【不動産業者なら覚えておきたい】市街化調整区域の開発行為について

市街化調整区域について学ぶコラムの三回目になります。

前回までは市街化調整区域の基本や、建築をすることのできる例外規定について解説してきました。

市街化調整区域においては例外規定に該当(開発許可不要の建築行為)する場合を除き原則として建築することはできませんが、調整区域内であっても開発許可を受ければ建築が認められます。

今回は市街化調整区域の開発に関して学びましょう。

そもそも開発行為とは

開発行為とは都市計画区域や準都市計画区域内において、建築等の用に供する目的で行われる土地区画形質変更のことです。

開発許可の概要は都市計画法により定められています。

都市計画法によれば開発許可制度の趣旨は「市街化区域及び市街化調整区域の区域区分を担保し、良好かつ安全な市街化の形成と無秩序な市街化の防止」であるとされています。

この開発行為により許可を受けられる条件等については、都市計画法第4条第12項で定められています。

具体的には下記の建築行為です。

(1)建築物の建築
(2)第1種特定工作物の建設
(3)第2種特定工作物の建設

これらの建築を目的とした「土地区画形質の変更」が、開発行為であるということです。

本来、開発許可申請といえば、都市計画区域の市街化区域内であれば1000㎡以上(三大都市圏の既成市街地、近郊地帯等は500㎡以上)など、一定面積以上の土地区画形質変更の場合に必要であると記憶している方が多いと思いますが、市街化調整区域においては「原則とし全ての開発行為に許可が必要」とされています。

さらに市街化調整区域内の土地に建築する場合には、開発許可が不要である(農業従事者が自己居住用の住宅を建築する場合など)を除き、原則として開発許可が必要とされますから「建築をする=開発許可を受ける」という図式が成り立つのです。

開発行為は許可性であり、都市計画法第29条により許可権を有するのは都道府県知事、政令指定都市、中核市の長、特例市の長であることが定められており、それ以外に地方自治法第252条17の2の規定に基づく場合においては事務処理市町村の長も許可権者となることができます。

都市計画法,開発許可

つまり前回解説した例外規定以外で建築を行うためには開発許可が条件とされることから、面積によらず全て開発許可が必要であると覚えておきましょう。

開発許可の判断基準は?

市街化調整区域内で建築できる例外規定は都市計画法第43条第1項で定められていますが、同法43条第2項により開発許可の基準は同法第33条及び第34条に規定する開発許可の基準に準じて政令(国土交通省令等)で定めるとされています。

ここでは関連法について、それぞれについて整理してみましょう。

●都市計画法第43条第3項

国又は都道府県が行う一定の建築行為について、国の機関又は都道府県等と都道府県知事の協議が成立することにより「建築許可」が成立すると定めています。

●令第34条

市街化調整区域内であっても以下の開発行為により区画された土地においては、建築行為等が許可を得ず行えることを定めています(つまり市街化調整区域内であっても、下記事業等により造成された宅地であれば、個別に許可を得なくても建築できるということです)

1. 都市計画事業の施行として行う開発行為
2. 土地区画整理事業の施行として行う開発行為
3. 市街地再開発事業の施行として行う開発行為
4. 住宅区整備事業の施行として行う開発行為
5. 防災街区整備事業の施行として行う開発行為
6. 公有水面埋立法第2条第1項の免許を受けた埋立地であって、まだ同法第22条第2項の告示がないものに行う開発行為
7. 旧住宅地造成事業に関する法律第4条の認可を受けた住宅造成事業の施行として行う開発行為

●令第35条

この省令により下記に該当する範囲内であれば開発許可が不要であるとされています。

一 既存の建築物の敷地内において行う車庫、物置その他これらに類する附属建築物の建築

二 建築物の改築又は用途の変更で当該改築又は用途の変更に係る床面積の合計が10平方メートル以内であるもの

三 主として当該建築物の周辺の市街化調整区域内に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗、事業場その他これらの業務の用に供する建築物で、その延べ面積が50平方メートル以内のもの(これらの業務の用に供する部分の延べ面積が全体の延べ面積の50パーセント以上のものに限る。)の新築で、当該市街化調整区域内に居住している者が自ら当該業務を営むために行うもの

四 土木事業その他の事業に一時的に使用するための第一種特定工作物の新設

さらに追加で覚えておいて戴きたいのが、災害等により従前の建築物の全部若しくは一部が焼失した場合等においては、従前の建築物と規模、構造、用途、敷地の位置が同様の建築物等を建築する場合に限り、当該建築物等は新築及び改築には該当せず、法第43条の規制を受けない(つまり再建築可)とされている点です。

もっとも開発許可権者であっても、令第36条第1項で定められた技術基準に該当すると認められるときでなければ、法43条第1項の許可(市街化調整区域における建築許可)は与えられないとされていますので、災害等により復旧工事を行う場合にも、予め担当部署に確認をする必要はあるでしょう。

これまでの解説を要約すると、下記の図のようになります。

市街化調整区域では令第34条による開発許可を受けた宅地等に建築(新たに個人として開発許可を得る必要はない)する場合を除いては、面積によらず個人で開発許可を得る(29条許可申請)しか方法はありません。

市街化調整区域,令第34条,開発許可

それでは「個人で開発許可を申請すれば問題ないのでは?」と思われるかも知れませんが、原則として一定の開発行為以外は認められておらず、また許可を得るためには技術基準・立地基準をクリアしたうえで、例外的に許可する基準に適合している必要がありますから、次項で解説する第34条1号による開発行為を覗いては、個人として一段の団地を開発できる資力と行政との駆け引きができる能力がある方以外、ほぼ不可能であると言えるでしょう。

個人申請の狙い目は34条第1号の開発許可

市街化調整区域内で、個人申請をして開発許可が得られる望みがあるとすれば、それは都市計画法第34条1号(令第35条と混同しないよう注意してください。省令では当該市街化調整区域内に居住している者が自ら当該業務を営むために限定されています)による建築でしょう。

法第34条1号では「周辺居住者の日常生活に必要な店舗・事業所および社会福祉施設・医療施設・学校などの公益上必要な建築物」の開発許可は認められていますから、狙うのは日常生活に必要な店舗等の建築を目的とした許可申請です。

具体的には開発を行う敷地面積が概ね150㎡以下かつ建築物の面積が概ね200㎡以下の平屋(宿直等、当該店舗を管理するための施設を併用する場合には、その部分の面積は25㎡以下とする)とされていることから、いわゆる小規模な個人商店等です。

もっとも下記のように呉服や小売、クリーニングや指圧師等も日常生活上必要な店舗等の業種に含まれていますので、個人商店等の適用範囲は広いと言えるでしょう。

市街化調整区域内,個人商店等,適用範囲

気になるのは対象顧客個数で、分類ごとにおおよその顧客として利用する戸数を計算式で求める必要があります。

具体的には建築地(開発申請地)を中心に半径500mの住宅戸数を対象顧客戸数とし、同業店舗等が円上で交わる場合には一定数を減算する必要があります。

建築地,半径500mの住宅戸数を対象顧客戸数

また区域外から顧客が来店することも考えられますが、その戸数は対象顧客数の2分の1以下としなければなりません。

もっともこのような戸数計算はそれほど難しいものではありませんので、市街化調整区域内の土地等を個人が有効に活用したいと考えた場合、障害となる開発許可を得るための手段として第34条1号に該当する店舗等は、個人で開発許可を得る手段としてもっとも有効な方法であると言えるでしょう。

まとめ

今回は市街化調整区域における開発行為について解説しました。

市街化調整区域に限らず、既築住宅の場合は居住するほかその活用を、土地の場合にはそこに建築をすることが目的となることが大半ですが、市街化調整区域の場合、既築住宅を購入し、用途変更などをせず住むことについては何らの規制を受けることもありませんが、それ以外の行為(用途変更や増改築・新築)については厳しく規制されています。

結局のところ、そのような規制により有効活用することが難しく、また位置条件からも活用の範囲が限られ流通金額が低くなるのです。

そのような市街化調整区域を有効に活用するためには、今回、解説した開発行為に関しての許可基準や、開発行為を得ずに建築できる例外規定等の知識は必須となります。

次回以降のコラムでは市街化調整区域における用途変更申請の具体的な方法や、市街化調整区域の土地・建物はどのように売却すればよいか等、実践的な部分について解説していきたいと思います。

ですがそのためには基礎的な知識が必須となります。

まず「市街化調整区域の基本」を学び、ついで建築許可・開発行為と順番に学びを深めていくと良いでしょう。

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