高性能住宅は売れるのか?現場の住宅営業マンはどう売っているのか?

蓄電池、調湿機能システム、空気清浄、災害対応・・・このように従来の住宅に付加価値はいくらでもつけられます。

住宅会社は差別化を図るために、大手ハウスメーカーを中心に他社では見られないような機能をどんどんと付ける傾向にあります。

しかし、問題はお客さんがそこまで求めているのかどうか、そして販売を担当する営業マンがそれらを売る力があるかどうかにあります。

実際の営業現場を多数見るのが仕事である私は、これらの高機能商品がついた住宅展示場での接客状況を熟知しています。

結論から先に申し上げると問題山積み。

今日のコラムはその山積みとなった問題の実例をご紹介するとともに、合わせて解決方法を探っていきます。

D社製の優れた空調システムは売れるのか?

私が今から自宅を建てるのであれば、絶対に取り入れたい素晴らしい空調システムがあります。

室内の空気環境を綺麗に保つのが健康に良いことはいうまでもありませんが、重度の花粉症に悩む私にとっては花粉を除去してくれるということもすごくありがたいのです。

しかもこのシステムは、空気を綺麗にするだけではなく優れた調湿機能を持ち、室内の湿度を適湿とされる40%から60%に保ってくれます。

人間が快適に過ごすには湿度が重要。

機密性を極限まで高めて冷暖房効率をよくした住宅があったとしましょうか。

しかし、その反動で冬場の室内湿度が、喉が痛くなるほど空気が乾燥してしまっては全く意味がないと思いませんか?

営業現場の実態は〇〇

この素晴らしいシステムを自社の住宅展示場に設置した会社があります。

展示場に来場したお客様に対して、営業マンがこれを勧めてくれるだろうと期待して導入しているわけですが、実際の接客シーンを見てみると、想定よりはかなり違った現象が現れます。

①システムに強い関心を抱くお客さんは少ない

「室内の湿度を適切に保ってくれます」と営業マンは説明をするのですが、これに対して強い関心を抱くお客様というのは非常に少ないと思います。

システムは非常に素晴らしいのですが、多くのお客さんは「ああ、そういうのいいね・・・」で流して終わり。

この問題の根幹は営業にあるのです。

湿度が大事であることはお客さんもみんな分かっています。

しかし、住宅展示場を見学する際、お客さんが真っ先に見たいのは、素敵なキッチンであり、システマチックな収納であり、広くて快適なお風呂なのです。

冷静に考えれば室内の湿度調整が大事なのは誰でも分かるのですが、とりあえず見たいものではないのです。

②躊躇する営業マン

湿度調整システムについて、お客さんに営業マンが説明したとしましょう。

ところがそのお客さんの態度はあっさりとしたものだとすれば

「ここでこれ以上話を突っ込むのは危険だ」

と営業マンは判断するでしょう。

問題はここにあるのです。

極めて重要なシステムではあるものの、展示場見学において優先順位は上ではありません。

③予算オーバーの恐怖

これも営業マンの話になります。

「弊社が導入しておりますD社製の空気循環システムは絶対にお薦めで、これを外しては快適なマイホームを絶対に手に入りません!」

このシステムに入れ込むあまり接客に出た営業がこう言い放ったとしましょう。

これに対しお客さんが感化され、予算的にも問題なければ話は前に進みます。

しかし、関心はあっても、このシステムをつけることによって予算がオーバーしてしまうとどうなるでしょうか。

「あなたの言ってることは分かるけど、ちょっとうちには高すぎるね。別にこれを外しても問題ないのでしょ?」

これで商談は終わりです。

ここまで持ち上げといて「予算が無ければ外しましょうか」 では話の辻褄が合いません。

このシステムが入っていなければ快適ではありません、と主張しておきながら、予算がなければ取っても問題ありませんとなるわけです。

“子を外される”という表現が最適でしょう。

営業マンとしてはいくら自分がいいと思っても、価格が高い商品を勧めると、自分の首を絞めかねないのです。

一人の大工が執念で開発したWB工法

長野県に本社がある株式会社ウッドビルド。

数年前に他界された開発者である前社長が、執念でこの工法を開発しました。

開発しただけではなく、WB工法を扱う工務店を全国で750社まで広げたのです。

前社長は大工出身。

私はお会いしたことがありますが、自らが開発したWB工法を、世の中のために広めたいとの信念でここまで拡大させました。

現在は、ご長男が社長、ご次男が副社長の体制で切り盛りしています。

真冬でも嘘みたいに温かい

私は副社長のお宅に、真冬の1月にお邪魔したことがあります。

1月の長野県は極寒期。

ところが部屋に入ると小さなストーブがポツンと一階に置いてあるだけで、信じられないほど部屋が暖かいのです。

「昨日の夜は焼肉をやったんですが匂いもほとんどないでしょ」

と奥さん。

確かに全く匂いもしません。

このように実によくできた工法なのですが、全国に750社ある工務店の中には施工する全てをWB工法で行う会社もあれば、年間を通して施行数が0である工務店も多いのです。

いいものを使っているのにこの差はどこから出てくるのでしょうか。

全国一売っている長野県のある工務店

本部が長野県なので、会員工務店は長野に相当数が集中しています。

その中の一社が全国でダントツの販売数を誇るのですが、この工務店がこれだけ売りまくるにはちゃんと理由があるのです。

私は社長とお会いしたことがあり、ストレートに売れる理由を聞いたことがあります。

 森 「ダントツに売ってますけがWB工法がこんなに売れるのにはどんな理由があるんですか?」
社 長「いいものを真剣に勧めるから売れるんですよ」
森 「確かにそうですよね。でも、他にも理由はあるでしょう?」
社 長「うちはWB工法をオプションにしてませんから。オプションにしていないというのは標準でこれを入れているということ。売れない工務店はプラスアルファでWB工法を勧めているんですよね。それではだめでしょう」

 

良いと思ったら標準仕様にしてしまう

結論はこれになります。

こちらの会社はWB工法に社長が惚れ込み会員となりました。

社長が惚れ込んだ結果、この工法をオプションではなく標準仕様にしてしまったのです。

標準仕様にするということは、営業マンはお客さんに対して「WB工法を採用しますか?それとも採用しませんか?」というトークはありえません。

契約を取るためには、WB工法分のお金が余分にかかっても、「絶対にこれを取り入れれば後悔はしない」と営業をするしかなくなります。

WB工法が売れない工務店

前述の売りまくっている会社と比べ、販売成績が振るわない工務店の話をしましょう。

私が説明するまでもなくお判りだと思いますが、売れていない工務店は現場でこんな折衝をしているのです。

 

営業「弊社は昔ながらの在来軸組工法でしっかりとした家づくりをしております。お聞きになったことはないと思いますがWB工法も採用しておりましてご希望があればこれもお勧めします」

お客「 WB 工法というのは何が優れてるんですか」

営業「空気環境を・・・という素晴らしい実に良く出来た方法なんですよ」

お客「 WB 工法はどうしても採用しなくちゃいけないんですか」

営業「いえ、そんなことはありません。 WB 工法を外すと坪で〇万円程度下がりますのでそれでも全く問題ありませんよ」

 

こうしてWB工法は不採用となるのです。

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今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。

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