建築希望者の紹介情報がなぜか集中する大工さんの秘密

研修材料の一つとして私はありとあらゆる動画を持っています。

優秀住宅営業マンの取材もあれば、ごく一般的な平均的営業マンの取材ビデオもあります。

その他には、契約をしてくれたお客さんのコメントを撮ったものや、数は少ないものの、その反対に失注した案件の理由を聞いたビデオも私は持っています。

設計や監督の話もいろいろ聞きましたが、今回ご紹介したいのは、関東地方に住むある大工さんの取材内容です。

Hさんとしておきましょうか。

Hさんにはある傾向があります。

家を契約したり建てたお客さんから、担当営業マンではなくこのHさんに友人紹介などの情報が集中するのです。

一般的に住宅業界の友達紹介情報は、担当営業マンに出ます。

担当営業との付き合いが長いということもありますし、そもそもの契約動機は、最終的に営業マンに信頼を寄せたからなのです。

ところが、世の中には興味深い人がいるもので、この住宅会社では大工さんであるHさんに紹介情報が集中するのです。

謙遜しながらも取材にノリノリだったHさん

「僕でいいんですか?特に話すことなど何もないんですけどもね。でもそう言ってくれるならば話してみようかな」

当日取材現場となった建築現場に足を運ぶと、満面の笑みを浮かべた大工のHさんが立っていました。

専門用語を使わない

よく聞く話ですが、どんな職種であれ一般のお客さんに対して専門用語を控えることは常識でしょう。

我々は建築業界にいますが、大工であれ設計であれ営業であれ、建築業界や社内用語をそのまま使うようでは話になりません。

Hさんへの取材で一発目に出たことがこれでした。

「専門用語を何気に使う人が結構多いのですが、僕はその辺りを考えて全て平易な言葉に言い換えます」

営業であればまだしも、現場職である大工のHさんが一発目に切り出したことがこれだったのです。

筆者である私の話をしたいのですが、同期だった設計のF君がまさにこれに該当するケースでした。

私と話をするならばもちろん問題ありませんが、お客さんに対しても、社内用語や設計が独自に使うような言葉を平然と言ってのけるのです。

F君「何か他にご質問はございますか?」
客 「この部分に間仕切りというか目隠しのような壁を追加することはできるのですかね?」
F君「もちろん可能ですよ。この場所であればサブロクのパーティクルボードを噛ませば問題なくできるでしょうね。それとクロスも大体中間レベルの5~6番を使えば費用もそんなにかかりませんし・・・」

F君の会話はいつもこうでした。

“クロスも大体中間レベルの5~6番”のくだりですが、これは完全な社内用語。

こんなことお客さんに言っても訳が分からないわけですが、なぜかF君は全く気付かないのです。

横にいる私が首を傾げるほどの鈍感ぶりでした。

お客さんとの折衝が終わった後、F君にこの問題を指摘すると、毎回のようにキョトンとした顔で「あっ、そうだったっけ、ごめんごめん(笑)」と満面の笑みを浮かべるのでした。

Fくんの話は極端だと思いますが、大工のHさんはこの辺りを非常に気をつけて話をするそうです。

「口だけではわからないので物を使って説明します」

取材のためにカメラを回していたのですが、Hさんはちょっと席を外して構造の模型を持ってきました。

お客さんに構造の説明などをする時には、どうやらその簡単な模型を使うらしいのですが、驚いたことにその模型はHさんの手作りなのです。

「構造の話を口だけでしたってわからないよね。だから私はお客さんのことを考えてこんな模型を自分で作ったんですよ」

おそらくですが、ここまでやってる大工さんは日本広しといえども私はいないと思います。

お客さんに嫌な思いを絶対させない

この言葉は当たり前のようでいて、なかなか奥深いものがありますよね。

少し前でしたが、テレビにもよく出演する有名な女性のマナー講師が炎上した問題がありました。

制作側のスタッフを思いっきり怒鳴りつけたことで、その女性が泣いてしまったということに批判が集中したわけですが、これについては個人の解釈ですからここで私がとやかく言うことではありません。

しかし、マナー問題の論争になる時、最も説得力がある言葉は「相手に不快な思いをさせないことが最大のマナー」だと私は思います。

例えば、箸の上げ下ろしに関しても細かいマナーはたくさんあるようですが、会食などの席でこちらがマナーを徹底的に励行するあまり、相手が緊張してしまっては意味がないのではと私は考えています。

堅苦しい事が苦手な方であれば、こちらもそれに合わせてラフな感じで対応すれば良いのではないでしょうか。

大工のHさんも同じようなことを話していました。

「私が現場でお施主さんと接する時に気をつけていることは、とにかくお子さんが不快になるようなことを話さない、という一点に尽きるんですよね」

特に説明はいらないと思います。

取材ビデオをお見せしたいぐらいなのですが、 話す速度や表情全てをとっても、教育ビデオに使えるのではないかというぐらいの感じのいい大工さんなのです。

Hさんの友人である大工さんにも話を聞きました

私はとにかく取材魔です。

話を聞きたいと思ったらリアルであろうがZoomであろうが、とにかく取材の依頼をします。

Hさんに話を伺ってから半年ほど過ぎたころだったのですが、再び大工さんに取材をしたいと考えて別の方の取材希望を仲介者にしました。

そして、その方(Gさん)ともあったのですが、たまたまHさんの知り合いということが取材現場でわかったのです。

Hさんの話も聞いてみた

ご本人のお話をもちろん聞きましたがその流れでHさんの話も、あれやこれやと聴き込みました。

今日の結論になるのですが、Hさんに紹介が集まるその理由がこの取材で判明したのです。

私 「ところでHさんのお話を伺ってよろしいでしょうか」
G さん「はい、いいですよ、彼とはもう20年の付き合いですからね」
私 「Hさんにはお施主さんからマイホームを建てたい方の情報が嘘のように集まってくるという話を聞いたのですが・・・」
G さん「あぁ、その話ね(笑)この前も同じことを誰かに聞かれましたよ」

笑いながらそう答えてくれたGさんでしたが、Hさんに紹介が集まる理由を明快に次のように言い切ってくれたのです。

「Hさんは紹介をもらうことを意識してるからだよ」

答えはこれです。

大工さんが現場でお施主さんと話をするということは頻繁にあるわけですが、一般的には建物の話であるとか、とりとめのない雑談などを組み合わせた会話でしょう。

ところがHさんは、このような会話をしながら頭の中では「この流れでなんとかしてお友達を紹介してあげるという結論に持って行こう」と考えているとのことでした。

Hさんへの取材でも紹介が多い理由を聞いたのですが、その時には「難しいね自分ではわからないな」と答えていました。

自分では分からないというのは納得できたので、私もそれ以上突っ込まなかったのですが、友人のGさんは私の質問に対して即座にこのように答えたのです。

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