住宅購入者の契約までの流れはコロナ禍以降大きく変化しています。
今までは住宅展示場にとりあえず足を運び、自分たちが気になる住宅テイストや性能、設備、価格などを一通り見比べて、合いそうな営業担当者と話を進めていく。
そこで価格や条件が合わなければ、地域の工務店や建売など予算に合わせて業者を選定していく。という流れが主流でした。
しかし、コロナが急速に広まった2020年以降、集客方法はWEBやSNS中心とした方法に変わりました。
今までもWEBやSNSは集客ツールとして普及していましたが、不用不急の外出制限やソーシャルディスタンスにより、対面接客は難しくなり、リアルのイベントや見学会はできなくなることで、オンラインの場に強制的に移行せざる負えない状況がありました。
2023年現在では、リアルの場も回復しつつあります。
住宅においては、幅広い世代への周知が重要なため、アナログの広告展開についても復活の兆しを見せています。
これからの集客施策としてはオンラインとリアルを併せたハイブリット集客をすることが求められているため、自社のリソースや身の丈に合った集客の方法を見つけることが重要です。
そこで、簡単にできるものから念入りに企画から進める集客方法まで、段階を大きく3つに分け、それぞれの顧客ニーズをターゲットとした集客のアイデアについて15の手法を解説します。
工務店集客の3つの段階とポイント
工務店集客は、大きく3つの段階に分けて考えると効率的なため、1つずつ解説します。
①商品やブランディングを周知する時期(顧客の記憶に残る広告)
②顧客が情報を求める時期(検索した時に見つけやすい施策、興味を引くコンテンツ)
③購入意思を固める時期(商談を始めたいと思わせる施策)
① 商品やブランディングの周知
まずは、幅広く商品を認知してもらうことから始めることが重要です。ブランディングが確立していると、商品とアピールポイントをセットで記憶に残すことができ、定着していきます。
1次取得層と呼ばれる人生で初めて住宅を取得する顧客は30代後半が多く、2次取得層と呼ばれる買い替え、住み替えの顧客は60歳前後が多いといわれています。
1次取得層であれば親たちへ、2次取得層であれば子たちへ、住宅購入を考え始めるタイミングや、住宅購入の意思を決定するタイミングにおいて、相談や報告をすることが一般的です。
相談された側としては、聞いたことのない工務店で考えていたり、ネットで調べても情報が全く出てこなかったりすると不安が募ります。
幅広く商品やブランディングが浸透していることは、家族からの反対意見や違うメーカーの検討を進められることを防ぐことができます。
また、社名よりも商品を初めに認知させることが重要な理由として、「人は社名では購入意欲が湧かず、商品で購入するかどうかを決める」からです。
「◯◯工務店」では、家を建てるイメージが湧きませんが、「アウトドアリビングの平屋」では、暮らしのイメージがしやすく、購入意欲が湧いてきます。
商品の認知→どこの工務店が建てているのか?という人の興味の順番に沿って、徐々に認知させていくことが重要となります。
ここで、商品の認知度を高める方法としてアナログ集客とWEB集客の2つの方法について説明します。
【アナログ集客方法】
アナログの集客方法は、地元の顧客に向けてピンポイントに発信できるので、地元密着型の工務店に有効な手段と言えます。
元々行っている集客方法であるため、慣れている方も多く、取り組みやすい反面、一定のコストがかかるので、集客できなかった場合の機会損失が大きいというデメリットもあります。
(1)野建て看板や乗り物広告
不特定多数の多くの顧客に向けた方式です。
交通量の多い通りや利用客の多い電車などの場所を選定すると、多くの人に見てもらいやすくなります。
また、建築現場の足場にかける「のぼり」や地域のコミュニティーセンターや商店などにも協力を仰ぎ、ポスターなどで告知をしていくなど地道な活動が二次取得層などの周知には一番向いている広告となります。
(2)新聞折り込みチラシ
こちらも二次取得層に、いまだに効果的な手法になります。
紙面をどのようにデザインするか?どのような内容にするかを時間をかけて企画を練る必要があります。
少し見るだけで捨てられてしまう可能性も大きいので、インパクトのある紙面デザインや内容が必要です。
特に注力して集客したい地域を配布地域に指定し、費用対効果を検証することまでPDCAを回していくことが重要です。
(3)フリーペーパーや地元情報誌
こちらは一次取得層、二次取得層のどちらにも認知させることができる手法です。
駅やコンビニエンスストア、美容室などに置かれている情報誌には地元のお得な情報やクーポンがついているなど手元に残して置きたくなる工夫が施されています。
もともとはお得なクーポンを求めるために手に取りますが、その中でたまたま見かけた住宅の外観が素敵であったり、好きなテイストのインテリアの写真が掲載されていることで問い合わせに繋がるケースもあります。
子育て情報を集めた情報誌の場合、学校や幼稚園で配布されることも多いので、子育て世代をターゲットとする場合にはターゲットとされる世帯へ確実に届けることができるので、周知効果が高い方法です。
フリーペーパーのコンセプトやテーマに合わせた住宅商品を掲載することが、認知→集客まで結びつける効果がより高くなります。
(4)地元のイベントへ出展
地域のイベントへの出展は、直接地域のお客様と触れ合うことのできる機会であり、商品だけでなく、社名や社員の顔と名前を覚えてもらう大きなチャンスとなります。
「いつか家づくりをする時には・・・」とまず声掛けをもらうことができたり、知人が家づくりをする場合等に口コミとして伝えてもらえる可能性もあります。会社自体も働く社員も将来的な顧客になる可能性のある地元の方に、身近に感じてもらえるように気を配りましょう。
その場で建物について売り込むよりも、簡単な資料を配ったり、相談コーナーを設ける程度に留めて「社名と社員を地元に浸透させる」ことに重点をおくことで警戒心を持たれずにすみます。
【WEB集客方法】
WEBでの集客は、アナログ集客に比べて多くの人に届けられるほか、コストが掛からないメリットがあります。
配信頻度を増やして、自社の情報との接触を絶やさないことが重要です。
(1)InstagramやTwitterで情報を配信する。
特に一次取得層の主婦層が多いユーザーであるInstagramは視覚的に認知させることに効果を発揮します。
家事や子育ての隙間時間で簡単にみられるコンテンツや雰囲気のいい“映える”施工写真をこまめに配信することで、「いいね」や「写真保存」をしてもらいやすくなります。
コンテンツを作る場合は、掃除方法や収納など生活に役立つ内容をメインにすると広まりやすく、認知されやすくなります。その中で、自社のアピールポイントは一点に絞って、毎回目に触れられるように取り込みましょう。
完成したオーナー宅の施工例や建売の写真は高頻度で配信しやすい内容であるため、目を引く写真となるようにIphoneで撮影しても良いですが、なるべく一眼レフなどカメラにはこだわることで、プロ並みの写真を撮影することが可能になります。
参考コラム:【工務店集客】インスタ運用の悩みを解決!広告やハッシュタグの活用方法も
【Twitter活用まとめ】工務店集客でTwitterを導入から活用・分析までを全て解説!
(2)ポータルサイトへ登録する
多くの工務店はポータルサイトで自社の広告やイベント発信をしていることと思います。
スーモや地域ポータルサイトに広告を掲載することで、家づくりを検討している人が集まるため、集客しやすいというメリットがあります。
しかし、費用対効果をしっかりと見極めることが必要であり、家づくりを検討している人が集まることは事実ですが、自社だけではなく競合が多いため、何かしらの尖った特徴を出さなければ集客することは難しいというのが現状です。
毎月の固定費がかかるため、効果が見込まれない状況が続いた場合は、撤退も視野に入れた検討が必要かもしれません。
(3)自社WEBサイトをスモールスタートから始める
初期コストをあまりかけずに、スモールスタートできるのが自社WEBサイトのメリットです。
最低限のTOPページと施工事例、イベント情報、お知らせ、会社概要で公開し、運用しながらコツコツを育てていくことがWEBサイトの強みでもあるので、手っ取り早く認知させたいのであれば自社WEBサイトを作り、1日1発信を心がけて運用するところから始めてみるのも良いでしょう。
② 顧客が欲しい情報を提供する
家づくりの検討をはじめると、顧客はまずWEBやSNSで情報収集を始めます。
これはコロナ禍以降ますます加速しています。
情報収集の段階で2〜3社まで絞り込み、見学会やイベント、来場に至るケースが多いので、WEBやSNSの情報によって初回面談の有無が決まってしまうといっても過言ではありません。
ここでもアナログ集客とオンライン集客のうまく使い分ける方法について解説します。
【アナログ集客方法】
(1) 展示場や見学会へ誘致
自社のこだわりやアピールポイントを伝えるには、お客様に建物を見てもらうことが最も確実な方法です。
直接会話をすることで、隠れたニーズを引き出したり、顧客の優先順位を理解したり、家族の中でのキーマンが誰かを掴むことができます。
(2) 勉強会の開催
住まいづくり全般の勉強会を開催する方法で、1次取得層にとって初めての家づくりについて親身に寄り添ってあげる姿勢が重要です。
自社の売り込みよりも中立の立場を装うことで顧客からの信頼を得ることに徹するようにしましょう。
例えば「土地の探し方講座」「住宅ローン講座」「FPによるライフプラン講座」「座談会方式でオーナーを囲んで体験談や質問会」といった内容が考えられます。
連続して何度でも参加できる内容で開催できれば、参加回数が増えるたびに顧客との関係性が安定したものになっていき「家づくりについてなんでも相談できる関係」を築くことができます。
【WEB集客方法】
(1)WEBサイトの整備
WEBサイトの内容や見た目、情報の更新頻度で集客の良し悪しが変わってしまいます。
いつ開いても新しい情報が見られると、随時更新情報をチェックしようと再訪します。
イベント情報や建売販売情報、オーナーインタビュー、施工事例などを小まめに追加するようにしましょう。
施工事例を載せる場合には、オーナー家族のストーリーがわかる内容やオーナーの悩んでいた点とその解決方法など、読者が追体験できるような内容が好ましいでしょう。
また、社員のブログ形式で伝えるのも、親近感を持ちやすいため、警戒心を解く助けとなります。
各社員の近況と絡めて、家づくりの情報や自社商品の紹介、イベントの紹介をするのがお勧めです。
参考コラム:小さな工務店でもホームページで集客する5つの対策とコツ|地域で一番の工務店になるために
(2) SEO対策
SEOとは、自社のWEBサイトが検索サイト上で検索結果に表示されるための対策です。
WEBサイトが検索上位に表示されるためには、下記のような施策が必要です。
1.検索されると考えられるキーワードを想定する。
2.そのキーワードを検索する顧客の目的やニーズは何かを分析する。
3.その分析内容を解決する又は理解しやすい解説を載せたコンテンツを発信する。
4.コンテンツのタイトルは必ずキーワードを含ませたものとする
5.関連する他のページへリンクさせて、多くのコンテンツに触れさせる
参考コラム:工務店集客のための「オウンドメディア戦略」とは?WEBサイト運用の課題と改善を徹底解説
(3) YouTubeの活用
見学会場を動画で案内すると、写真よりも広さの感覚や室内の雰囲気が伝わりやすいので、おすすめです。また勉強会の概要の動画や家づくりの基礎知識の動画なども家づくりを考える顧客の目に留まりやすい内容となります。
参考コラム:【活用事例10選】工務店集客のためのYouTube導入から運用までの完全マニュアル
(4) メルマガ配信
定期的なメルマガの配信は、長期管理していた顧客が建築タイミングとなった際に、問い合わせの敷居を下げる効果があります。
参考コラム:【10のテクニック】工務店集客で開封されるメルマガのコツとは?最新のメールマーケティングも徹底解説
③ 購入意思や建築会社を決定
この時期の顧客は集客数としては少なくなりますが、「他社ですでに商談を進めていたが不安がある」「他社で決め切れなかった」「転勤で地元に帰れることになった」など家づくりへの意欲があがっている顧客が大半です。
この場合は、アナログの対応が重要です。
(1) 宿泊体験
可能であれば、実際に自社の建物で家族だけで一晩過ごしてもらえるような宿泊できる自社の展示場が効果的です。
何らかの理由で他社との契約に躊躇した顧客に、納得して商談を進めてもらうためにとても効果があります。
(2) オーナー宅訪問
オーナーのお宅を訪問して、直接住まい心地や体験談を話してもらうことも安心につながります。
社員には聞きづらい質問や少し疑問を抱いている内容もオーナーと直接話すことで解決の糸口となるケースも多くあります。
まとめ
今回は注文住宅の顧客タイミング別の集客アイデアについて解説しました。
知ってもらうこと、的確な情報を与えること、安心して選んでもらうこと、全てにおいて基本となるのは自社への「信頼」と「安心感」です。
2023年以降の集客アイデアをぜひ参考にして、御社の集客に役立ててください。