【建築図面は読めなくても問題ないと勘違いしていませんか?】不動産業者なら押さえておきたい図面を読みこなすための基礎知識

ハウスメーカー勤務者などに勤務していなければ、あまり読みこなす必要性がないと思われがちな建築図面。

言うまでもなく住宅の設計図であり一般的な建築確認申請図面はおよそ20枚以上、設計事務所などが手掛ける場合には意匠や実施図面などの枚数も増加しますから40枚以上の図面が作製されることも珍しくありません。

それでは建築確認申請に必要な最低限の図面枚数はどれくらいなのかと言えば、建築基準法施行規則第1条の3第1項の各項に掲げる内容に基づき・配置・各階平面・床面積求積・2面以上の立面及び平面・基礎伏・各階床伏・小屋伏・構造詳細などが記載されていれば条件を満たし、要領良く作成すればわずかな枚数で済みます。

建築確認申請用としてはわずか数枚程度で収まる図面も、外観や内観にこだわりをもつ施主の打ち合わせ用に意匠図が幾枚も作成され、また詳細な打ち合わせ内容を職方に伝達するために必要な施工図なども追加されますから、結局のところかなり厚みのある図面が製本されることになります。

興味の無い方にとっては同じような図面が複数存在しているような印象を受けるかも知れませんが、全て意味のある図面です。

ハウスメーカーの営業マンでも「営業なのだから図面を読みこなせる必要などない。金融機関に提出を求められることがある平面・立面・配置・矩計の4種類のだけ理解していれば問題ない」という方が多いのですから、販売に特化する仲介営業などは真面目に図面を見たことがないという方もおられるでしょう。

確かに現場管理者でもなければ全て読みこなせる必要はありませんが、不動産業者を名乗るのであれば、少なくてもそれぞれの図面が持つ意味や基本的な読みこなし方程度は正しく理解しておきたいものです。

そうでなければ建築中の現場に顧客と同行して説明を行うことや、完成前の建売住宅の建築精度について確認することなどおぼつかないからです。

もっとも、建築知識がなくても販売できるのは事実であり、なくても仕事ができてしまうからこそ不要論が囁かれるのでしょうが、顧客は自分で購入する住宅のことなのですから真剣です。

プロとまではいかないまでも、基本的な知識を学んで失敗しないように備えるでしょう。

それにたいして販売する側が、顧客に太刀打ちできない程度の浅い知識しか有していいなければ、何かの切欠で信用を失うことになりかねません。

今回は不動産業者でも最低限は覚えておきたい建築図面の読み方について解説いたします。

よくある営業マンの勘違い

「この住宅、耐震性は大丈夫ですか?」
「きちんと構造計算されているから大丈夫です」

なんてやりとりがよくあります。

理由を正確に説明できなくても、このやりとりに違和感を持たれた方はセンスがあります。

顧客が質問しているのは建物の耐震性についてですから、これにたいする回答は「耐震等級2で設計されていますから、品確法で定められた震度6~7程度の地震にたいして等級1の1.25倍の耐震性がありますのでご安心ください」などが正解でしょう。

そもそも一般的な木造住宅は、4号特例により構造計算が実施されていないことの方が多い。

4号特例とは3階建て未満かつ延面積500㎡未満など一定の条件を満たす建築物について、法的適合性の審査を省略することができるとした建築基準法第6条4項に基づく例外規定ですが、これにより本来は全ての建物に必要だと思われる構造計算について提出不要であるから行わなくてもの良いとの考えを根付かせる温床になっていると言われています。

これにより先程の「きちんと構造計算されているから大丈夫です」という営業マンの言い分にたいして「構造計算書を確認させてください」と現物を確認しなければ、本当に行われているのかどうかは分からないということになります。

全ての建築物にたいし構造計算が行われているというのは思い違いに過ぎません。

もっとも2025年4月1日から4号建物の条文は廃止され、新2号または新3号に分類されます。

延面積が200㎡以下の新3号建築物については従来どおり審査省略制度の対象(構造計算をするかどうかは自由)とされますが、200㎡を超える場合は新2号建築物に分類され構造計算書の提出が義務となります。

建築確認・検査、審査省略制度

そもそもの話に戻りますが、耐震等級は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」通称、品確法に沿ったもので、建築基準法の範疇ではありません。

もっとも現行の建築基準法においても、新たに建築される建物には耐震等級1以上の耐震性を満たすことが求められていますから、それを裏付ける構造計算書があれば説明も行いやすいでしょう。

余談ですが現行の建築基準法では求められていない断熱性能についても、2025年4月1日からは新2号に該当する場合、関連図書の提出が義務付けられます(新3号については従来どおり提出不要)

これまた顧客と営業マンのやりとりで

「この住宅、断熱性能は大丈夫ですか?」
「建築基準法を遵守して建築されていますから問題ありません」

なんてのも、現行の建築基準法では断熱にたいしての基準はないのですから誤った回答であることがご理解いただけるでしょう。

省エネ関連,提出書類

省エネ関連の提出書類に必要とされる省エネ計算一つをとっても、およそ上記のような図面が必要とされます。

耐震性や省エネ性が顧客の注目を浴び、それに呼応するように厳格化方向に改正が続く建築関連法規に対応するためにも、不動産営業マンが相応に図面を読みこなせることは必須になるだろうと予測されています。

図面はこれを読み取る

建築図面は施主との打ち合わせ状況により、基本設計図・実施設計図・施工図の3種類に大別されます。

後に進むほど詳細な内容が記載され枚数も増えていきますから、もっとも信頼性の高い図面が施工図です。

現場管理初心者によくあるミスとして、納期を勘案し基本や実施図面の段階で部材発注を行ってしまい、最終的な施工図との間で齟齬が生じ搬入材をロス材にしてしまことがあげられます。

最も信頼できる図面は施工図であると覚えておけば良いでしょう・

施工図は、大別すると意匠図・設備図・構造図の3つに別れます。

このうち最も重要なのが平面・配置・展開などの意匠図です。

私たちが最も読みこなす必要があるのはこの図面です。

設備図は照明器具のスイッチやコンセント位置などを記載した電気設備図や、給水・給湯・排水などについて記載した給排水設備図など、平面図に設置位置を示した図面になります。

構造図は、柱や梁・基礎など構造のみを平面的に表記した各種伏図や、建物を側面から立体的に表記した軸組図などで構成されていますが、専門知識がなければ読みこなすことも難しい図面です。

これらのことから私たちが最低限詳しく学んでおく必要があるのは意匠図全般、つまり基本的な図面さえ読みこなせれば目的を達せられるということです。

図面には普段見慣れない記号が数多く記載されています。

これら各種表示記号は国土交通省により制定されています。

コラムで全ての記号について解説するのは無理がありますので、下記URLから「建築工事設計図書作成基準」を確認いただき基本となる記載ルールを学ぶのが近道でしょう。

https://www.mlit.go.jp/common/001157950.pdf

平面表示記号

平面や立面に限らず、図面に用いられる線種は下記5種類に限定されています。

図面,線種

意味合いとしては下記のように区別され利用されています。

平面表記記号と線種さえおおよそ理解できれば、後は意匠図の基本である下記図面の意味を理解するだけです。

筆者としては基本的な下記6つの図面について、読みこなせるようになれば営業レベルでは充分ではないかと考えています。

図面から読み取る情報

このうち平面図や付近見取り図、配置や立面図などについては前述した記号や線の種別などの基本さえ理解しておけば感覚的に読みこなすことができるでしょう。

平面図

読みこなせるようになりたい意匠図のうち最も難解なのは矩計図(かなばかりず)でしょう。

これは建物を部分的に垂直切断した図面ですが、基礎から軒高までの主要な建物の高さ関係(各階の床高・屋根の軒桁高さ・基礎の深さなど)などが一目で確認できるほか、表示内容によっては断熱材の種別や使用されているサッシ性能なども記載されていますので、断熱性能の判断基準となる情報なども含めかなりの内容を確認できます。

矩計図

読みこなすには慣れも必要ですが、記載内容を詳細に確認する癖をつければ、いずれ理解できるようになるでしょう。

例えばサンプルとした矩計図の天井部断熱の取り合いは、9.5mmの石膏ボードで施工した2階居室天井の上に1㎥あたり40kg密度の高性能グラスウールを厚さ140mmで充填し、居室からの湿気で影響を受けないよう防湿フイルムが敷き込まれています。

図面

例えばの話ですが、サンプル図面の中古住宅で天井部分が勿体ないのでロフトを造作したいなどの要望を受けた場合、「屋根断熱は2階天井で取っていますから、ロフトを造作するには屋根の野地板から下で断熱補強し、垂木上に床を造作する必要もありその補強のため……」なんて説明ができるようになります。

建築確認図面がない場合には建築計画概要書による調査は必須

中古住宅を媒介する場合においても、建築確認済証及び確認図面があれば工法や断熱計画、建物配置のほか軒高やコンセント位置など様々な情報を得るために活用できます。

大体は施主である所有者が所有しているので、それを借受けコピーするなどして入手します。

ですが中古として売買された場合に譲渡されていないケースや、築年数が相応でどこにしまったのか失念した、もしくは紛失してしまったなど保持していないことはよくあります。

そのような場合には物件所在地の市役所の建築指導課や土木事務所など、書類を保管している閲覧指定場所に出向き、建築計画概要書閲覧制度(建築基準法第93条2)により概要書の閲覧、もしくは写しの交付請求を行います。

もっとも建築計画概要書は、あくまでも建築確認申請における添付処理の一部に過ぎません。

ですから建築主・工事監理者・工事施工者の氏名、住所のほか敷地面積や配置、構造、高さ、階数などの建築物の概要を確認することはできますが、平面図などの意匠図を確認することはできません。

図面などが添付された確認申請書の正本を閲覧したい場合には、確認申請書が提出された機関にたいして公文書公開請求することにより閲覧できます。

ただし建築確認申請書の保存期間は15年とされており、それ以前の物について請求することはできません。

いずれの閲覧についても建築確認年月日と確認番号が必要であるほか、建築確認申請等時の地名・地番や建築主氏名・築年月日・階数・延べ面積などの情報が必要となりますので、登記済証や登記事項証明書・構図などにより閲覧申請に必要な事項を調査しておく必要があります。

注意事項ですが、申請された建築計画概要書などを特定するために時間を要する場合もあり、いきなり出向いても閲覧できない場合があります。

あらかじめ管轄部署に連絡を入れ、書類の特定や有無を確認してから申請したほうが二度手間になる可能性を回避できるでしょう。

まとめ

基本的な読みこなし方について解説することが目的の本コラムではありますが、記号の意味や詳細な内容を全て解説していては一冊の本になるほど文字数が必要になってしまいます。

そのため本格的に学びたい場合には専門書を読んでいただくしかないのですが、あくまでも不動産営業マンとしての最低限のスキルとして図面を読みこなすことが目的であれば、今回、解説した内容を意識しながら数多くの図面を見て実践的に学んでいくことが大切でしょう。

理解が深まるほど設計者による考え方の違いや特徴が見えてくるはずです。

疑問が生じた場合には、なぜそのようになっているのかを考えつつ学ぶことで知識も深まっていくことでしょう。

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