これから家を建てようというエンドユーザーからの相談も私は毎月のようにしています。
していると言っても月に2件から3件ですが、話をすると実に色々なことでお客さんは悩んでいるものだと実感させられます。
前回コラムでご紹介したお客さんからの相談内容は、営業マンに関するものでした。
二つの事例をあげましたが、後半で取り上げた「営業マンが博学すぎて胡散臭さを感じた」 との質問には、私もその当時唖然としてしまいました。
しかし、お客様は我々の想定外の範疇で物事を考え、いろいろな判断基準で住宅会社選定を行っているのです。
あらゆるケースに準備して対応しましょう。
「掲示板に〇〇と書いてあったが本当なのか?」
ネット時代特有の相談事です。
家を建てるお客さんが、掲示板を気にする気持ちはよくわかります。
地場の小規模工務店の情報はさすがにないと思われますが、 一定規模以上の工務店やハウスメーカーであれば、間違いなく専用のスレッドが立っているでしょう。
積水ハウスを検討するのであれば積水ハウスを検索しますし、三井ホームであっても同じことをするでしょう。
それらの掲示板を覗くと、良いこともあれば悪いこともいろいろと書いてあります。
大きな会社になれば両方の情報がそれぞれ多数上がっているわけですが、中には裁判沙汰になった事例やユーチューブなどで「大手ハウスメーカーの詐欺!」などと告発しているケースも散見されます。
ある評判の悪いパワービルダー
私に相談を依頼したお客さんは、同じようにネットでエゴサーチをかけました。
社名は出せませんが、あるエリアではかなりの知名度を誇るパワービルダーで、注文や分譲さらにはマンションも含めると相当数の実績がある住宅会社です。
この会社の分譲地を気に入って契約しようかどうか迷っている段階で、お客さんはエゴサーチをかけました。
すると、出るわ出るわの悪口のオンパレードだったのです。
分譲地の場所はお客さんにとっては最高の立地条件ですので非の打ち所がありません。
建物に関しても、外から見た感じだとさほど問題があるようには見えない外観だったようです。
掲示板に書かれた罵詈雑言
① 営業マンが基本的な約束を守らない
② 築3年の建物を見たら外壁がすでにボロボロ
③ 契約をした途端に 営業からの連絡がプッツリ
④ アフターサービスが嘘だらけ
こんな感じでとにかく凄まじい罵詈雑言が並ぶ掲示板なのです。
さすがにこんな文言を見てしまったら、いくら気に入った土地だとはいえ、購入をためらうのは当然でしょう。
しかし、そうはいっても気に入った場所なので、第三者である私に「大丈夫ですよ。気にしないでください」 と背中を押してほしかったのでしょうね。
気持ちはよく分かるのですが、実はこの会社を私は知っていたのです。
社長とも面識がありますし、営業や設計の人間も何人か知っています。
ですから、結構前に掲示板を見たことがあり、そこに書かれた悪評の数々の存在は承知していたのです。
お客さんから相談された時は、びっくりするのと同時に、本当のことを言おうかどうかずいぶん迷いました。
「やめたほうがいいと思います」
結果的に私はこう伝えました。
この会社の評判の悪さは知っていましたので、相談を受けた以上、それをスルーするわけにはいきません。
掲示板に書かれていた悪評も、そのほとんどは的を射たものばかりで、事実と言わざるを得なかったのです。
競合業者が落とし入れるために書いた書き込みではなく、 まず間違いなくここと契約したお客さんが怒り心頭で書き込んだのでしょう。
その後お客さんがどう判断したかは知りません。
私のアドバイスを聞いたときは随分とショックだったようで、契約するかしないか、かなり迷っていました。
積水ハウスを検討していたお客さん
今度は別の方のお話をしましょう。
筆者である私が積水ハウス出身であることを確認したうえでのご相談だったのですが、やはり掲示板か何かを見て積水ハウスの悪評が目に入ったようです。
この時のご相談に私はこう答えました。
「積水ハウスは信頼ある良い会社ですよ。しかし、どんな大手の会社であっても一定数のトラブルは発生しますし、中には裁判沙汰に発展するケースも複数抱えているはずです。ですから、一般論として言わせていただければ、積水ハウスでも問題ないとなります。ただし、何らかのトラブルが発生する可能性は0ではない、と私はアドバイスせざるを得ません」
このときは2時間ぐらいズームでいろいろと話をしたのですが、どんなに良心的な会社であってもトラブルは起きるときは起きることをお伝えするのと同時に、トラブルの事例を色々とお伝えしました。
最終的には積水ハウスにしたと推測していますが、やはり掲示板に書かれていたネガティブな内容は、お客さんに大きな不安を与えるのでしょう。
こんな大きな問題もありました
これは私への相談事例ではありませんが、最後に最近話題になった話をご紹介しましょう。
会社名は調べてもらえればわかると思いますので伏せますが、全国のハウスメーカーの話です。
登録者数が膨大な数に及ぶユーチューバーの方が、この会社と契約し家を建築しました。
ところが、建築途中であるトラブルが発生して、お施主さんであるユーチューバーがぶち切れたわけです。
心の中にしまっておけばそれまでだったのですが、その内容をユーチューブにアップし始めたので、この話は瞬く間に広がって大炎上となりました。
最終的にはメーカー側が大慌てになって沈静化を図ったようなのですが、間違いなくこの会社の業績を落とした一件だと私は思っています。
もし、自分がここを検討していた時に炎上の話題を目にすれば「やっぱりやめとこうかな・・・」と考えてもなんら不思議ではありません。
このように、少し前であれば 2chや住宅専門の掲示板に書かれた内容が受注に影響することがあったのですが、今ではその範囲がユーチューブにまで広がってきたのです。
ユーチューブを丹念にチェックするとわかりますが、特定の大手メーカーを攻撃しているようなチャンネルも結構あるので、やはり影響が大きいと言わざるを得ません。
まとめ
最後はユーチューブの話になってしまいましたが、とにかく 掲示板やユーチューブで目にした住宅会社の悪評は、お客さんの契約意欲を大きく削ぎかねません。
本当のことを書かれるのであればある意味仕方がないのですが、中には嘘八百もそれなりに紛れていますし、嘘ではないにしても、頭に血が上るとどうしても事実を誇張してしまうのが人間です。
自社のエゴサーチをかけて、明らかに事実と異なるものを発見すれば 毅然とした態度で抗議しましょう。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。