工務店の若い営業マンに接していると、どうしてもこの課題にぶち当たります。
住宅展示場もしくは現場見学会の会場でお客さんと初顔合わせで接客をしているシーンを想像して欲しいのですが、家の事だけをストレートに話すのではなく雑談もある程度は必要でしょう。
奥さんが看護師だという話になれば、少しでいいですからそこから話を脱線してもいいのではと思いませんか。
脱線と書きましたが、実際には決して脱線ではなく話をスムーズに進めるための潤滑油なのです。
ところが、若手の営業マンの中には“ちょっとした脱線”をすることがなかなかできないケースが散見されます。
また、話の流れに応じて多少の雑談はするものの、その内容があまりに面白くないというか平凡すぎることもよくある話。
その時話題になっている社会の時事ネタなどをうまく組み合わせて雑談のレベルを上げてほしいとつくづく思っています。
台風の最中にやってきたお客さんへの対応を見た
2022年も例年通り台風が日本へやってくるわけですが、8月中旬にも台風が日本国土に来襲し全国的に天気が大荒れになりました。
この時たまたまある住宅会社の展示場にいたのですが、凄まじい土砂降りの中にもかかわらず展示場来店があったのです。
暴風雨の中での来店は珍しい
展示場の最寄り駅でレンタカーを借りた私は、暴風雨の中まっすぐ展示場に向かいました。
到着したのは夕方でしたがその日の来場者は0。
天候を考えれば当然のことでしたし、他社の来場者数もそれに準じたものだったのでしょう。
ところが到着してすぐのタイミングで、事務所内のチャイムが鳴りました。
モニターを見ると若いご夫婦が玄関に映っていたので、早速営業が接客にあたりました。
この様子は映像はもちろんのこと音声もモニターから全て聞くことができたので、私はその接客の様子を眺めていたのですが、ひとつだけ気になった点があったのです。
台風の中どうして展示場見学をしようと考えたのか?
私が疑問に思ったのはこの点でした。
明らかに来場者がいない中、このご夫婦は荒天の中わざわざやってきたわけです。
「こんな台風の中をついて来られたということはお急ぎの計画なんですか?」
私であればこんな趣旨の質問をして、お客さんの真意を探りにいくでしょう。
ところが当日接客に出た営業マンは、 このポイントについて微塵も触れずに接客を終了しました。
実際にはアポイントを取り、今現在もプランを出して商談中ということですので結果オーライとはなりましたが、初回面談であった展示場での接客中に、台風の中わざわざやってきたことについては触れずじまいでした。
あとでわかったのですが、台風にも関わらずわざわざご夫婦で展示場に足を向けたのは、共働きでなかなか二人揃っての時間が取れなかったとのこと。
やっと休みがあったのに台風が来襲の日にぶつかってしまったわけですが、一刻も早く住宅取得の話を始めたかったようで、次の休みを待つといつになるかわからないから無理してやってきたとのことでした。
何気ないことだか気づくか気づかないかが重要
このようなことに気づくかどうかが雑談の本質だと私は思いますが皆さんはどう思われますか?
営業の世界では男女の恋愛に例えるケースが多いですよね。
男性が女性をデートに誘おうと考える時に、ストレートに誘うのも良いのですが、雑談をうまく交えながら自然な形で相手が YES というような方向に持っていこうと普通は考えるのではないでしょうか。
ここまで書いてふと思い出したことがあります。
今から14年前の話ですが、九州のある地場工務店に呼ばれて半年ほどその会社に通ったことがあります。
あるとき社長から突然こんなことを言われました。
「ここに30万円あるので営業の若い連中を今晩キャバクラに連れていってもらえないかな。それでさ、営業が女の子とどんな話をしているかっていうのそれとなく聞いてほしいんだよ」
冗談ではなく本当の話ですよ(笑)
なかなかユニークな社長でしたが、その夜に若い男性営業6人を連れて地元のキャバクラに行きました。
社長が営業を引き連れて飲みに行くこともあるらしいのですが、 社長と同席だと営業マンがみんな固くなってしまうので、 本来の姿が全く見えないと社長は言うのです。
私自身も女の子と話をしながらも、耳だけは四方八方に向けて若い営業たちがどんな話をしてるのかをつぶさに聞いて、翌日社長に報告しました。
展示場にやってくるお客さんと水商売の女の子という差はありますが、共通しているのは初対面であることです。
中には饒舌に笑いを取りながら話す営業もいましたが、話が続かなくて横についた女の子を困らせてる営業もいましたね。
結局は30万円を使うことはできずに、結構な額を社長にお返しした記憶があります。
世の中のニュースを知らない若手営業
この原稿を書いているのは9月15日です。
直近のニュースではウクライナ軍が大反撃をして東部地域の6,000平方キロメートルを奪い返したこと、WHOのテドロス事務局長がコロナのパンデミック終焉が見えてきたと発言したこと、安倍元首相の国葬の当日は警備の関係もあり5時間は水を飲むことができない、などといったニュースがありました。
お客さんとこんな会話があったらどうしますか
展示場に行ってきてお客さんがたまたま医療関係者の方だと仮定しましょうか。
お客様「コロナを意識した間取りをいろんな会社が提案してくるんですよ。昔と比べると随分変わったんでしょうね」
営 業「おっしゃる通りです。弊社の展示場は昨年建て替えたのですが、ご覧の通り玄関に手洗場を設けるなど完全にコロナを意識したものになっています」
お客様「私は医療関係者なので分かりますけども、外から帰ってすぐに手が洗えるというのは理にかなった話だと思います」
営 業「ところで昨日ですがWHOのテドロス事務局長がパンデミックはもうそろそろ終わる、という発言をしてみたんですけども医療関係の方の中ではどんな話になってるんですか?」
お客様「昨日のニュースで流れてましたね。あれは確かに・・・」
雑談の一例になります。
テドロス事務局長の発言のニュースを知っていれば、たまたまやって来たお客さんが医療関係者とわかった段階で、このような雑談を振ることが可能になります。
雑談ではありますが、家の話からかけ離れてはいません。
違う話をしているようで、間取りの話の延長線上で会話をしているに過ぎないのです。
話の幅が広がり深くなる
このケースにおいてテドロス事務局長の話を挟み込まなくても商談は普通に進むでしょう。
しかし、これと同じような小ネタを1時間の間にちょくちょくと挟み込むことによって、会話の幅と深さは明らかに変わってきます。
お客様から見ても、幅広く時事ネタを話の中に織り込んでくる営業マンに対して、より深い信頼感を持つのは当然の話だと思いませんか。
まとめ
雑談に関しては何度でも記事にして書きたいと思っていますが、とにかく話題の幅が狭いというか家以外の話をできない若手営業マンが実に多いと感じています。
私は研修先で必ずといっていいほどに雑談のロープレを行うのですが、これについてはあなたの社内で必ず実施してください。
雑談の仕方を教えることほど難しいことはないのですが、 ロープレ形式にすると意外にうまくいきます。
大きな会社では二人一組になってもらうなどしてロープレのテーマをどんどんこなしてもらいますが、 営業マンが一人しかいない会社の場合は私がお客さん役になって相手をします。
コロナ禍になってからはZOOMを多用した研修を行っていますが、今現在コンサルティングで入っているある会社では、一人だけいる営業マンに対してZOOMでロープレを行っています。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
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