先日、日頃より膨大な知見をご寄稿いただいているRE/MAX Rosetteの奥林様に依頼し、SNS上の物件広告について記事を書いていただきました。
【SNSでの不動産広告の規制】SNSだからと甘く考えてはいけない理由《前編》
【SNSでの不動産広告の規制】SNSだからと甘く考えてはいけない理由《後編》
SNSの力は絶大で、正しく活用することで不動産会社にとって多大な利益をもたらします。
ただ、SNSを活用した物件広告はまだ制度やルールが追いついておらず、リスク認識があいまいなままに運用されている事例が多く見受けられます。
上記の記事でも触れていますが、物件を紹介する投稿の中には気づかぬうちに違反行為をしている事例もあり、公取も徐々に是正に向けた取り組みを開始するようです。
そこで弊社では、未だ曖昧なSNSによる物件広告規制について、公取(※1)に電話取材を行い(※2)その一部始終をまとめました。
主に4つのトピックに触れていますので、気になるところをご参照ください。
※1 正式には首都圏不動産公正取引協議会
※2 取材日2023年6月9日
目次
- おとり広告
- 誇大広告
- 必要な表示事項について
- SNS上の物件広告の今後について
1.おとり広告
Q1:
成約済の過去物件をSNSに投稿したままにしておくと「おとり広告」に該当すると聞いた。
とはいえSNSは投稿の積み重ねが重要なので投稿を残したい意向が強い場合に「本物件は成約済のため、現在は販売しておりません。」といった注意書きをすることで投稿を残すことは可能か?
A1:
公取としては、誤認を防ぐために削除を推奨するというのが基本スタンスだが、現状は成約済と明示すれば可能であるという見解。
とはいえ、タイトルや概要欄など編集可能な範囲でなるべく目立つ位置に表示をしていただきたい。
Twitterに関しては投稿そのものの編集ができないので取り扱いが難しいことは認識している。
誤認を招く恐れがある場合には、削除の検討を。
2.誇大広告
Q2:動画では「わぁ!眺望抜群ですねー!」といった表現はありふれてしまっている印象だが、こうした誇大表現は動画だからといって認められるわけではなく処分の対象になる認識で間違いないか?
A2:間違いない。あくまで物件広告に対しては公表している規約に則り判断する。従来の各種広告と同様に根拠の明示ができない表現は認められない。
Q3:SNSでインフルエンサーが物件を紹介している場合や、TV番組でタレントが物件を紹介している場合にはかなり自由な表現が許されていると思うが、あれはあくまで「メディアによる取材」であって「物件広告」ではないからという認識で間違いないか?
A3:間違いない。規約の対象になるかどうかはあくまで物件広告であるかどうかで判断する。取材を受けたのか、物件広告を依頼したのか、当然ながらステマはNG。
3.必要な表示事項について
物件広告には表示すべき事項が定められているが、SNSも物件広告である以上は表示義務があると認識している。
表示の仕方について確認しておきたい。
Q4:動画や写真などコンテンツそのものに表示がなくとも、概要欄やコメント欄など、コンテンツに付随するスペースへ表示すれば問題ないか?
A4:問題ない。
Q5:概要欄やコメント欄に物件概要へのリンクを表示する方法はどうか?
A5:問題ない。容易に閲覧が可能な状況でリンク表示があれば、リンク先の物件概要も含めた一体の広告物とみなす。
Q6:紙媒体の場合は「文字サイズは7pt以上」といった規定があるが、SNSの画像内に表示させる場合にはサイズはデバイスに依存してしまう。ここに対する基準はなにかあるか?
A6:現状はない。が、あまりに小さすぎ読めないといったものは指摘対象となる可能性はあるので留意されたし。
Q7:動画の場合、テキストでの表示でなく口頭で読み上げても問題ないか。
A7:問題ない。
Q8:動画にテキストで表示する場合、表示サイズや秒数などに基準はあるか?
A8:現状はない。表示サイズについては、画像と同様にデバイス依存なので考え方も同じで、なるべく判読しやすいように配慮をしてもらいたい。秒数については、現実的に読むことができる秒数が好ましいが、動画という特性上、一時停止も可能であるはずなので全文を読み上げうる時間が必要だとは考えていない。
4.SNS上の物件広告の今後について
Q9:公取として指標、ガイドラインといったものを設ける意向と聞いているが、発表時期などの目処はあるか?
A9:現状はない。問合せが増えてきており、必要性は認識している。積極的に取り組むべきだと考えているが、恐らく今年度中といったようなスピード感では難しいだろうと思う。
Q10:ちなみにどういった問合せが一番多く、業者側への注意喚起が必要だと考えるか?
A10:消費者側からの問合せはやはり「おとり広告」に関連するものが一番多い。相談された事案に対しては粛々と対応するしかない。そうした場合にも、抗弁しうる対応ができているかというのは重要であろうと感じる。
まとめ
今回のやり取りからもわかる通り、SNS上の物件広告については、まだ明確な基準がありません。
そのため、
- 物件広告になりえるか
- 物件広告になる場合、基準を守っていると断言できるか
という点を意識することで、リスクは最小限にできるのではないかと思います。
些細なことで皆様の事業に影響が出てしまうのは非常にもったいないことです。
本記事が皆様の事業にとって少しでもお役に立てば幸いです。