
不動産管理会社の中には、「とにかく募集を出せばすぐに申込が入る」ような圧倒的な客付力を誇る会社が存在する。
一方で、同じエリアで類似の物件を扱っていても、なかなか反響が出ず空室期間が長引く管理会社もある。
これは偶然でも物件の力だけでもない。
客付力が強い会社には、いくつもの共通点がある。
今回は「付ける力のある会社」の共通点について紹介してみたい。
第一に挙げられるのは、「情報発信スピードと露出戦略が優れている」という点である。
客付けにおいて、物件の魅力はもちろん重要だが、それ以上に「早く・正確に・多くのユーザーに届いているか」が反響数を大きく左右する。
客付けの強い管理会社は、ポータルサイトへの新規入稿を即日で行い、しかも更新日をこまめに調整することで、検索上位表示を維持している。
コンバーターや自社CMSを駆使し、担当者が毎朝一括で新着登録・AD変更・写真差し替えを行える体制を整えている。
さらに、単なる「掲載」ではなく、「見せ方」へのこだわりが違う。
反響を得るために最も重要なのは、視覚情報だ。
写真が10枚未満の物件は、明らかに反響が落ちる。
逆に、リビング・キッチン・洗面・収納・外観・周辺環境・共用部などを網羅し、明るく清潔感のある画像を並べた物件は、たとえ築古であっても高反響につながる傾向が強い。
写真だけでなく、動画や360度パノラマ画像、リノベーション完成予想CGなどを組み合わせて視覚的アピール力を高めている会社も増えている。
次に重要なのが、「仲介会社とのネットワークの強さ」である。
物件を掲載するだけでは、ユーザーの現地案内にはつながらない。
実際にユーザーと接点を持ち、案内し、申込へ導くのは多くの場合仲介会社だ。
客付け力のある管理会社は、地域の仲介会社と良好な関係性を築き、情報共有や協業体制を日常的に持っている。
毎週物件情報をFAX・メール・LINE等で提供したり、仲介担当者とランチを共にしながら反響状況をヒアリングしたりするなど、顔が見える関係性を維持している。
先日も客付力の強い管理会社の幹部と情報交換をしたが、彼らが徹底しているのは、まず何よりも仲介会社を「重要なパートナー」として位置づけているということだ。
ただの「取引先」ではなく、「パートナー」と考えることで多くの取り組みも可能になる。
仲介会社に対する物件確認(通称:物確)への対応スピードも重要だ。
電話だけでなく、LINE WORKSやチャットワークなどにより、物件確認から内見予約までを即時に処理できる体制を構築している管理会社は、仲介会社からも「案内しやすい管理会社」として信頼を得ている。
そして、申込時には「ADを上げてください」や「入居審査の柔軟性を確保してください」といった仲介会社側のリクエストにも素早く対応する。
こうした「調整の柔軟さ」は、仲介担当者にとっては大きな安心材料となり、優先的な案内につながる。
三つ目の特徴は、「営業判断と裁量が現場にある」という点である。
現場担当者にある程度の価格調整やAD設定変更の裁量がある管理会社は、空室が長引く前に打ち手を打てる。
たとえば、「この物件、内見数は多いが決まらない=条件がどこかズレている」と判断したときに、即座にAD+0.5ヶ月や賃料-3,000円の調整を行うことができる。
また、毎月の内見件数、反響数、申込率などを物件別にデータ化しているため、客付け状況の「見える化」がされており、数字に基づいた改善提案が可能となる。
この「現場の裁量と数字運用」が一体化している会社では、オーナーへの報告資料も非常に説得力がある。
「このままでは決まりにくい」「ターゲット層とスペックにギャップがある」といったことを、単なる感覚ではなく、数値データや競合事例を添えて提示するため、オーナーも納得しやすい。
四つ目の特徴として、「ユーザーと仲介会社、双方を意識した物件設計」がある。
たとえば、20代単身者にはインターネット無料、女性にはTVモニターフォンやオートロック、小さな子どもがいるファミリーには宅配ボックスや防音性の高い床など、明確なターゲット設計と設備提案がなされている。
加えて、内装デザインも「賃貸だからこの程度で良い」ではなく、SNS映えやルームツアー動画で映えるような見せ方を意識して設計している会社もある。
また、仲介会社が「案内しやすい」と感じる工夫も多い。
図面のデザインがシンプルでわかりやすい、内見用の鍵が現地やBOXに設置されている、雨の日にスリッパが用意されている、現地に募集看板が出ているなど、細かな配慮が積み重なって仲介会社の案内行動を促している。
最後に、「オーナー提案力と柔軟性」も見逃せない要素だ。
反響が少ない=物件が悪い、とすぐに考えるのではなく、「条件がニーズとずれている」「エリア相場からズレがある」「周辺競合と比較して内装が劣っている」など、客付けが難航する要因を冷静に分析し、オーナーに対して的確な改善提案を行えるかどうかが、結果を左右する。
さらに、その提案を受け入れてもらえるだけの信頼関係を、日頃から構築していることも前提である。
単なる管理代行ではなく、「空室対策パートナー」として機能しているか──この意識と立場が、強い管理会社の本質である。
以上のように客付けが強い管理会社とは、情報の鮮度・量・見せ方を徹底し、仲介会社とのリレーションを強化し、現場で判断し改善を回せる営業体制を持ち、オーナーに対しても納得感ある提案ができる会社だ。
物件が決まらないのは運や立地だけではない。
決まる管理会社は、「決める仕組み」を持っている。
今後、空室率や家賃下落の懸念が続く中で、オーナーが本当に選ぶべきパートナーは、こうした「戦略型管理会社」である。