【なぜこの人が落とされる?】家賃債務保証業者の審査基準について

先日ネットニュースを見ていたら、ホリエモンこと堀江貴文氏が森ビルのマンスリーマンションの入居審査に落とされたと苦笑まじりに伝えていたとの記事が報じられていました。

堀江氏はその物言いや素行から好き嫌いも分かれるでしょうが、ひとかどの人物です。

氏は2006年に証券取引法違反で逮捕され2011年に2年6ヶ月の懲役が確定し収監されました。

出所後の2014年に東京港区にある森ビル所有の六本木ヒルズレジデンスから退去させられた経緯があり、審査に通らないのはその当時の遺恨が根深かいとして「件の社長が自分を嫌っているから」とコメントしていました。

企業の代表者が嫌っているというよりは、過去に自社が所有・管理する物件で問題を起こした履歴を基に審査した結果だと思うのですが、森ビルの否決理由は明らかにされていませんので、いずれせよ憶測に過ぎません。

皆さんも家賃債務保証業者による審査結果について、「なぜこの人が落とされたの?」と疑問に思ったケースはないでしょうか?

賃貸を斡旋する私達たち不動産業者も、内見時の様子、具体的には威圧的な態度やモラルの欠如が著しい場合など入居後、トラブルを引き起こしそうな人物の場合には社内の判断で入居を断る場合もあるでしょう。

そのため賃貸入居申込書には入居審査により断る場合に備え、審査内容や理由について説明しない旨の注意事項を記載してあることが多いものです。

先述した堀江氏の場合、収入面での問題はなくても言動や過去の遺恨などから、森ビルの社内審査基準に合致しないとの理由で断るのは、さしあたり問題はありません。

よく入居審査で否決された場合、「なぜ落ちたんだ」、「理由を説明しろ」、「予定が狂った。損害賠償を請求してやる」などと凄まれることもあるでしょうが(腹立ちは分かりますが、審査結果を聞いてこのような対応をする方には、それ以降の物件紹介を断るのが妥当です)入居審査基準や結果の理由を告知する必要はありません。

もっとも、入居を拒否した理由が国籍や人種・社会的身分や門地など憲法第11条で定められた基本的人権の尊重に抵触していることが立証されれば、裁判において慰謝料などに支払い義務が生じる可能性はあります。

程度はまちまちですが、審査は管理会社・家賃債務保証業者・賃貸オーナーがそれぞれ行います。そのうちのどこで引っかかったのか、斡旋する側の私たちが知るよしもありません。

ところで皆さんは、家賃債務保証業者が審査においてどのような点を重視しているのかご存じでしょうか?

今回はそのような審査基準について解説していきます。

基本的な審査基準

不動産売買で融資の斡旋をしている方なら感覚的に理解できると思いますが、賃貸の保証審査は人物と勤務先・収入について審査されます。

人物としては逮捕歴や懲役以上に科せられた犯罪歴がないか、反社組織などに属していないかについて調査し、くわえて家賃の滞納履歴や勤務先、その勤続年数や収入などを総合的に勘案し審査されます。

服役して出所したのならすでに罪は償われているのだから、それを理由として入居を断るのは道義上問題があるとの指摘があります。

人権の尊重の観点からはその通りなのですが、権利は賃貸オーナーや管理会社にもあります。

他の入居者の安全性を考慮するため周囲に悪影響を及ぼす可能性やそのリスクを排除したいとの気持ちは理解が及ぶ範囲です。

もっとも、家賃債務保証業者各社は審査基準を公にされている訳ではありません。

上記以外、独自の判断基準を設けている場合もあるのですから、当事者でなければその原因も不明のままになるのでしょう。

国土交通省が公開している登録家賃債務保証業者一覧によれば令和5年7月24日時点において全国で97社存在するとされています。

もっとも登録は任意とされていますから、登録をせず保証業務を行っている数を含めれば国土交通省も正確な件数を把握できてはいません。

登録家賃債務保証業者一覧

これらの家賃債務保証業者が、家賃滞納リスクに備えるため賃貸オーナーに利用されている訳ですが、実質的には賃貸物件を委託されている管理会社が家賃債務保証業者を決定しているケースが多いでしょう。

賃貸オーナーは保証料を直接負担することもないのですから、万が一の場合に家賃を取り逸れる可能性がなければどこでも良い訳ですから、納得できるものです。

個別の審査基準が公にされることはありませんが、個人事業主については正しく申告し相応の収入があっても敬遠するなど、保証業者によってバラツキもあるのが実情です。

滞納状況やトラブルの情報は共有されているの?

国土交通省もその実態数を把握できていない家賃債務保証業者の全てが、互いの保全のため情報を共有している事実は確認できません。

一般社団法人全国賃貸保証業協会(LICC)などは、加盟業者で情報を共有しているようですが、2023年5月現在の加盟数は正会員で15社に過ぎません。

それ以外でも任意に情報共有している可能性は否定できませんが、その実態は把握されていません。

家賃債務保証業者がオリコなどの信販系である場合には、CICやJICC、KSCなどの個人信用情報機関から情報を取得している可能性は高いでしょう。

相応の収入があるのに審査で否決されるケースでは、個人信用情報により浪費癖や延滞情報が確認され、「家賃滞納リスクあり」と判断されるのでしょう。

裏技として、信用情報機関を閲覧できない家賃債務保証業者や、情報共有をしている可能性が低い業者を選んで審査を通す方法もありますが、選択できる物件が極端に少なくなるのはご存じのとおりです。

その他の審査事項

賃貸を斡旋するには賃貸オーナーが求める条件をクリアする必要があり、そのうちの一つが家賃債務保証業者の利用です。物件を気に入っても審査が通らなければ内見などに要した時間は無駄となり利益が一切、得られません。

賃貸を専門にしている方ならご存じのように、斡旋する賃貸物件の審査傾向を検討し、より通りやすい物件を紹介する必要があります。

もっとも、これは経験によるものではありますが……。

また既婚者が同居するのであれば問題もないのですが、未婚のカップル入居は敬遠されます。

理由は単純で、別れた場合に家賃滞納リスクが増加する懸念があるからです。

カップルで入居することが決まっているのに、それをあらかじめ申告しなければ条件違反を問われる可能性がありますので申告は正しく行わなければなりません。

このようなケースで審査を通りやすくするためには二人入居可物件を斡旋すると同時に、万が一の場合においても単独で支払いできる程度の家賃負担率で入居できる物件を提案することです。

またすべての家賃保証会社に当てはまることではありませんが、どちらか一方に家賃滞納履歴や素行不良などの実績が確認された場合には審査に落ちる可能性が高まります。

また過去に逮捕・収監歴があると申告された方の取扱には慎重さが求められます。

道義的にいえば刑務所に収監され、定められた期間服役すれば罪を償ったとして、釈放後はその過去ゆえに不利益を受けないはずなのですが、現実はそう単純ではありません。

人物調査としてそのようなネガティブ情報が調べられますから、ネットですぐに検索されるような犯罪に加担していた場合、入居審査をすり抜けるのは難しいでしょう。

審査で否決した場合において、公に過去の犯罪歴が理由であるとすることは出来ませんが、そもそも否決理由を開陳する義務はありません。

また運良く入居できたとしても、後日、その事実が発覚した場合には「虚偽の申告により信頼関係の破壊された」として退去を迫られるかも知れません。

ですが刑事手続きによる制裁を終え社会復帰を許された方にたいし、具体的な迷惑行為も発生していない状態で立ち退きを求めても、それが容認されることはありません。

ですから賃貸オーナーの多くは、過去に犯罪歴のある者は再犯の危険性があるとして、入居前の審査で排除を希望されるケースが多い(理由を公にはできませんが)。

一度、入居を許してしまえば立ち退き困難な故です。

まとめ

今回は家賃債務保証業者の審査について解説しましたが、実際には管理会社の判断で入居を拒否した場合においても、否決理由を糾弾されるのを避けるため「保証業者の審査で否決された」としている場合が多いものです。

具体的な審査基準は明らかにされず、その理由も明確ではないのですから、あらたな物件を斡旋する場合には否決された管理会社や家賃債務保証業者を利用している物件を避ける必要があるでしょう。

選択肢は狭まりますが、それは致し方ありません。

賃貸住宅を斡旋する場合には、審査基準についての基本を理解したうえでヒアリングの重要性を意識し、通るべくして通る物件を紹介するよう心がけたいものです。

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