積算部の先輩に話を聞いたのですが、その先輩の答自体も結構曖昧なのですよね(笑)
終始こんな感じで私は結局わからずじまいだったのです。
諸経費計上で気を付けるポイント
①諸経費一式と一括りにしないこと
お客さんの不信感を一気に増大させるのが、諸経費を一式でまとめてしまうことです。
諸経費自体が怪しげなのに、さらに一式という言葉で総括してしまうと不信感は増大し手が付けられなくなってしまいます。
だから、まず大事なことは、見積書に諸経費と書いた上でこの諸経費の内訳をしっかりと明示することなのです。
・文書通信費
・作業車両の償却費
・工程看板取り付け費
・労務管理費
など、細かく書いていけばキリはないのですが、このような感じで10項目ぐらいは最低限出してお客さんに説明をしてください。
中には「それぞれの項目がいくらぐらいかかるのか書いて欲しい」というお客さんも現れるかもしれませんが、そこまでは要求に応えるのは大変だと思います。
諸経費の相場は10%程度と書きましたが、実際には5%で済むこともあるでしょうし、20%程度実際にかかってしまうこともあります。
ですから、細かい項目まで諸経費金額を書くというのは、事実上ほぼ不可能だと思います。
でも、ここまでやればとりあえず充分ではないでしょうか。
諸経費一式とひとくくりで計上する工務店が多い中、その内訳を書くとこまでやれば最低のラインはクリアしたと言えます。
「詳細まで書くのは難しい」と前述しましたけども、可能であれば概算で構わないので各項目の金額を計上してあげてください。
②諸経費を必ず説明すること
見積もりの諸経費に関する二番目の注意点はこれです。
どこまで詳しく書いてあるかは別にして、諸経費はこういう意味ですよという説明を絶対にすることです。
これはお客さんから聞かれなくても必ずしてください。
その場でお客さんが「諸経費ってなんですか?」と聞いてくれればいいのですが、聞いてこないことをこれ幸いとして、説明をスルーすることは絶対に危険です。
お客さんが自宅に帰った後、もう一度その見積書を食卓の上に出して夫婦二人で眺めるはずです。
「あれ?さっきは気付かなかったけど、ここに書いてある諸経費ってなんだ?しかも金額が180万円って書いてあるぞ。諸経費で180万円ってなんなんだよ?」
いかがですか。
この流れは最悪。
あなたに対する不信感が倍増する瞬間です。
平米単価
クロス工事や様々な工事に関して平米単価の項目が発生します。
お客さんから見れば 標準的な単価などわかるわけがありませんので 頭の中で「これってどうなのかなぁ」と思いながらやり過ごしていたことが多かったと思います。
しかし最近では、この平米単価にしっかりと食いついてくる人が本当に増えました。
もっともポピュラーなところで言えば、クロスの平米単価がこれにあたるでしょう。
見積もりの中に子供部屋という項目を作り、さらにその中にクロスの見積もりを計上したとしましょう。
使用するクロスの品番を書くまではいいのでしょう。
そのうえで、クロスを〇〇平米使用して合計でいくらになりますよ、という見積もりを出すのですが、今はネットで 調べればこのあたりの金額はすぐにわかります。
それと比較して「この平米単価は少し高くありませんか?」などとねじ込まれるわけですから現場の苦労はよく私もわかります。
ですから皆さんが準備しなくてはいけないのは、平米単価の根拠を話せることなのです。
例えばクロスの話をしてみましょう。
あなたがあるお客さんに見積もりを出し、その中にクロスの平米単価を記載したとしましょう。
その場合、平米単価が巷に流れているネットの情報と合致しているかどうか、安いのか高いのかということを事前に調べてほしいのです。
お客さんに出した見積もりが平米3,000円だとしましょう。
ところが、同じようなものをネットで調べると「平米単価2,000円が普通です」と書かれていたとします。
すると「 ネットに書いてあった単価よりも1,000円も高いよ」
単純にこうなってしまうのですね。
こちらは誠実に単価を出していても、お客さんからすれば「1,000も円高い」「吹っ掛けられた」となってしまうのです。
つまり、ここを突かれた場合に、理論的に相手が納得するように説明できるよう、理論武装だけをしておきましょうというのが私の結論になります。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。