【国土交通省が注意喚起】省エネ義務化を悪用して増加する悪質リフォーム会社の手口とは

先日、とある異業種交流会に参加した時に受けた相談です。

「住宅の省エネ義務化が決定して、基準に満たない住宅は工事を実施しなければ罰則を受けるって本当ですか?」との質問を受けました。

詳しく話を聞くと、リフォーム会社の社員が飛び込み営業をしてきた際、そのような話をされ気になっていたのだとか。

皆様ご存じのように、2025年4月から脱炭素社会の実現に向け省エネ基準適合が義務化されますが、それは全ての新築及び一定規模以上の特定増改築(ただし適合ではなく届出義務)に限られています。

省エネ基準適合

この場合、違反すれば罰則が欠かせられますが既築住宅にたいして省エネ基準に適合するリフォーム工事を義務付けたなんて話しは聞いたことがありません。

建築物省エネ法が改正されたことにより、そのうち出てくるだろうなと思っていたら、やはり現れたリフォーム詐欺です。

多少気になったことからネットで検索してみると国土交通省と消費者庁共同で、悪質リフォーム事業者に関する注意喚起が行われていました。

悪質リフォーム事業者に関する注意喚起

注意喚起を促すために作成されたチラシにも、詐欺的勧誘手口として「国の制度改正で省エネリフォームが義務化されましたので、ご自宅のりファームが必要です」といった例が記載されていますが、筆者に相談された方のお宅に訪問したリフォーム会社のトークとほぼ一緒です。

省エネ義務化を来年に控えてこの手のリフォーム詐欺が増加する可能性が高くなるでしょうから、今回は国民生活センターや、公益社団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターに寄せられた相談内容などを参考に、顧客が被害にあった際の対応方法について解説いたします。

具体的な相談内容の傾向

国民生活センターや、住宅リフォーム・紛争処理支援センターに寄せられた相談を閲覧してみると、最近の相談事例で省エネリフォームの相談があげられています。

省エネリフォームの相談

これら相談内容を見ていくと、悪徳リフォーム業者のセールストークには傾向がみられます。

悪徳リフォーム業者に共有するトークスクリプトが作成されているのかと思えるほどです。

例えば以下のような言い回しです。

●この住宅も対象になります
●このままだと法律違反になります
●罰金を支払わなければならない
●今ならキャンペーン期間中で、お得に工事ができる
●お隣の〇〇さんも工事を依頼してくれたし、この近所で渋っているのはお宅ぐらいですよ

ほぼ全てが特定商取引法第6条で定める禁止行為(不実のことを告げる行為)に該当する言い回しです。

このようなトークに翻弄され契約したことによるトラブルは多数確認されますが、省エネ工事を実施すると言いながら、どのような工事内容を行いそれによりどれくらい省エネ性が向上するのか具体的な説明がないケースや、ひどい場合においては見積書や工事内容の詳細が提出されておらず、工事の総額のみが記載された契約書のみが存在しているなんてケースも確認されています。

一般的には高品質な新築工事を専門に手掛けている工務店ですら既築住宅の断熱改修工事は難しいと口を揃えて言います。ですから断念改修の知見に長(た)けた設計士に相談をするほか、実績のあるリフォーム会社を探して依頼するのが良いでしょう。

そもそもそのような技術力も高く評判の良いリフォーム会社はアポ無しで飛び込み営業をしなくても需要があります。

ですから効率が良いとは言えない手法を無理して行うことは少ないのでしょう。

訪問営業をしている会社が全て悪いとまでは言いませんが、リフォームに関して言えば「怪しい」と疑うぐらいの慎重さがあっても良いでしょう。

公益社団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター,国土交通大臣指定の相談窓口,リフォーム業者

公益社団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが運営する国土交通大臣指定の相談窓口「住まいるダイヤル」においても、寄せられている相談の93.5%はリフォーム業者に関しての相談であると覚えておく必要があるでしょう。

断熱改修に関する知識が不足しているリフォーム業者が多いという現実

省エネリフォームをする場合の基本的な考え方は、新築工事における省エネ適合基準適合と同じく断熱・日射遮蔽・気密の3点をどのように改修し、その性能を引き上げるかです。

すでに出来上がっている住宅に手を加えるのですから、例えば断熱材を交換するにも内壁を破壊しなければなりませんし、工事の間は仮住まいが必要となるケースも多くその費用なども検討しなければなりません。

何よりも省エネ基準に適合した住宅を新たに造るのとは違いますから、ひと手間以上必要でその分だけ工事金額も増加します。

発注者には当然、予算がありますから限られた予算内で最大限の効果を得るのが善良なリフォーム業者の腕の見せどころだと言えるでしょう。

例えば一戸建て住宅の場合、もっとも熱(もしくは冷気)が逃げやすいのは「窓」です。

一戸建て,窓

ですが窓を枠も含め丸ごと交換しようとすれば、内外ともに窓まわりをいったん破壊する必要があります。それに伴い内・外壁の補修工事も必要となりますから工事も大掛かりとなり費用も嵩みます。

リビング

そのような場合には内側にサッシを付加するインプラスサッシなどの商品を提案するなどは常道ですが、窓の断熱性能を引き上げると今度は壁の断熱性能とのバランスが崩れ壁に「結露」が発生します。

窓と壁の断熱性能バランスが崩れることも原因ですが、換気の問題もあるでしょう。

古い住宅はそのほとんどが第三種換気と呼ばれ、要するに壁に「穴」を開け自然換気を行う方式なのですが外皮性能などを引き上げれば換気回数が足りず、室内の飽和水蒸気は断熱の弱い部分で液化します。

結局のところ全体のバランスを考えて手を入れないと、良かれと思って行った工事が思わぬ弊害を生むわけです。

このあたりの考え方は温熱環境学などの分野になりますので、よほど勉強熱心なリフォーム会社でなければ理論についての知見は持っていないケースもあるのです。

これはある意味で仕方がありません。

誠実で技術力が高いということと、学術的な理論は別物だからです。
基本的に省エネ化を目的として断熱改修工事などを行う場合、図面上で記載すると同時に使用する断熱材の等級や数量を見積書に詳細に記載するのが当然です。

具体的な数量が記載されていない「一式」表示の見積書や、改修部分の図面もなしに契約を迫ってくる時点で怪しいと言えるでしょう。

もし契約してしまったら

悪徳なリフォーム業者のトークに惑わされないというのも大切ですが、これらのトークの共通点は「消費者の不安に付け込んでくる」という点です。

このような手法は「不安商法」と呼ばれる典型的な手口ですが、それ以外にも「点検商法」「見本工事商法」「あいさつ商法」などがあり、これらをまとめて詐欺的リフォーム四大手口と呼ぶこともあります。

基本的なことではありますが、このような手法を用いる業者とは契約しないことです。

ですが私たちに相談が寄せられるのは大概が「契約をした後に不安になって……」という場合が多く、その場合に提案するのはクーリング・オフでしょう。

クーリング・オフについては宅地建物取引業においても適用されますからご存じかと思いますが、原則は契約書面を受け取った日から8日以内です。

ですからその期間を過ぎてしまった場合には「もう部材の発注や職人の手配も終わっている。いまさらクーリング・オフなんかできない」と言われてしまうのですが、特定商取引法において訪問販売業者は、勧誘に先立って事業者の名称・商品の種類などを明確にし、それを勧誘する目的で来訪したことを明示しなければなりません。

「法律が改正になったので、それをご存じない皆様に、省エネ基準適合工事についての説明をさせていただいております」なんて調子で訪問してきた場合、目的を隠して居宅に上がりこむことになりますから、契約の勧誘行為自体が違法です。

このような場合にはたとえ契約を締結し8日間を過ぎていても、あらたにクーリング・オフができることを明示した書面を交付し、その時点から8日経過するまでクーリング・オフをおこなうことができます。

またこれらの契約についての取り消し行為は「事実とことなることに気がついたときから1年以内」、また契約を締結していても「締結時から5年以内」であれば行うことができます。

クーリングオフ,解約

実際に筆者も、相談を受けクーリング・オフや契約解除のフォロー、場合によっては巻き返しを図るリフォーム営業マンと直接対峙してやり合うこともありますが、これまでのところ無事、契約を解除できています。

公的な相談窓口を紹介する

十分な時間がとれないなど直接フォローすることが難しい場合には、公的な相談窓口を紹介してあげると良いでしょう。

このような悪質なリフォーム工事に関しての窓口としては国民生活センターもしくは公益社団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住まいるダイヤル」の2つが考えられますが、オススメは後者でしょうか。

見積もりチェックサービスや基本的な相談は無料ですし、また相談先窓口では弁護士や建築士との面談(有償)による相談も斡旋してくれます。

住まいるダイヤル

住宅品確法に基づき建設住宅性能評価書が交付された住宅や、住宅瑕疵保険つき住宅であれば保険利用も視野に入れ相談に応じてくれます。

筆者も遠隔地からの相談があった場合には利用を薦めますが、仕事が早く対応も良かったなど反応も上々でした。

まとめ

筆者のように不動産コンサルティンの一環として相談に応じる場合には別ですが、取引に関わったことにより知己を得た顧客からの相談に応じても利益が得られる訳ではありません。

ビジネスライクに割り切れば、相談に応じる時間分だけ利益率が低下することになります。

そのような理由から相談を「受ける」「受けない」は個人の判断になるかと思いますが、相談されるのは少なくても「信用」されているからです。

相談に応じ速やかに問題を収束させることにより信用が「信頼」に変わっていくのではないでしょうか。

紹介は信頼度に比例するとよく言われます。

積極的に介入した方が良いとまでは言いませんが、困っている顧客の相談に応じられるよう理論武装しておく必要はあるでしょう。

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