従業員1,000人越えの住宅会社とだけしておきます。
非常に大きな住宅会社となるわけですが、この会社のトップ営業マンの話を今回はしましょう。
優秀な住宅営業のパターンは人それぞれです。
理路整然と住宅の性能や間取りについて話し続ける者もいれば、お客さんの話をひたすら聞き続けるというスタイルの営業マンもいるはずです。
今回ご紹介する営業は、分類するとすれば自信たっぷり派とでも言いましょうか。
「私についていらっしゃい」
文字通りこのように言い放ってしまう営業マンです。
誰しもが真似できるとは思いませんが、高額商品を販売する営業マンはお客さんから見て頼もしい存在であるべきでしょう。
まさにこれを地でいく男性営業マンを取材しました。
「私がすべてお答えします」
入社10年目のAさん。
2年生あたりまでは中の上といった成績だったらしいのですが、3年目からいきなりギアが入ってぶっちぎりのトップになったそうです。
Aさんをトップの座に押し上げた営業スタイルこそが、お客さんに対して自信満々に対応することでした。
「私が全てお答えします。何かわからないことや不安なことがあれば全て私にお聞きください」
初回面談で接客を開始後、ものの5分でこのトークを切っていくそうです。
「最初は怖かったですよ」
Aさんはこう言います。
私が全てお答えしますと言い切る以上、何を聞かれても答えなくてはならないのです。
ごく一般的な説明なら問題ありませんが、資金計画に関する込み入った話や、市街化調整区域や都市計画などの突っ込んだ話を相談されても明確に答えなくてはいけません。
しかし、これまでの営業経験で答えられないようなことは数回しかなかったそうです。
その時ばかりは仕方がないので「調べてご連絡します」と答えたそうですが、ほぼ100%は即答しているのでお客さんの信頼感は抜群です。
皆さんは、同じことができるでしょうか。
私も現役時代にはそれなりに勉強をしましたが、さすがにここまで言い切る勇気はありませんでしたね。
Aさんの上司が話すには、彼は自分を追い込むためにもこのように言い放ち、自ら梯子を外しているということです。
話す姿を録画してチェック
これには驚きました。
例えばですが、皆さんも耐震等級の話をすることがあるでしょう。
Aさんはスマートフォンを録画モードにして、一人芝居で耐震等級をお客さんに説明してるシーンを撮影するとのこと。
そして、すぐにチェックして自分のいけない部分や、足りない部分をすぐに修正するそうです。
実際にこの動画を私は見ましたが、膨大な量がノートパソコンの中に入っていて驚愕しました。
私も積水ハウス時代には、定期的にロープれなどを行なっていて、その際に撮影をするということはよくやっていました。
しかし、Aさんはその量と徹底加減が桁外れなのです。
Aさんのチェックポイントは、説明している内容が合ってるとか合ってないとかのレベルではありません。
身振り手振りはもちろんのこと、話すスピードや表情まで分析しています。
お客さんから見て、どんな表情で喋れば信頼を得られるのか、そして、どの ラインを超えると尊大な態度と映ってしまうのか、なども研究し尽くしているそうです。
Aさんのお客さんを取材しました
私は研修でよく行うのですが、 研修に参加する営業マンが実際に契約したお客さんに取材を事前に行い、そのテープを研修題材とするのです。
Aさんのお客さんにも、一人だけですが取材をしたことがあります。
ご夫婦ともに40代半ばなのですが、こんな会話がビデオに記録されています。
ご主人「そうですね。近所の総合展示場に行って5~6社見て、もう帰ろうかと思った時に、ふと立ち寄った最後の一社だったんですよ」
私 「どんな会話をしたか覚えていますか」
ご主人「かなりヘトヘトに疲れていたんですけども、玄関に入って出てきたAさんは、開口一番“お疲れですよね。ポイントだけご説明しますので、何かお聞きになりたいことありますか?”こう話しできたんですよ」
私 「表情を見ていたのですかね」
ご主人「おそらくそうでしょう。だから私も妻もびっくりしたんですよ。この人よく見てるなと思って(笑)」
こんな感じで一時間半も話し込んだのですが、最初のこの鋭いツッコミが功を奏したのか、お客さんはかなり疲れていたらしいものの、結果的には1時間半も、そこからAさんと話をしたらしいのです。
そして、改めて説明するまでもないですが「なんでも私に聞いてください」というAさんの言葉を聞いて、初対面にも関わらず大きな信頼を寄せたとのことでした。
他のお客さんも似たような感想をみんな持っている
私はお一人しか取材していませんが、上司に話を聞くと契約をしたお客さんのすべてが、最初にAさんと会った時にひきつけられたというか心酔してしまうらしいのです。
私はAさんの接客を受けたわけではありませんのでこれ以上の説明はしようがないのですが、Aさん3のストロングポイントはお分かりになったと思います。
今では8割が紹介受注
当然こうなるでしょう。
初対面のお客さんを惹きつけるぐらいですから、紹介情報はどんどん出てきます。
毎月平均で5~6件はお話をもらうとのこと。
考えたらすごい数字だと思いませんか。
毎月5件、6件と紹介の情報をもらうわけです。
住宅展示場で毎月5~6件のお客さんを接客して、一件契約をできれば、その営業マンはかなり優秀といえますよね。
ところがAさんは、この紹介の中から毎月平均1.5件の受注をあげているのです。
紹介から1.5軒あげるわけなんですが、残りは展示場接客で1件から2件を契約するとのこと。
このペースでいけば年間で24、5件は平均的に受注していくという計算になります。
今時注文住宅で毎月2件のペースを保つというのは、そうそうできることではありません。
いかにAさんが優秀かという証左といえるでしょう。
初回面談から紹介受注を既に意識している
これにも驚きました。
契約どころか、10分ほど前に初めて顔を合わせたお客さんに対して「この人から紹介をもらうんだ!」というイメージを頭に描いてるとのことです。
文章では説明しようがないのですが、Aさんが通常の営業マンとは全く違う発想をもっていることはおわかりだと思います。
ところで、私が積水ハウスに新入社員として入社した時、直属の上司であった店長は紹介だけで食っていました。
その店長は「人の顔を見たら紹介をくださいと言え」と言う指導でしたので、Aさんになんとなく通じるところがあったかもしれません。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。