展示場でもどこでも構いませんが、若いお客さんはお子さんを連れてくることが多いでしょう。
営業マンの中には子供がいると接客しづらくて嫌だという方も多いと思いますが、私は積極的に子どもたちを味方につけることに注力しました。
子供が騒ぐとその親は落ち着かなくなり、営業の話をしっかり聞いてもらえなくなるという事実は確かにあるでしょう。
そのようなマイナスがたくさんあることは分っていますが、それでも私は子供連れのお客さんを大歓迎で応対していたのです。
詳細は本文に書きますが、子どもを味方にすることが注文住宅営業においては必須とだけ言っておきます。
子供が自分になつき、その姿を見ている親の心もなごむのです。
2004年に行ったある取材
20年近く前になりますが、私はすでに現在のコンサルタントの仕事をしていました。
愛知県に本社があり、その当時ジャスダックに上場していた住宅会社があったのですが(今は未上場です)、そこに2年ほど頻繁に通っていた時期がありました。
そのときは、すでにお客さんの取材を定期的に行っていたのですが、この会社の新規部門が強力に推していた三階建ての住宅がありました。
このシリーズは大変人気だったのですが、ある八区画の分譲地の一つを購入したお客さんに対して私が取材した時の話です。
私 「〇〇ホームさんに今回決めたわけですが、決め手となったのは何ですか?」
主人「分譲地だから場所も当然良かったこともあるし、価格もありましたけども、なんといっても営業の〇〇君が良かったですね」
私 「奥様はいかがでしょう」
奥様「私も全く同じなんですよ。特に彼はうちの息子の名前もしっかり覚えていてくれましたし、そのせいもあって商談の度にお会いすると、息子が彼に抱きつきに行くぐらいでしたからね(笑)」
これがポイントです。
この方だけではないのですが、20数年来の取材の中で同じようなことを言うお客さんが、ポツポツといらっしゃいました。
あなたがお客さんになったと仮定しましょう。
小学校一年生の男の子がいるとして、その子を展示場に連れて行き営業マンと話をしました。
子供の名前を確認した営業が、即座に子どもの名前を呼べば親近感もわきますし、しっかりと名前を覚えてくれたんだなという気持ちになるでしょう。
しかも、小学校一年生の子供にとっては、自分の名前を呼んでくれること自体が楽しく感じられるはずです。
名前を呼ばれれば子供としても親近感がわくので、営業との距離も近くなるでしょう。
そして、その様子を傍で見ている親の気持ちとしては、なんとなくほんのりした雰囲気を感じて、心地よい空間に感じられることでしょう。
私は子供にも名刺を渡していた
この取材をしながら、私は現役時代のことを思い出していました。
私は現役当時に子供用の名刺を作っており、小さなお子さんがやってくると、通常の名刺をご主人と奥さんに渡した後に、コピー用紙で作ったペラペラの手作りなのですが、そこに会社名と名前を書いて子供に渡したのです。
これがなかなか好評でした。
半分ぐらいの子供は何も反応しないのですが、中には露骨にうれしそうな顔して「こんなのもらったよ!」とはしゃいでいたのです。
初回面談時に必ず子供の名前を聞く
展示場などに置いてあるアンケートには、家族構成を書く欄があるでしょう。
お父さん、お母さん、子供などの欄があるわけですが、例えば男の子の欄に、一人と記入して実際に幼稚園程度の子供を展示場に連れて来たと仮定しましょう。
アンケートに子どもの名前を書くことはないので、接客の中で自然に「僕の名前なんて言うの?」と聞いてみましょう。
ただ、このような時代ですから「子供の名前を聞くのはやめてください!」と反撃を食らうかもしれませんが、現実的にはそのようなリスクはほぼないので、普通に聞けばよいと思います。
仮にその男の子が翔太くんだったとしましょうか。
その場合展示場の接客の中で「翔太君だったらこんな子供部屋どうでしょうかね」とお父さんお母さんに語りかけながら、本人にも「翔太君はどうかな?こんな部屋、あったらいいよね」と話を振ってみるのです。
何気ないコミュニケーションなのですが、私は現役時代にこのような接客を必ずしていました。
自分なりに正しいと思ってやっていたのですが、現役を引退し、今の仕事でお客さん取材を行う中で、ちょくちょく話が出るたびに「俺の考え方は正しかったのだ」と自信を深めています。
子供にも意見を聞く
幼稚園ではさすがに無理ですが、小学生の高学年ぐらいになれば、 自分の希望や意志をはっきりと前面に押し出すような子もいます。
つい先日展示場の接客で、実際に目の当たりにしたシーンを再現しましょう。
20代中盤の女性営業が、30代半ばのご夫婦と小学校2年生の女の子を接客した場面です。
自分の部屋の希望をはっきり言う女の子
営業「こちらが子供部屋ですが・・・あっ、そうだ、〇〇ちゃんはどんな部屋がいいとか希望はあるの?」
このようにその女の子に話しかけたのです。
私は子供部屋の中から見えない位置の廊下に立って話を聞いていたのですが、この質問に対して女の子はこう話しだしました。
女の子「私はお花が好きだから壁にお花の絵がたくさん欲しいし、お庭に花を植えたら自分の部屋からお花が見えるようにしたい」
これ以外にもいろんな希望を出したのですが、この話をきっかけにお父さんお母さんとも話がはずみだし、子供部屋を作る際には娘の要望は極力取り入れたいと考えている、とまで口にしてくれました。
この情報はとても大きいと思います。
① 商談ベースに乗った時に提案ネタとなる
具体的な商談ベースに乗った場合の話ですが、子供部屋を提案するときに、花柄の壁紙を提案するのはもちろんのこと、庭を見下ろせるような位置に子供部屋の窓を作るプランを提案できます。
② 両親の満足度が上がる
このお客さんは他社の展示場にも行くはずですが、小学校低学年の女の子に対して、営業がヒアリングをすることはまずないと考えていいでしょう。
ですから、お客さんにとっては、彼女の振りがとても新鮮で興味深く映るのです。
提案に対する期待値も上がりますし、娘のことをよく考えてくれている人だな、ということもはっきり伝わるでしょう。
このように考えていくと、子供の意見をヒアリングすることが受注へ近づくことの一つの作戦であることがわかります。
子供部屋のプレゼンテーションもする
プレゼンテーション図面の提案をするはずですが、ほとんどの営業の方が平面図・立面図など毎度おなじみの三点セットを提出しているはずです。
これらの図面の中に、一枚だけ子供部屋を大きく引き伸ばした図面を加えてみてはどうでしょうか。
もちろん、お父さんお母さんに提案するのですが、子供にとっては 自分のためだけに何かを作ってくれた、と思ってワクワクするはずです。
小学生では厳しいかもしれませんが、中学生以上になれば、その図面を見ながら子供本人にもプレゼンテーションするのです。
こうしたちょっとしたプラスαの気配りが、他社との競合を圧倒的有利に導くことでしょう。
まとめ
今日のコラムは子供に的を絞って書き進めました。
「子供を折衝から除外しない」
結論としてまとめるならば、こういうことになるでしょうか。
営業の立場としては、子どもの存在は下手をすると折衝の邪魔者と捉えてしまうことが多いようです。
しかし、この発想を180°転換してもらい、子供を折衝に引き込み味方にする戦略を取ってください。
失敗したところでダメージはありません。
この発想がなかった方は、次回の折衝から考え方を変えていただき 、子供をあなたの味方に組み込んでしまいましょう。
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工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
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